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皮膚は毛とともに再構築される、毛周期に連動、美容医療にもつながる、毛と肌の関係を見直す視点に、ポーラ化成工業と理化学研究所が共同研究で仕組みを解明

カレンダー2025.9.7 フォルダー最新研究
体毛と肌が関連。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

体毛と肌が関連。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 体毛と皮膚が密接に関連していることを、以前にヒフコNEWSでも伝えているが、あらためて体毛と皮膚の関連を確かめた研究が報告された。

 ポーラ化成工業と理化学研究所の共同研究チームが、2025年9月に毛周期に伴う皮膚組織の再構築過程を「1細胞遺伝子発現解析(1細胞解析)」と呼ばれる手法により解析し、そのプロセスを可視化することに成功した。

毛の巡りとともに変わる肌の仕組み

毛周期と肌の細胞の再構築が関連。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

毛周期と肌の細胞の再構築が関連。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 毛周期の概要→毛包は成長期・退行期・休止期を循環し、毛を生涯にわたって再生する
  • 毛周期と肌の変化→毛周期に応じて、肌の深部でも構造変化が起こっていることを確認
  • 毛周期の退行期に注目→特に「退行期」では、周囲の細胞や構造体が協調し、環境を再構築する活動が活発になることが判明

 毛を生み出す毛包は、成長期、退行期、休止期という3つの段階を循環する「毛周期」により、生涯にわたり再生を繰り返す。

 こうした営みは、毛包そのものに限らず、周りの組織である肌の構造全体にも影響を及ぼすことが知られていたが、その実態は十分に解明されていなかった。

 皮膚には多数の毛包が存在し、それぞれが異なる段階にあるため、毛周期の流れを時間軸としてとらえることはこれまで困難とされてきた。

 今回、理化学研究所とポーラ化成工業の研究チームは、毛包を一つだけ含む肌の微小な断片を精密に調べ、これらを並べ替えることで、毛周期の進行を「仮想的な時間の流れ」として再現する手法を開発した。

 この手法により、毛の周期に合わせて肌の深部でも変化が起きていること、特に毛が退縮する段階では、周囲の働き手、支えとなる細胞や構造体が一緒になって変化し、環境を作り替える働きが活発になることが明らかとなった。

毛周期に連動した皮膚の再構築

肌の状態の改善と体毛が関連?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

肌の状態の改善と体毛が関連?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 注目された現象→毛周期に合わせて、細胞外マトリックス(ECM)が一度分解され、再構築されるプロセスが確認された
  • 遺伝子の変化→毛周期に応じて、複数の細胞種における遺伝子群の活動が変化していることが判明
  • 応用の可能性→加齢や損傷による肌の衰えに対し、毛周期と肌の連動の関係を調整する仕組みを活用し、改善につなげられる可能性もある。

 特に注目されたのは、肌を形づくる土台の一つ、細胞の足場となる構造(細胞外マトリックス=ECM)が、この時期に一度分解され、再び新たに築き直されるというプロセス。

 この過程には、毛を取り囲む領域に集う3種類の働き手である、毛の繊維を生み出す細胞、血の通り道を支える細胞、そして白血球(免疫細胞、体を守る免疫の細胞)が関与しており、互いに連携しながら働きを高めていた。

 特に、線維芽細胞(コラーゲンなどを作る細胞)が周囲からの合図を受け、分解と再生の両面に必要な遺伝子群を活性化(複数の遺伝子が働き出す)している様子は、再構築の中核を担う存在として注目された。毛周期に応じて、複数の細胞種の遺伝子群が変化する様子も明らかになった。

 こうした連動の仕組みを解き明かしたことは、毛の移ろいを単なる現象としてではなく、肌そのものの再生、再編と深く結びついていることを確認できたことになる。加齢や損傷による肌の衰えに対し、こうした調整の仕組みに着目することで、肌の状態の改善への応用なども期待される。

 毛は皮膚の再構築を調整する重要な要素として働いているとすれば、美容医療において毛の役割が注目されてくる可能性がある。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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