
老化は広がる?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
老化した細胞が放出する「マイクロRNA(miRNA)」が、周囲の細胞に老化を連鎖的に広げる仕組みが新たに解明された。
コーセーの研究グループが2025年9月16日に報告。成果の一部は、フランスのカンヌで開催中の第35回IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)学術大会で発表された。
研究グループはこの分子を「老化連鎖miRNA」と名付けている。
老化の連鎖が起きている

miRNAの影響で老化が連鎖する。(出典/コーセー)
- 研究背景→肌の老化はシワやたるみを引き起こし、老化細胞が周囲の細胞を老化させる「老化連鎖」が注目されている。
- 解析の方法→真皮に多い線維芽細胞を意図的に老化させ、その中に含まれる「miRNA」を網羅的に解析。老化に伴う量の変動を調べた。
- 目的→老化で変動するmiRNAが周囲細胞をどう変化させるかを確認し、「老化連鎖」を引き起こす要因(伝達役)を特定することを目指した。
肌の老化は、シワやたるみといった外見上の変化をもたらす。ヒフコNEWSでも伝えているが、老化細胞が、周囲の細胞を老化させる連鎖反応が注目されている。その詳しい仕組みを解明する研究が進められている。
今回、コーセーの研究チームは、細胞間の情報伝達で重要な役割を果たす「細胞外小胞」に着目した。細胞外小胞は「EV」と呼ばれ、その一つであるエクソソームが国際的に注目されている。
研究者らは真皮に豊富に存在している「線維芽細胞」を意図的に老化させ、その中に含まれる「miRNA」を網羅的に解析した。これにより老化に伴って量が変動するmiRNAを調べ、どの因子が「老化連鎖」の引き金になるのかを探った。
例えば、細胞外小胞に、老化に伴って増加するmiRNAが存在する場合、このmiRNAにより周囲の細胞がどのように変化するか調べることで、老化連鎖の有無を確認することができる。老化を連鎖させる「伝達役」と見なせることが考えられる。
「老化連鎖miRNA」とSASPとのつながり

細胞外小胞の中で老化連鎖miRNAが大幅に増加。(出典/コーセー)
- 発見→老化細胞から放出される細胞外小胞に、特に多く含まれる特定のmiRNAを同定。
- 作用→このmiRNAは周囲の細胞へ信号を送り、老化を波及させる「伝達役」として機能。
- 応用→「ノイバラ果実エキス」にこのmiRNA産生を抑える効果を確認。化粧品や美容医療の成分開発への展開が期待される。
解析の結果、老化細胞から特に多く放出される特定のmiRNAが見つかった。このmiRNAは、細胞内よりも細胞外小胞の中で顕著に増え、外部に信号を送り出すことで周囲の細胞に老化を波及させる役割を持つと考えられた。
このmiRNAを人工的に模倣した分子を表皮細胞や血管内皮細胞に加えると、細胞増殖の低下や老化関連タンパク質の増加が観察された。
さらにヒト皮膚組織でも、加齢に似たエラスチン線維の分断が確認され、組織レベルで老化を誘発する作用が示された。
つまり、特定されたmiRNAが老化の伝達役である可能性があると分かった。
研究チームはこのmiRNAの産生を抑える成分探索も行い、「ノイバラ果実エキス」に抑制効果があることも確認している。
今回の成果は、炎症性サイトカインやタンパク質が老化を広げるとされる「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype、老化関連分泌表現型)」に、miRNAも重要な役割を果たしている可能性を裏付ける。今後、老化の連鎖についての研究はさらに進むことが考えられる。
