
舌で味を感じやすくなる?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
肥満治療薬として注目されるGLP-1受容体作動薬や、GIP/GLP-1二重作動薬(以下、いずれもGLP-1薬と呼ぶ)の使用者に「味覚の変化」が起きている可能性が示された。
甘味や塩味を強く感じるようになった人ほど、食欲の減少や満腹感の増加、食欲抑制と関連していたという。
オーストリア・ウィーン医科大学の研究チームが2025年6月に国際学術誌に発表した。
味覚と体重減少は関連?

味の感じやすさが関連か。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 背景 → 世界の過体重・肥満人口は約21億人。オゼンピックやマンジャロ(糖尿病薬)、ウゴービやゼップバウンド(肥満薬)が体重減少効果で急速に普及。一方、ダイエット目的での誤用も問題化している。
- 作用機序 → GLP-1薬は血糖低下と食欲抑制に作用。最近の研究で受容体が脳・腎臓・心臓・味蕾にも存在することが判明し、甘味感度の変化も報告されている。
- 今回の研究 → セマグルチド(オゼンピック/ウゴービ)、チルゼパチド(マンジャロ)を用いる411人を対象に調査。治療開始3カ月以上の肥満または過体重成人を対象に、体重・食欲・味覚変化をオンラインで自己申告形式で収集した。
論文によると、世界で過体重、肥満とされる人は21億人に上るとされる。オゼンピックやマンジャロ、肥満薬としてウゴービ、ゼップバウンドと呼ばれる薬は、体重を減らす効果から世界的に使用する人が増加している。元々、糖尿病薬として開発されたものだが、日本でも肥満症治療薬としても認められ、BMI30を超える人などは保険で体重を減らすために使用できるようになった。従来の食事制限や運動などの生活習慣改善は続けるのが難しいという課題があったが、そうした問題がクリアされるのが大きい。一方で、病的な肥満とはいえない人が、ダイエット目的で使用する事例が相次ぎ問題となっている。
このGLP-1薬は血糖を下げるほかに食欲を抑える効果が知られるが、効果の一部のメカニズムは未解明な部分がある。論文によると、最近は、薬が結びついて効果につながるGLP-1受容体やGIP受容体が、脳や腎臓、心臓、そして舌の味蕾にも存在することが明らかになっている。一部の研究では、薬により、甘みを感じやすくなるとも報告されていた。
そこで、今回の研究では、オゼンピックまたはウゴービ(セマグルチド)、マンジャロ(チルゼパチド)を使用する計411人を対象として味覚の影響が確かめられた。治療開始から少なくとも3カ月以上経過している肥満または過体重の成人を対象に、体重変化、食欲、味覚の自覚的変化をオンライン調査で収集した。
味覚変化が食欲抑制と関連

甘みの感じやすさと食欲が関連。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 主な結果 → 58.4%が「食欲減少」、63.5%が「満腹感増加」と回答。さらに21.3%が「甘味を強く感じる」、22.6%が「塩味を強く感じる」と報告。
- 統計解析の知見 → 甘味感受性上昇は食欲減少、満腹感増加、食欲抑制と有意に関連。塩味感受性上昇も満腹感増加と関連。
- 限界点 → 味覚変化と体重減少そのものの直接的関連は確認されず。研究者は「体重減少には他の要因も関与」と指摘。
結果として、参加者の58.4%が「食欲が減った」と答え、63.5%が「満腹感が増えた」と回答した。さらに21.3%が「甘味を強く感じるようになった」、22.6%が「塩味を強く感じるようになった」と報告した。
統計解析の結果、甘味を強く感じるようになった人は、食欲減少(専門的には調整後オッズ比1.67)、満腹感増加(同2.02)、食欲抑制(同1.85)と有意に関連。塩味の感受性上昇も満腹感増加(同2.17)と関連していた。今回の研究は、薬が「味覚の変化」を介して食欲抑制に寄与している可能性を裏付けた形となった。
一方で、味覚の変化が体重減少そのものと直接結びつく証拠は得られなかった。そのため研究者らは「短期的には食行動に影響しても、体重減少効果は他の要因も関わっている可能性がある」と指摘する。
GLP-1薬の効果を巡っては引き続き注目されそうだ。
