
毛量が減る男性型脱毛症(AGA)。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
男性型脱毛症(AGA)の新たな治療アプローチとして、天然甘味料として知られるステビアが有効である可能性が示されている。
中国薬科大学(南京)と、オーストラリアのシドニー大学、サウジアラビアのキングサウード大学などの国際研究チームは、2025年10月7日付の学術誌「Advanced Healthcare Materials」に発表した。
ミノキシジルの欠点を「ステビア」が補う

マイクロニードルに組み込む。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 研究の背景 → ミノキシジルはAGA治療薬として世界的に使用されているが、水に溶けにくく皮膚への浸透率が低い課題があった。
- 研究の工夫 → ステビアの甘味成分「ステビオシド」が界面活性剤のように作用し、ミノキシジルの水溶性を向上させる点に着目。
- 動物実験 → テストステロンで脱毛させたマウスを「ミノキシジル溶液」「ステビアマイクロニードル」「空針」「無処置」の4群で比較し、発毛効果を評価した。
AGA治療薬として世界的に使われているミノキシジルは、頭皮の血流を改善して発毛を促す作用がある。
一方で、課題として、水に溶けにくく皮膚への浸透率が低いという課題を抱えていた。そのため、従来の外用液はアルコールやプロピレングリコールなどの溶剤を加え、かゆみや炎症などの副作用を招くこともある。
研究チームは、ステビアの甘味成分であるステビオシドが、水に溶けづらいものを、溶けやすくする界面活性剤の働きをすることに注目した。
この性質を持つ物は、「ミセル(分子集合体)」と呼ばれる、カプセルのような形を作り、油に溶けやすい物を包んで、水にも溶けやすくする。
研究チームは、ミノキシジルをステビオシドが組み合わさった状態にしたところ、水中での溶解度が47mg/mLに達し、従来比で約18倍に上昇することを確認した。
その上で、ステビアとミノキシジルの組み合わせを、皮膚内で溶けるタイプのマイクロニードルパッチに組み込んだ。
長さ約600µm(μ=マイクロは100万分の1)の針が皮膚の角質層を通過し、薬を真皮層に直接届ける仕組みだ。針は自然に皮膚内で溶けるため、従来の金属ニードルのように刺激や感染リスクを残さず、安全かつ精密な投与が可能とされた。
皮膚透過試験では、マイクロニードルパッチによる薬剤浸透量が24時間で85%に達し、一般的な2%ミノキシジル外用液(68%)を上回った。
皮膚内にとどまるミノキシジル量も2倍以上多く、毛包周辺に効率よく薬が届くことも確認された。
さらに、研究チームはテストステロンを使って脱毛させたマウスを、4つのグループ(ミノキシジル溶液、ステビアマイクロニードル、空針、無処置)に分けて比較する実験を行った。
溶けるマイクロニードルが直接届ける

マイクロニードルパッチにミノキシジル+ステビア。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 発毛効果 → ステビアとミノキシジルを組み合わせたマイクロニードル群では、14日で発毛が始まり、35日後には治療部位の約67.5%が新しい毛で覆われた。
- 比較結果 → 対照群(外用液)では25.7%にとどまり、発毛面積・毛包数・メラニン沈着量のいずれもステビア群が統計的に有意に優れた。
- 作用メカニズム → ステビオシド自体にも軽い血管拡張作用があり、頭皮の血流を改善してミノキシジルの効果を高めた可能性があると研究チームは推測。
結果として、ステビアとミノキシジルを組み合わせたマイクロニードル群では、14日で明確な毛の再生が始まり、35日目には治療部位の約67.5%が新しい毛で覆われた。
対照のグループである外用液群では25.7%にとどまり、発毛面積・毛包数・メラニン沈着量のいずれもステビア群が統計学的に有意に上回った。
研究者らは、ステビオシドそのものにも軽度の血管拡張作用があるため、頭皮の血流を改善してミノキシジルの効果を高めた可能性があると推測している。
ミノキシジルの浸透性という課題を、食品由来の天然素材で克服した初めての例という。
研究チームは今後、ヒトでの臨床試験や長期使用時の安全性検証を進め、実用化を目指す方針。
マイクロニードルパッチは美容医療分野でも注目が高まっており、ヒアルロン酸やペプチド、ビタミン類を皮膚に浸透させる「美容パッチ」としての応用も進んでいる。新しい発毛治療として注目される可能性がある。
