
気になる白髪。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
白髪が出てくるのはどうしてなのか?
その背景には、日本人を含むアジア人ならではのメカニズムがあるようだ。
ロート製薬が2025年10月16日に報告した。
日本人2186人の調査から遺伝子の関連を突き止める

白髪が混じる?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 研究対象 → 平均年齢42.7歳の日本人2186人を対象に、唾液から抽出したDNAを解析し、白髪の有無と遺伝的特徴の関連を調査。
- 主な発見 → 「PLXNA1遺伝子」と白髪との関連を初めて確認。この遺伝子のシグナル低下がメラノサイトの機能を弱め、メラニン供給減少につながる可能性が示された。
- 意義 → 細胞内のシグナル経路が白髪の形成に関与する可能性を示し、白髪発生メカニズムの理解に新たな手がかりを提供した。
白髪は、毛包と呼ばれる毛根にある髪の毛を作り出す細胞がメラニン色素を作らなくなると起こる。メラニン色素があることで、髪の毛は色づく。メラニン色素を作る細胞がメラノサイトと呼ばれている。
これまでメラノサイトがメラニン色素を作らなくなる理由は完全には解明されていない。
今回は、日本人を対象としてこのメラニン色素を作らなくなる理由が、遺伝子を調べることによって研究された。
研究対象は、平均年齢42.7歳の日本人2186人。唾液から抽出したDNAを調べることで、白髪の有無と関係した特徴を確かめた。
※DNA解析では、「SNP(一塩基多型)」と呼ばれるDNA配列のわずかな違いに注目し、白髪の有無との関連を調べている。
DNAは、ATGC(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)という4種類の塩基分子が約30億個連なってできている。この塩基配列には個人差があり、その違いが体質などと関係している場合がある。
こうした個人ごとのDNA配列の違いを「SNP(一塩基多型)」と呼び、通常は「rs」に続く数字(例えば、rs123456)で表される。
研究の結果、日本人を対象とした調査で「PLXNA1遺伝子」という遺伝子と、白髪の関係が初めて確認された。この遺伝子が細胞内のシグナルを通して、メラノサイトの機能に影響したと考えられた。
細胞内のシグナルの働きが低下すると、メラノサイトの機能も低下。結果、メラニン供給が減ると考えられた。
この発見により、白髪の発生メカニズムの一端が明らかになったと考えられた。
※PLXNA1という遺伝子は、これまで神経細胞の発達や突起形成を制御する遺伝子として知られていた。
白髪と関連するSNPが特定されたことで、PLXNA1がメラノサイトにも影響を及ぼしている可能性が示された。
神経細胞とメラノサイトは、どちらも発生の起源が「神経堤」という共通の細胞にあることが知られている。
さらに研究では、PLXNA1のリガンド(スイッチのような役割)であるSema-3A(セマフォリンIII)が、メラノサイトの突起形成を抑制することが確認された。
この結果から、Sema–Plexinシグナル経路が白髪の形成に関与している可能性が示唆された。
研究チームの実験では、Sema-3Aを添加した培養ヒトメラノサイトで、突起形成の有意な抑制が観察された。
「隠す」から「防ぐ、改善」へ

白髪がある?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 今後の展望 → ロート製薬は、白髪と関連する「PLXNA1遺伝子」および細胞内シグナル経路を標的とした白髪対策製品の開発を目指す方針。
- 関連研究 → 米国の研究では、毛包内のメラノサイト幹細胞が動き回ることでメラニン生成能力を維持していることが報告されている。
- 今後の可能性 → 白髪のメカニズム解明が進むことで、従来の「白髪を隠す」アプローチから、メラノサイトの機能維持・活性化による「根本的改善」への転換が期待される。
ロート製薬は今後、今回発見した関連する「PLXNA1遺伝子」と細胞内のシグナル経路を標的とする白髪対策製品の開発を進める方針を示している。
今回とは別だが、ヒフコNEWSで伝えた米国の研究では、毛包内のメラノサイト幹細胞という細胞が動き回ることでメラニン色素を作る能力を保っていると報告された。
こうした白髪のメカニズムが明らかになることで、従来の染毛剤のように「白髪を隠す」という対応ではなく、メラノサイトの機能を維持、活性化して根本的に改善するアプローチが考えられる。予防や改善といったアプローチに変わる可能性もある。
