
白髪が気になる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
白髪が黒く戻るのか──。その方法としてエクソソームを試した研究が報告された。
タイや台湾などからの研究グループが2025年11月に美容皮膚科誌に報告した。
頭皮にエクソソーム導入

白髪は黒髪に戻るか。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 白髪の原因 → 毛根のメラノサイトが失われることで発生。栄養不足、喫煙、遺伝などもリスク要因とされる。
- 治療の難しさ → 白髪は一度なると黒髪に戻りにくく、白髪染めによる肌への負担が課題。黒髪への回復にはニーズがある。
- エクソソーム治療の試み → 平均58.6歳の男女10人を対象に、バラ由来幹細胞エクソソームを使用。RFマイクロニードル、レーザー、ジェット導入、外用など複数手法で頭皮に導入した。
白髪は毛根の周囲にあるメラニン色素を作るメラノサイトが失われることで発生する。白髪に関する研究では、栄養不足や喫煙などがリスクになったり、遺伝も関連したりすることが報告されている。
一方で、いったん白髪になった髪は元のような黒髪に戻りづらいと考えられている。白髪染めが普及しているが、染料が肌に与える負担も課題となる。白髪を元の黒髪に戻す方法は求められている。
そうした中で、エクソソームを利用した治療が試みられている。今回、研究チームはこの治療法の効果や安全性を研究として検討した。
研究に参加したのは、白髪が目立つ、平均年齢58.6歳の男女10人。使われたのは植物のバラから採取した幹細胞由来のエクソソーム。頭皮への導入に当たっては、RF(高周波)マイクロニードル、レーザー、ジェット導入、外用など複数の方法が使われた。
「毛髪再生」と「黒髪化」が同時に

フラクショナル1064 nm Nd:YAGピコ秒レーザーとエレクトロポレーションによるエクソソーム導入を4週ごとに6回実施。黒髪の傾向が出ると共に毛量も増えた。(出典/J Cosmet Dermatol
. 2025;24:e70526.)
- 治療効果 → 平均4.6回の施術で、2.4回目ごろから黒髪が再出現。効果は4〜5カ月維持され、6割が「50〜100%改善」と高スコアを示した。
- 黒髪化しやすい条件 → 白髪歴が短いほど効果が高く、AGA(男性型脱毛症)がある人でも反応が良い傾向。毛包内に残るメラノサイト幹細胞が関係している可能性がある。
- 研究の限界と今後 → 症例数は10人と少なく比較群なしだが、白髪治療の可能性を示す初期データとして注目される。
平均4.6回の治療を行ったところ、2.4回目あたりから明確な黒髪の再出現が始まり、治療終了後も平均4〜5カ月維持された。
評価スコア(0〜4点)の平均は2.8点で、全体の6割が「50〜100%改善」の高スコア群に入った。
治療法は統一されていないものの、どの手法でも「毛髪再生」と「黒髪化」が同時に起こる傾向もみられた。全員に副作用は確認されなかった。
黒髪化しやすい条件には傾向があった。最も大きいのは「白髪歴の長さ」。白髪になってからの年数(白髪歴)が短い人ほど改善しやすかった。白髪になるとメラノサイトの幹細胞が失われ、早期ほど戻りやすいという従来の考えを裏付けたという。
次に、AGA(男性型脱毛症)がある人の方が反応が良いという意外な結果も示された。AGAの人の毛包にはメラノサイト幹細胞が残っていることが多く、エクソソームがその活性を引き出す可能性があると論文では考察している。
白髪の割合が中等度(26〜50%)の人において、最も大きな改善が見られる傾向があった。重度(51%以上)では効果が限定的で、白髪が増えきる前の段階の方が反応しやすいと考えられる。
今回の研究は症例数10人と少なく、治療を受けていない人と比較をしていないため、試験のエビデンスレベルは高いとはいえないものの、今後、研究次第では、白髪の治療が実現する可能性もある。
