
牛脂スキンケアが注目された。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
牛脂を使ったスキンケアが海外でトレンドになった。
ナチュラルで環境に優しいとされ、SNSで手作りクリームや市販品を推す投稿が増えた。
2025年12月、米国ミシガン州立大学などの研究チームが、牛脂スキンケアについて発信したSNSの情報を分析した結果を美容皮膚科誌で発表した。
根拠はほとんど示されず

牛脂スキンケアを情報発信したSNS投稿は多いが根拠不足。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 牛脂スキンケアの科学的根拠を検証 → 研究チームはYouTube・TikTok・Instagramの計200件を分析し、牛脂に関する発信内容とその裏付けを調査した。
- 効果をうたう投稿の多くに根拠なし → ニキビ・アトピー・乾癬などへの効果が主張されていたが、科学論文を引用していた例は皆無。特にInstagram・TikTokでは引用論文はゼロだった。
- 医療資格のない発信が主流 → 投稿者の多くは一般インフルエンサーやエステティシャンで、皮膚科専門医による情報発信は全体の数%にとどまった。医師投稿は最も慎重な姿勢を示していた。
論文によると、牛脂に含まれる脂肪酸の一部は、理論的にはバリア機能を補う可能性が指摘されている。
例えば、オレイン酸やステアリン酸、リノール酸などは文献では皮膚への効果が示されている。
ただし、こうした論文はあくまでそれぞれの主要成分の脂肪酸を使用した場合のもの。牛脂製品そのものを臨床で評価した研究は少ない。
今回、研究チームは、YouTubeやTikTokの動画、Instagramの投稿の計200件を抽出して、牛脂スキンケアについての情報やその裏付け、発信者について調べた。
結果、牛脂スキンケアの効果としてうたわれていたのは、ニキビ、アトピー性皮膚炎、乾癬といった状態への効果。投稿に科学的な引用が添えられていた例はごくわずかで、特にInstagramとTikTokでは、引用論文が示されている例はなかった。
また、発信者の多くは皮膚科医ではなく、エステティシャンや一般インフルエンサーなど、医療資格を持たない人々が占めた。
皮膚科専門医による投稿は全体のわずか数%で、最も慎重な姿勢をとっていた。
にもかかわらず、SNS上ではポジティブな意見が多数を占めたが、多くは根拠が提示されていなかった。
品質管理の課題も指摘

良いスキンケアアイテムとは?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 多くの投稿に経済的利害が関与 → 論文によると、Instagram投稿の92%、YouTube動画の74%がアフィリエイトリンクや割引コードを含み、推奨と経済的利益が密接に結びついていた。
- 安全性リスク → 牛脂は酸化しやすく、製造・保存状態によって微生物汚染や品質差のリスクがある。牛由来アレルギーにも注意が必要とされた。
- FDAの規制は緩く、科学的裏付けは乏しい → 牛脂スキンケアは化粧品扱いで、安全性試験の義務なし。82ブランドが確認されたが、統一基準は存在せず、研究者は「臨床的な検証が必要」と結論づけた。
論文によれば、SNS投稿の特徴として、アフィリエイトリンクや割引コードの提示など、経済的利害の関与も多かった。
Instagram投稿の92%、YouTube動画の74%が何らかの「経済的利益」を伴っており、推奨と投稿者の利害が密接に結びついていた。
皮膚科医の投稿では利害関係が最も少なく、推奨自体も少なかった。
研究者は、牛脂スキンケア自体の安全性について懸念を示す。
牛脂は酸化しやすく、製造や保存状態によっては微生物汚染のリスクがある。このほか、牛由来製品に対するアレルギーの可能性や、製品間の品質差も大きいと見られるためだ。
米国食品医薬品局(FDA)は牛脂スキンケアを化粧品として扱うため、市販されるまでに有効性や安全性の試験が義務付けられているわけではない。今回の分析では、82種類もの異なる牛脂スキンケアのブランドが確認されたが、製造基準はまちまちで、統一的なガイドラインは存在しなかった。
研究チームは「ナチュラル志向の上昇により人気が高まっているが、科学的な裏付けは不足しており、今後きちんとした臨床研究が必要」と結論づけた。自然由来の成分だからといって、効果や安全性を保証しているわけではないことは注意が必要だろう。
