
皮膚の老化はどうして?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
シワやたるみなどの皮膚の老化は、見た目だけでなく、細胞レベルでも進行している。
中国の研究チームが2025年12月、細胞レベルで進む皮膚老化の仕組みの一端について報告した。この中で、肌の老化に作用する可能性のある薬が確認された。
若い人と高齢の人の細胞はどう違う?

皮膚の細胞を調べた。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 若年層と高齢者の皮膚細胞を1細胞レベルで比較 → 10代後半〜20歳と60〜70代の皮膚を解析し、10種類以上の細胞群それぞれで異なる老化の影響を確認。
- 「基底細胞」の遺伝子変化が目立つ → 高齢になると、金属イオン代謝や酸化ストレス応答に関わる遺伝子の発現が変化し、環境ストレス耐性の低下の可能性が示された。
- 細胞間コミュニケーションの減少 → 老化皮膚では細胞同士の情報伝達が弱まり、再生や修復のシグナルが低下している可能性が明らかになった。
皮膚の細胞がどのように老化していくのかは謎が多い。
研究チームは、若い人の細胞と、高齢の人の細胞を1つだけ取り出して、最新技術で調べることで、その間にある違いについて分析した。
対象となったのは、10代後半から20歳の若年層と、60代から70代の高齢者の2つのグループ。
各グループから皮膚を採取し、構成する細胞を1個ずつ解析した。
結果として、皮膚には10種類以上の細胞のグループが存在しており、それぞれの老化による影響はさまざまであることが分かった。
特に注目されたのが、皮膚の最も外側を支える表皮の基底細胞と呼ばれるタイプの細胞の違いだった。
この細胞では、高齢になると、この細胞の一部で、遺伝子の働きの変化が目立っていた。具体的には金属イオンや酸化ストレスに関わる遺伝子に差が生まれていた。
研究チームによると、この差は、紫外線や環境ストレスへの対応力に関係する可能性がある。
老化した皮膚では、細胞同士の情報のやり取りが全体的に減り、皮膚の再生や修復に関わるシグナルが弱まっている可能性が示された。
メトホルミンなどが老化細胞に反応

老化を防ぐ薬の可能性?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 老化皮膚の目安になる可能性が「FOSB」遺伝子に → 高齢者の皮膚で特に活性化しており、老化の進行度を見分けるバイオマーカーとなる可能性が示された。
- 既存薬の再評価で老化制御の可能性 → メトホルミン、レチノール、ジクロフェナクなど、既知の薬剤が老化関連遺伝子変化に作用する可能性を予測。
- 将来は細胞単位のアンチエイジング治療へ → 遺伝子変化を基盤に、老化した皮膚細胞を狙い撃ちする新しい治療や薬剤開発につながる可能性がある。
今回の研究では、このほかにも重要な手がかりが見つかった。
それは、「FOSB」と呼ばれる遺伝子が、老化した皮膚の中で特に活発になることが分かり、皮膚がどの程度老化しているかを見分ける目印になる可能性が示された点だ。
これにより、老化が進んでいる細胞を特定したり、将来は治療や薬の効果を評価したりする目安として役立つ可能性がある。
研究チームは、細胞の遺伝子の変化に基づいて、どの薬が老化した皮膚細胞に反応する可能性があるかを予測した。
その結果、メトホルミンやレチノール、ジクロフェナクなど、すでに知られている薬が、特定の皮膚細胞で老化関連の変化に作用する可能性が示された。
メトホルミンは糖尿病の治療薬として使われてきたもので、老化との関連も注目されることがある。レチノールはビタミンAの一種で、皮膚の再生に関わる成分として知られている。ジクロフェナクは炎症を抑える薬として広く使用されている。
研究者は、老化した皮膚を細胞レベルで理解し、狙い撃ちする治療につながる可能性があるとまとめている。
将来的には、肌の老化をコントロールする薬の開発につながる可能性もある。
