
体に良い成分を飲むと起こる効果。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
敏感肌は、炎症や乾燥、バリア機能の低下が複雑にからみ合う状態で、スキンケアのための製品を塗るだけでは十分な改善が得られないケースも少なくない。
こうした中、中国の研究チームが2025年12月に美容皮膚科誌で、セラミドや植物由来ポリフェノールなどを飲む効果により、皮膚の状態を改善できる可能性を示した。
「飲む」効果をマウスで検証

飲む効果とは。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 中国チームが「飲むケア」を検証 → セラミドと植物由来ポリフェノール(プロアントシアニジン、ケルセチン、シトラスフラボノイド)を組み合わせてマウスで実験。
- 高用量摂取で改善効果 → 皮膚の赤みやかさぶたが軽減し、経皮水分蒸散量(TEWL)が低下。バリア機能回復の可能性が示唆された。
- 皮膚構造タンパク質が回復 → 乾燥肌モデルでもカサつきが改善。
研究チームはセラミド、プロアントシアニジン、ケルセチン、シトラスフラボノイドを組み合わせた成分を使って、アトピー性皮膚炎を起こしやすい性質を持つマウスおよび乾燥肌を起こしやすい性質を持つマウスで検証を行った。セラミドは皮膚のバリア機能に関わる物質。一方、プロアントシアニジン、ケルセチン、シトラスフラボノイドは、植物由来で体にメリットをもたらすとされるポリフェノールの仲間フラボノイドの一種として知られている。
※マウスには、人の病気を再現できる「モデルマウス」が存在している。
その結果、高用量で摂取したグループでは、皮膚の赤みやかさぶたといった病変が軽くなることが分かった。さらに、皮膚から水分が逃げにくくなり、バリア機能が回復した可能性も示された。
※皮膚からの水分の蒸発の程度を示す「経皮水分蒸散量(TEWL)」が低下していた。
さらに、炎症やかゆみ、血管の反応も抑えられていることが判明。顕微鏡で組織を見ると、皮膚の肥厚や肥満細胞の浸潤が減り、炎症反応全体が抑制されていた。乾燥肌モデルでも、皮膚のカサつきや粉をふくような状態が改善し、皮膚バリアを構成するタンパク質の発現が回復していた点が注目された。
※炎症に関与する「IL-4」「IL-6」「IL-31」と呼ばれるサイトカイン、かゆみや血管反応に関わる「ET-1」「TRPV1」が抑えられた。皮膚バリアを構成するタンパク質には、フィラグリンやロリクリン、AQP3といった物質がある。
腸内環境の改善を確認

飲むことがヘルスケアにつながる?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 腸内環境の改善が確認 → 成分を摂取したマウスでは、ファーミキューテスとバクテロイデスのバランスが正常化し、腸内細菌叢が整う傾向が見られた。
- 腸‐皮膚相関の関与 → 腸内環境の改善が免疫や炎症を介して皮膚に良い影響を与える「腸‐皮膚相関」のメカニズムが働いた可能性。
- 今後の応用可能性 → 動物実験の段階ながら、セラミドやフラボノイドなどを「内側から整える」アプローチがスキンケアや美容医療の新しい方向として注目されつつある。
この研究では、腸内環境が改善したのが特徴だ。
成分を摂取したマウスでは、腸内細菌の構成が変化し、ファーミキューテスおよびバクテロイデスと呼ばれる腸内細菌の代表的なグループのバランスが正常になる傾向が見られた。
皮膚と腸の相互作用(腸‐皮膚相関)が注目されており、口から摂取した成分が免疫や炎症を通して皮膚に影響する可能性が指摘されている。今回も、腸内環境の改善がひいては皮膚状態を改善した可能性が考えられた。
今回は動物実験なので、人にそのまま当てはまるものではないものの、今後、スキンケアの手法として、セラミドやフラボノイドが注目される可能性はある。外側から「守る」スキンケアに加え、内側から「整える」という視点は、美容医療でも関心が寄せられているところで、今後、関連する研究は増えてくる可能性がある。
