
モニター割引の仕組みに課題はある?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
美容医療の現場では、経験の浅い医師が施術を行う代わりに、料金を割り引く「モニター割引」が広く行われている。
米国の研究グループが2025年12月、研修中の医師による美容施術と割引制度を巡る倫理的な課題を、米国皮膚科学会誌で論じている。
そもそもモニター割引とは?

研修医が施術した場合に割引する仕組み。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 論文の題材→ 米国の大学病院などで行われている割引美容施術の課題を指摘
- 倫理的問題①→ 「安くなるなら断りづらい」といった心理が、真の自己決定を歪める可能性がある
- 倫理的問題②→ 割引が美容医療に限定され、医療的必要性のある治療には適用されない点が公平性の面で問題視されている
日本でも、美容外科や美容皮膚科の広告などで「モニター募集」という言葉を目にしたことがある人は多いだろう。症例写真の提供や研修目的とセットで案内されることがよくある。
「モニター割引」には、はっきりとした定義がない場合も多いが、もともとは施術を受けた場合に、施術の写真を撮影し、クリニックの実績とさせてもらい、その代わり料金を割り引く仕組みとされる。
一方で、もう一つの意味として、経験が浅い医師、指導医の監督下で施術を行う代わりに、通常より低い価格で美容医療を受けられる仕組みを指すことも多い。
モニター割引では、施術を受ける側には費用負担が軽くなり、医師側にとってはトレーニング機会が得られる。そのため、制度としては長く容認されている側面もある。
今回取り上げられた論文は、米国の大学病院など皮膚科施設で行われている割引美容施術を題材にしている。
論文では、研修医による施術そのものは医療教育に欠かせず、適切な監督下であれば正当性があるとしている。その上で、とりわけ論文が問題視しているのは、割引が、施術を受ける人の判断をどこまで歪め得るか、という点だ。
具体的には「安くなるなら断りづらい」という状況での同意は、本当に本人の意思といえるのかを問うている。
もう一つ問題視されたのは、割引の対象が美容医療にほぼ限定されている点。医学的に必要な皮膚の病気の治療では割引はほとんど行われない一方、美容目的の施術だけが安く提供されることが、公平性の観点から疑問視されている。
透明な説明と監督体制が鍵に

割引をしたときの説明が必要。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 説明の重要性→ 「研修医が担当すること」「経験レベル」「リスクや代替案」を明確に説明する必要がある
- 同意の保障→ 施術をいつでも拒否できる権利の保証が不可欠
- 米国の議論の意義→ 本人が本当に納得して施術を受けているのかを問い直す材料になる
論文では、モニター割引そのものを否定しているわけではない。重要なのは「研修医が担当すること」「その役割や経験レベル」「リスクや代替案」を明確に説明し、いつでも拒否できる権利があることを保証する点だとしている。
さらに、割引制度によって、特定の人たちだけが施術を受ける形になっていないかを、定期的に検証する必要があるとも指摘した。研修のための医療が、経済的な弱者あってのものになっていけないという考え方だ。
日本では「モニター」という言葉自体が広告表現として使われることも多く、研修医の関与や経験年数が曖昧なまま説明されるケースも少なくない。そう考えると、米国の議論は「本当に納得した上で受けているか」を考える材料にもなる。
参考文献
Kim J, Zieneldien T, Ma S, Tan IJ, Grant-Kels JM. Cosmetic Training Models in Academic Dermatology: Balancing Ethics, Equity and Patient Rights. J Am Acad Dermatol. 2025 Dec 19:S0190-9622(25)03439-5. doi: 10.1016/j.jaad.2025.12.057. Epub ahead of print. PMID: 41422911.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41422911/
