
アセチルヘキサペプチド-8などの神経系ペプチドは、目元や表情ジワへの効果を狙った化粧品成分として研究されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
ボツリヌス製剤を使わずに、塗るだけで表情ジワを和らげることはできるのか。「塗るボトックス」とうたわれることがあるペプチド化粧品について、これまでの研究をまとめた結果が報告された。
タイの研究グループが、ボツリヌストキシン注射に似た働きを狙う化粧品用の神経系ペプチドについて、11研究、計412人のデータを検証した。一部の成分では目元などのシワ改善が確認されていた一方、注射によるボツリヌス製剤治療ほどの効果には達していないことも分かった。研究は2026年8月、Journal of Cosmetic Dermatologyに報告された。
ボツリヌス製剤そのものではない

注射を避けたい人向けのシワ対策として、神経系ペプチド配合化粧品の可能性が検証されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 神経系ペプチド→神経と筋肉の情報伝達に関わる仕組みに働きかけ、表情ジワを和らげることを狙った化粧品成分。
- 代表的な成分→アルジルリンとして知られるAHP-8のほか、ルーファシルやシンエイクなどが研究されている。
- 注射との違い→ボツリヌス製剤そのものを塗るのではなく、その作用の一部を模倣することを狙った別の成分である。
表情ジワの治療では、A型ボツリヌス製剤を筋肉に注射し、筋肉への神経伝達を抑える方法が広く行われている。眉間や目尻などの表情ジワを改善する代表的な美容医療で、効果は一般に数カ月続く。
一方で、注射を避けたい人向けに登場しているのが、神経と筋肉の情報伝達に関わる仕組みに働きかけることを狙った「神経系ペプチド」だ。代表的な成分には、アルジルリンとも呼ばれるアセチルヘキサペプチド-8(AHP-8)のほか、ルーファシル(Leuphasyl)、シンエイク(Syn-Ake)などがある。
今回の論文では、こうしたアプローチを「ノートックス・トゥイークメンツ(NoTox Tweakments)」と表現している。注射を使わず、比較的穏やかな方法で見た目の改善を図るという考え方だ。
もっとも、実際のボツリヌス製剤を皮膚に塗るわけではない。ボツリヌス製剤注射が神経と筋肉の接合部で強力に作用するのに対し、化粧品ペプチドはその一部の仕組みを模倣することを狙った成分であり、両者は別のものだ。
研究グループは論文などのデータベースを2026年6月まで検索。塗る製剤などに関する847件の文献から条件に合う11研究を選び、分析した。
4週間で目元のシワが約半減の報告も

「塗るボトックス」と呼ばれることもある神経系ペプチドは、表情ジワを穏やかに改善する可能性が検証されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- シワへの効果→AHP-8を10%配合したクリームでは、4週間で目元のシワの深さが48.9%減少した研究が報告された。
- 安全性→11研究では全身性の有害事象は報告されず、一時的な赤みや軽いかゆみなどが少数で確認された。
- 今後の課題→研究規模や質にはばらつきがあり、ボツリヌス製剤注射の代わりになると判断するには直接比較する大規模研究が必要。
結果を見ると、いくつかのペプチドでシワ改善が確認されていた。
アセチルヘキサペプチド-8を10%配合したクリームを60人で調べた研究では、4週間で目の周囲のシワの深さが48.9%減少したのに対し、プラセボでは変化がなかった。また、アセチルヘキサペプチド-8などを含む複数のペプチドを配合した美容液を調べた研究では、12週間後に細かいシワの改善が確認された人は100%、より深いシワの改善が確認された人は67%だった。
アセチルヘキサペプチド-8とシンエイクを組み合わせた美容液では、12週間で静止時のシワが35~69%改善し、表情を動かしたときに現れるシワの深さも10~13%減ったと報告された。
もっとも、注射によるボツリヌス製剤治療ほど強い効果が確認されたわけではない。論文では、A型ボツリヌス製剤注射について、別の臨床試験で眉間や目尻のシワに対する反応率が約64~90%に達していることを紹介している。ただし、評価方法や対象が異なる研究同士の数字であり、単純に比較することはできない。
安全性については、今回含まれた11研究で全身性の有害事象は報告されなかった。少数で一時的な赤みや軽いかゆみなどが見られたが、いずれも治療を必要とせず改善したとされる。
一方、エビデンスにはまだ弱い部分もある。研究の規模は小さく、研究の質にもばらつきがあった。メーカーによるデータが含まれる成分もあり、11研究のうち1件では、成分を皮膚に塗るだけではなく、角層を越えて届けるマイクロニードルパッチが使われていた。
今回のレビューからは、アセチルヘキサペプチド-8やシンエイクなどのペプチドが、注射を使わないシワ対策として一定の可能性を持つことが見えてきた。一方で、ボツリヌス製剤注射の代わりになると判断できる段階ではない。特に、同じ条件で両者を直接比較する大規模な臨床試験が必要だ。
また、「塗るボトックス」といった表現は、韓国で違法広告として摘発されている。日本でも現在も使われているが、広告表現としての妥当性についても課題になる。
注射を避けたい人の選択肢として、こうした「塗る」タイプの神経系ペプチドがどこまで受け入れられるのか。今後の研究によって、その位置付けがさらに明確になりそうだ。
参考文献
Aung PZ, Nararatwanchai T. NoTox Tweakments: Evidence for Topical Neurocosmetic Peptides as Needle-Free Neuromodulators for Facial Wrinkle Reduction—A Systematic Review. Journal of Cosmetic Dermatology. 2026;25(9).
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jocd.71137
「塗るボトックス」「フィラー治療効果」など、化粧品の違反広告が韓国で問題に、虚偽誇大広告など144件を摘発、韓国食品医薬品安全処が発表、日本でも課題か
https://biyouhifuko.com/news/world/12534/
