SPF信じて大丈夫?ハーバード大が教える日焼け止めの新常識
ポイント
- 日焼け止めの「SPF」は日焼け止め効果を正確に反映していない可能性がある
- 「ブロードスペクトラム」という考え方があるが、その有効性には不十分な面もある
- ミネラルタイプであるのに化学成分を不正に組み合わせた製品も存在する可能性
日焼け止めは毎日のスキンケアの一環として欠かせない。しかし、最近の研究では、その効果に関する常識が覆されている。日焼け止めを測るのに一般的に使われているサンプロテクションファクター(SPF)は、当てにならない可能性もあるという。
SPFは機能すべてを反映しているわけではない
米国ハーバード大学を中心とした研究グループは、2023年4月に発表された論文で日焼け止めについて詳しく解説している。そもそも日焼け止めは1950年に誕生し、初期の頃から、今でも当たり前に使われている「SPF」という基準を採用した。例えば、SPF10であれば、日焼けを引き起こす日光のエネルギーの10分の1しか皮膚に到達しないといった意味合いになる。
問題は、皮膚がどのように日焼けするかに基づいた、実際の人の肌で測定してSPFを決定していることだ。これは「インビボ測定」と呼ばれている。SPFは肌の色など複数の要因によって変わるため、保護効果を正確に数値化することは難しいことが分かっている。
研究グループによると、実験室で調べる「インビトロ測定」という方法があるにもかかわらず、米国食品医薬品局(FDA)などの国の機関は、日焼け止めの表示にはインビボ測定によるSPFの決定を求めている。
結果として、紫外線吸収の機能は表示されているSPFと異なることが多い。
「ブロードスペクトラム」にも課題あり
紫外線だけではなく可視光線も肌トラブルを起こすことが分かってきたので、常識は変わってきている。紫外線(UVAやUVB)は、光老化や色素沈着などの問題を引き起こすことが古くから知られている。さらに、紫外線ばかりではなく、可視光線も肌トラブルの一因となる。さまざまな光を遮断するために、「ブロードスペクトラム」という考え方が登場した。
ただし、これについて研究グループは、実際にはブロードスペクトラムは、SPF15以上で、一定の基準の光を防ぐことを一律に決められているだけで、防ぐべき光を適切に防げるのかどうかが十分に考えられていないと問題点が存在しているという。日焼け止めを塗る量も、足りていない場合が多く、紫外線や可視光線に長時間さらされてしまっている可能性もあると説明している。
「ブロードスペクトラムと書かれているから安心」というわけにはいかないわけだ。
ミネラルタイプの日焼け止めに不正が潜むことも
研究グループによると、日焼け止めには、ケミカルタイプとミネラルタイプの大きく2つのタイプがある。ケミカルタイプの日焼け止めは紫外線を吸収すると分解する成分を使っているのに対して、ミネラルタイプは酸化亜鉛や二酸化チタンを含んでおり、紫外線を反射する。ミネラルタイプの日焼け止めは、体や環境への悪影響が少ないとされるが、白く浮いて油っぽくなる欠点がある。そうした中、研究グループは、ミネラルタイプの中には、日焼け止めの効果を高めるための化学成分を入れて、効果を不正に高めている製品がある問題を挙げている。研究グループは米国の製品を調べて問題を浮き彫りにしているが、日本で購入できる製品についても品質に差がある可能性は認識しておいてよいかもしれない。
使い慣れた日焼け止めにも限界はあるというわけだが、逆に言えば,今後改良がもたらされる可能性もありそうだ。日焼け止めを上手に塗ることと、さらに、これらの問題点を意識して安易に日光に当たらないようにするなど、日焼け止め以外の対策もしっかり取ることが重要かもしれない。
参考文献
Moradi Tuchayi S, Wang Z, Yan J, Garibyan L, Bai X, Gilchrest BA. Sunscreens: Misconceptions and Misinformation. J Invest Dermatol. 2023 Aug;143(8):1406-1411. doi: 10.1016/j.jid.2023.03.1677. Epub 2023 Apr 11. PMID: 37054947.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37054947/
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