ヒアルロン酸注入によって鼻の形を整える「非外科的鼻形成術」が国内外で広く行われている。
2024年2月、カナダの医師がその安全性と満足度を調べるためにデータを分析し、その結果を報告している。
そのほかの研究や日本の学会でも講演が行われているが、安全に行われた場合の満足度は高いものの合併症のリスクがあることは理解しておくのは欠かせない。
鼻の形の変化には高い満足度が示される
- 研究対象→2020年1月から2022年7月まで、1つの医療施設で実施されたヒアルロン酸注入を用いた非外科的鼻形成術。対象者数は492人、平均年齢30歳、女性が94.9%。
- 使用量→初回治療には0.3〜0.5mLのフィラーを使用、4〜6週間後の調整で0.1〜0.3mLを追加。
- 合併症→全員が一時的な腫れを経験。その他に内出血が25%、非対称性の残り3.7%、局所的な血管閉塞が0.6%で発生。
- 治療の満足度→「FACE-Q Satisfaction with Nose」による鼻に対する満足度は平均90.2%、「FACE-Q Satisfaction with Outcome」による治療結果の満足度は99.2%。
医師アラシュ・ジャラリ(Arash Jalali)氏は、2020年1月から22年7月にかけて1つの医療施設で1人の施術者が実施したフィラー注射(VYC-25L、商品名Juvéderm Volux XC)による非外科的鼻形成術について分析した。データはフィラー注射を受けた人を連続で分析に含め、合計で492人が分析の対象になった。平均年齢は30歳で、大部分(94.9%)は女性だった。
初回治療には0.3〜0.5mLの範囲のフィラーが使用され、4〜6週間後の追加の調整のためのタッチアップでは0.1〜0.3mLが追加された。
治療を受けた全員に一時的な腫れが伴い、そのほかに内出血(25%)、非対称性の残り(3.7%)、局所的な血管閉塞(0.6%)が見られた。
満足度は、鼻に対する満足度を調べる「FACE-Q Satisfaction with Nose」 と、治療結果に対する満足度を調べる「FACE-Q Satisfaction with Outcome」と名付けられた2つのアンケートを用いて評価された。
鼻に対する満足度は平均90.2%、治療結果に対する満足度は99.2%と高いスコアとなった。合併症には血管閉塞の疑いがある3件が含まれていた。これらはヒアルロニダーゼの注射と経口ステロイドおよびアスピリンにより迅速に解決されたと説明されている。感染、壊死、失明、しこり、肉芽腫、遅延発症結節は報告されていない。
研究報告した医師は、フィラー注射の販売元であるアラガンのアドバイザリーボードに参加していたことを公表している。この研究は同社からの資金を受けていないという。
鼻の血管の形に個人差があり注意が必要
- 研究概要→インドの研究グループが2005年11月から21年2月までの11の研究を分析。ヒアルロン酸を使用した非外科的鼻形成術の安全性と満足度を調査。
- 満足度→施術を受けた人の満足度は平均90%以上で、カナダの研究結果と同様に高い。
2021年、インドの研究グループが世界の論文を集めて、ヒアルロン酸を使った非外科的鼻形成術の安全性についてのデータを分析した。この研究では、05年11月から21年2月までの11の研究に基づいて、治療の満足度や安全性が分析された。
これによると施術を受けた人たちの満足度は平均90%以上とカナダの研究と同様に高い結果が得られていた。一方で、非外科的鼻形成術の合併症は、注射後の腫れ、赤み、痛み、内出血が報告された。まれではあるが、血管障害や血腫のような合併症も可能性も示されている。
フィラー治療では誰にでも起こり得る内出血や腫れ、感染症など、また薬剤に対する過敏症や異物に対する反応によるしこり、施術者の技術が未熟であるために起こる出血や神経障害、形の違和感など、さまざまな合併症が起こる可能性がある。
中でもヒフコNEWSで伝えているが、鼻の血管の形には個人差があるので、そこを避けて施術できなければ血管を傷つけて大きな出血を起こしたり、血管を押して流れをせき止めたり、薬剤が血流に入ったりして、血管の中で血液の塊ができて目や脳の血管を詰まられたりするリスクがある。実際に鼻の皮膚が死ぬ壊死を起こしたり、最悪のケースとして目の血管を詰まらせて失明させたりするケースが存在している。医学会の議論でも出ていたが、フィラー治療を行う施設では一般的に、万が一事故が起きた場合に備えて救急搬送できる体制を整えている。
非外科的鼻形成術は鼻の中の血管の構造について熟知した医師は安全に行える施術とされるが、施術を検討する際には、満足度ばかりではなく、リスクについても十分に理解しておくことが重要になる。