糸リフトの技術について韓国の美容外科医らが詳細に解説した論文が2024年8月に美容皮膚科の専門誌に掲載された。
このレビューでは、吸収型スレッドの複数のタイプが図とともに解説されている。
糸リフトの形に複数パターン
糸リフトは、美容医療において顔の若返りや引き締めを実現するための主な手法として、その技術が進化してきた。もともと顔のたるんだ組織を引き締めるためには、フェイスリフトの手術が行われてきた。それに対して、ロシアの医療機関が2002年に最初に、手術の縫合に使われる糸にノコギリの歯のような切れ込みを入れた「APTOS」というスレッドを開発し、これで組織を保持して顔の組織をリフトする方法を報告した。これで顔のたるみを持ち上げることに成功し、これが「スレッドリフト」と呼ばれた。
その後、非外科的治療の一つとしてスレッドリフトは普及し、使用される糸は体に吸収されない非吸収性のものから、吸収性のスレッドが主流になっていった。吸収性スレッドは、体内で自然に分解されることで、組織に長期的な影響を与えずにリフト効果を提供するという特徴がある。
スレッドのタイプについては、美容医療の専門書やウェブサイトなどで見ると、その用途で分けたり、コグと呼ばれるトゲの方向で分けたりする考え方などが見られる。そうした中で、今回の論文では、スレッドの形に注目して次のように分類している。コグなしのスレッドについては簡単に触れているだけなので、日本で買い物の合間に施術できることからショッピングスレッドとも呼ばれるモノスレッドについて付け加えている。糸リフトを検討する際の参考になる。
コグ付きスレッド
- 長いU字型スレッド→ 長さがあり、U字型に曲げられたスレッド。2方向にコグが配置され、顔の下部や顎のたるみを引き上げるために使用される。V字型やL字型、コの字型などに使い分け可能。
- 短いI字型スレッド→ 短く直線的に挿入されるスレッド。細かい部位や局所的なリフトに適しており、顔の動きに柔軟に対応する。
- メッシュスキャフォールドスレッド、TESSLIFT SOFT→ メッシュ構造を持つ吸収性スレッド。コラーゲン生成を促し、リフト効果を長期間維持し、自然な動きを提供。
コグなしスレッド
- モノスレッド、いわゆるショッピングスレッド→ 皮膚の浅い層に挿入され、主に肌の引き締めや軽いリフトに使用される。
スレッドの表面にあるコグの形にはさまざまなパターンがある。例えば、スパイラル状や多方向に配置されたコグを持つスレッドが使われている。これにより、リフト施術後に組織を新しい位置に安定させるための機能が向上した。
論文によると、スレッドリフトの目的が単なる組織の強制的な引き上げ(フォースドリフティング)から、再配置された組織を新しい位置に効果的に保持すること(スタビライゼーション)にシフトした。
リスクと安全性、糸リフトの課題と対策
さらに吸収性スレッドにも、異なる素材が使われるようになっている。韓国の論文なので日本でそのまま使用されているとは限らないが、参考になる部分はあるだろう。異なる溶解速度や組織反応を活用し、施術効果を最適化することができる。
- ポリジオキサノン(PDO)→ 強い引っ張り強度があり、6カ月以上かけて徐々に溶解。
- ポリ-L-乳酸(PLLA)→ 高い弾性を持ち、顔の動きに対応しやすい。
- ポリカプロラクトン(PCL)→ 長期的な持続性があり、他の素材とブレンドされることが多い。
- Quill lift→ 75%ポリグリコール酸(PGA)と25%ポリカプロラクトン(PCL)で構成。
- V-loc→ 60%ポリグリコール酸(PGA)、26%ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)、14%ポリジオキサノン(PDO)で構成。
このほか開発当初に使われていたポリプロピレンのスレッドが使用されていたが、現在では吸収性スレッドに取って代わられている。
糸リフトは、その効果と手軽さから多くの患者に支持されているが、同時にいくつかの課題もあるので注意が必要だ。
- 組織損傷のリスク→ 血管や神経などの重要な解剖学的構造に損傷を与える可能性がある。
- スレッドの持続性とリフト効果の低下→ 時間とともにスレッドの張力が減少し、リフト効果が低下する可能性がある。
- 術後の違和感や不自然な仕上がり→ スレッド挿入後の顔の動きや表情に違和感が生じたり、不自然な仕上がりになるリスクがある。
- 吸収性スレッドの安全性→ スレッドが体内で適切に分解されない場合、感染や異物反応のリスクがある。
- 手技的なリスク→ 施術者の技術や経験に依存し、期待したリフト効果が得られない可能性がある。
スレッドが進化することでこうした課題が解決されてきた。また、施術者の技術も求められている。ヒフコNEWSでも伝えているが、糸リフトに関連したトラブルも国内で報告されている。
効果があり、安全な糸リフトが求められているが、施術を受ける際には慎重に検討することが重要だろう。