ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

糸リフトの技術がたるみを引き上げシワを改善する、美容皮膚科の医学誌で多彩なスレッドを解説、韓国の美容外科医らの論文

カレンダー2024.8.26 フォルダー最新研究
モノスレッド。短い吸収性スレッドを針によって挿入。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

短い吸収性スレッドを針によって挿入する手法も。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 糸リフトの技術について韓国の美容外科医らが詳細に解説した論文が2024年8月に美容皮膚科の専門誌に掲載された。

 このレビューでは、吸収型スレッドの複数のタイプが図とともに解説されている。

糸リフトの形に複数パターン

 糸リフトは、美容医療において顔の若返りや引き締めを実現するための主な手法として、その技術が進化してきた。もともと顔のたるんだ組織を引き締めるためには、フェイスリフトの手術が行われてきた。それに対して、ロシアの医療機関が2002年に最初に、手術の縫合に使われる糸にノコギリの歯のような切れ込みを入れた「APTOS」というスレッドを開発し、これで組織を保持して顔の組織をリフトする方法を報告した。これで顔のたるみを持ち上げることに成功し、これが「スレッドリフト」と呼ばれた。

 その後、非外科的治療の一つとしてスレッドリフトは普及し、使用される糸は体に吸収されない非吸収性のものから、吸収性のスレッドが主流になっていった。吸収性スレッドは、体内で自然に分解されることで、組織に長期的な影響を与えずにリフト効果を提供するという特徴がある。

 スレッドのタイプについては、美容医療の専門書やウェブサイトなどで見ると、その用途で分けたり、コグと呼ばれるトゲの方向で分けたりする考え方などが見られる。そうした中で、今回の論文では、スレッドの形に注目して次のように分類している。コグなしのスレッドについては簡単に触れているだけなので、日本で買い物の合間に施術できることからショッピングスレッドとも呼ばれるモノスレッドについて付け加えている。糸リフトを検討する際の参考になる。

コグ付きスレッド

  • 長いU字型スレッド→ 長さがあり、U字型に曲げられたスレッド。2方向にコグが配置され、顔の下部や顎のたるみを引き上げるために使用される。V字型やL字型、コの字型などに使い分け可能。
  • U字型のコグ付きスレッド。(出典/J Cosmet Dermatol
. 2024 Aug;23:2537-2542.)

    U字型のコグ付きスレッド。(出典/J Cosmet Dermatol
    . 2024 Aug;23:2537-2542.)

  • 短いI字型スレッド→ 短く直線的に挿入されるスレッド。細かい部位や局所的なリフトに適しており、顔の動きに柔軟に対応する。
  • I字型のコグ付きスレッド。(出典/J Cosmet Dermatol
. 2024 Aug;23:2537-2542.)

    I字型のコグ付きスレッド。(出典/J Cosmet Dermatol
    . 2024 Aug;23:2537-2542.)

  • メッシュスキャフォールドスレッド、TESSLIFT SOFT→ メッシュ構造を持つ吸収性スレッド。コラーゲン生成を促し、リフト効果を長期間維持し、自然な動きを提供。
メッシュ構造になっているコグ付きスレッド。(出典/J Cosmet Dermatol
. 2024 Aug;23:2537-2542.)

メッシュ構造になっているコグ付きスレッド。(出典/J Cosmet Dermatol
. 2024 Aug;23:2537-2542.)

コグなしスレッド

  • モノスレッド、いわゆるショッピングスレッド→ 皮膚の浅い層に挿入され、主に肌の引き締めや軽いリフトに使用される。

 スレッドの表面にあるコグの形にはさまざまなパターンがある。例えば、スパイラル状や多方向に配置されたコグを持つスレッドが使われている。これにより、リフト施術後に組織を新しい位置に安定させるための機能が向上した。

 論文によると、スレッドリフトの目的が単なる組織の強制的な引き上げ(フォースドリフティング)から、再配置された組織を新しい位置に効果的に保持すること(スタビライゼーション)にシフトした。

リスクと安全性、糸リフトの課題と対策

顔のたるみを引き上げる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

顔のたるみを引き上げる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 さらに吸収性スレッドにも、異なる素材が使われるようになっている。韓国の論文なので日本でそのまま使用されているとは限らないが、参考になる部分はあるだろう。異なる溶解速度や組織反応を活用し、施術効果を最適化することができる。

  • ポリジオキサノン(PDO)→ 強い引っ張り強度があり、6カ月以上かけて徐々に溶解。
  • ポリ-L-乳酸(PLLA)→ 高い弾性を持ち、顔の動きに対応しやすい。
  • ポリカプロラクトン(PCL)→ 長期的な持続性があり、他の素材とブレンドされることが多い。
  • Quill lift→ 75%ポリグリコール酸(PGA)と25%ポリカプロラクトン(PCL)で構成。
  • V-loc→ 60%ポリグリコール酸(PGA)、26%ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)、14%ポリジオキサノン(PDO)で構成。

 このほか開発当初に使われていたポリプロピレンのスレッドが使用されていたが、現在では吸収性スレッドに取って代わられている。

 糸リフトは、その効果と手軽さから多くの患者に支持されているが、同時にいくつかの課題もあるので注意が必要だ。

  • 組織損傷のリスク→ 血管や神経などの重要な解剖学的構造に損傷を与える可能性がある。
  • スレッドの持続性とリフト効果の低下→ 時間とともにスレッドの張力が減少し、リフト効果が低下する可能性がある。
  • 術後の違和感や不自然な仕上がり→ スレッド挿入後の顔の動きや表情に違和感が生じたり、不自然な仕上がりになるリスクがある。
  • 吸収性スレッドの安全性→ スレッドが体内で適切に分解されない場合、感染や異物反応のリスクがある。
  • 手技的なリスク→ 施術者の技術や経験に依存し、期待したリフト効果が得られない可能性がある。

 スレッドが進化することでこうした課題が解決されてきた。また、施術者の技術も求められている。ヒフコNEWSでも伝えているが、糸リフトに関連したトラブルも国内で報告されている。

 効果があり、安全な糸リフトが求められているが、施術を受ける際には慎重に検討することが重要だろう。

参考文献

Hong GW, Park SY, Yi KH. Revolutionizing thread lifting: Evolution and techniques in facial rejuvenation. J Cosmet Dermatol. 2024 Aug;23(8):2537-2542. doi: 10.1111/jocd.16326. Epub 2024 Apr 28. PMID: 38679891.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38679891/

Sulamanidze MA, Fournier PF, Paikidze TG, Sulamanidze GM. Removal of facial soft tissue ptosis with special threads. Dermatol Surg. 2002 May;28(5):367-71. doi: 10.1046/j.1524-4725.2002.01297.x. PMID: 12030865.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12030865/

糸リフトによる重大事故が福井県で、左右のほおにしこり、痛み続く、消費者庁が報告
https://biyouhifuko.com/news/japan/5722/

美容医療の疑問やトラブルの相談、最も多いのは「目・まぶた」、厚労省検討会で示された6月3週間の相談内容、日本美容医療協会が情報を提供
https://biyouhifuko.com/news/japan/8367/

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。