ミノキシジルは一般的に脱毛症の塗り薬として使用されているが、一部では飲み薬としても使用されている。ただし、米国や日本では飲み薬は国によって承認されておらず、安全性に問題があるとの指摘がある。今回、飲み薬では低用量であっても副作用が発生し、心臓などに異常を引き起こすリスクが確認された。
国際研究グループは2024年9月26日、美容皮膚科の専門誌でその結果を報告した。
ミノキシジル飲み薬のリスク
ミノキシジルはもともと高血圧の治療薬として開発されたが、その後、脱毛症の治療薬としても注目されるようになった。頭皮に塗布する塗り薬が一般的だが、一部では低用量のミノキシジル飲み薬が使用されている。米国では飲み薬は正式に承認されておらず、そのため未承認のまま使用されている実態がある。この状況は日本でも同様で、未承認にもかかわらず、自由診療や個人輸入でミノキシジルの飲み薬を使用している人が存在する。
ミノキシジルを飲み薬として使用すると、塗り薬とは異なり全身に影響を及ぼすため、安全性については確立されていない。しかし、副作用のリスクに関するデータは限られている。
今回、国際研究チームは、低用量のミノキシジル飲み薬の使用に伴う副作用について、米国食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(FAERS)のデータを用いて分析を行った。調査した副作用は以下の10種類である(めまい、体液貯留、頭痛、多毛症、低血圧、不眠症、心嚢液貯留、眼窩周囲浮腫、末梢性浮腫、頻脈)
※体内貯留は、体内に体液がたまる状態。心嚢液貯留は、心臓を包む膜の中に水がたまる状態、眼窩(がんか)周囲浮腫は、目の周りのむくみ、末梢性浮腫は、手足など体の末端のむくみ、頻脈は心臓の拍動が速くなる状態。
副作用のリスクが浮かび上がる
研究の結果、低用量のミノキシジル飲み薬の使用と特定の副作用との間に有意な関連性があることが明らかになった。
具体的には、心臓をはじめとする組織に水分がたまりやすくなる副作用のリスクが高まっていた。特に、心臓を包む膜の中に水がたまる「心嚢液貯留」と、心拍数が速くなる「頻脈」は、ミノキシジルの用量に関係なくリスクが高まっていた。また、全身の体液が増加する「体液貯留」や、手足などがむくむ「末梢性浮腫」は、用量が増えるにつれてリスクが高まる傾向が見られた。
一方、「多毛症」については高用量でリスクが増加したが、「めまい」「低血圧」「不眠症」「眼窩周囲浮腫」については明確な関連性は確認されなかった。
これらの結果から、低用量のミノキシジル飲み薬を使用する際には、最小有効用量(できれば1日あたり5mg以下)を守り、医師の指導の下で適切に管理することが重要であると指摘している。また、心臓の検査を定期的に行うことが推奨される。研究チームは、特に心臓や腎臓に疾患を持つ人は使用に慎重になるべきだと述べている。
今回の研究は、副作用との関連性が確認されたものであり、因果関係を証明するものではない。さらなる研究が必要であり、日本での未承認利用についても副作用の可能性を考えると注意が必要だ。