
フィラー注射で満足できなかったり、副作用が起きた場合の対処。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
シワ改善などの美容施術の目的でヒアルロン酸注入が一般に行われている。
その場合、仕上がりに満足できなかったり、予期しない副作用が起きたときには、「フィラーを溶かす」という選択肢がある。
米国形成外科学会が2025年1月にそのリスクやアフターケアのポイントなどを解説した。
フィラーを溶かす必要性とは

フィラー注入後の対応。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
米国形成外科学会によると、ヒアルロン酸フィラーは、時間の経過とともに自然に分解されるのに8~18カ月ほどかかる。
仕上がりに満足できない場合や、副作用が起きた場合、「ヒアルロニダーゼ」と呼ばれる酵素を注射し、フィラーを速やかに溶かす方法が用いられる。これが適用されるケースは次の通りだ。
- 仕上がりが希望と大きく異なる
- フィラーの移動によって不自然な見た目になる
- 結節(しこり)や炎症が発生する
- 血管閉塞が疑われるなど、医学的な緊急対応が必要な場合
ヒアルロニダーゼを注射することで、フィラーが短時間で分解され、即座に効果が現れる。多くの場合、数日で仕上がりが落ち着く。
これに対して、学会はリスクについても注意を促している。
フィラー溶解には即効性がある一方で、いくつかのリスクも伴う。学会が挙げる懸念点は次の通り。
リスク | 内容 |
---|---|
注射による痛み・内出血・腫れ | ヒアルロニダーゼを用いたフィラー溶解は注射を伴う施術であるため、フィラー注入と同様に痛みや内出血、腫れのリスクがある。特に血管が多い部位では、内出血の可能性が高くなるため、施術後のケアが重要となる。 |
アレルギー反応や発赤 | ヒアルロニダーゼに対するアレルギー反応がまれに報告されている。アレルギーのある人は、施術前に医師と相談し、必要に応じてパッチテストを行うことが望ましい。注射部位の赤みや腫れ、青あざなどの副作用も一時的に現れる可能性があるため、施術後の経過を慎重に観察することが求められる。 |
部分的にだけ溶かすのが難しい | ヒアルロニダーゼは液状であるため、注射部位周辺のフィラーを広範囲に溶解してしまう可能性がある。これは、「一部だけ調整したい」と希望する場合に課題となる点である。ディッキー医師によれば、「フィラーを少しだけ減らしたい」という微調整が難しく、「溶かすなら全部溶かすつもりで考えたほうがよい」とのことだ。そのため、施術前にどの程度溶かすのかを慎重に検討する必要がある。 |
副作用とは異なるが、ヒアルロニダーゼは液状で、特定の部分だけを狙って溶かすことが難しく、「微調整」には向かないという点も指摘されている。
ヒアルロニダーゼを使用する場合は、以上の点に留意する必要がある。米国形成外科学会は、経験豊富な美容外科医や形成外科医の下で施術を受けることが重要だと強調している。
アフターケアで腫れや内出血を抑える

フィラー注入。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
学会は、フィラーを溶かした場合のアフターケアのポイントも挙げている。注射による腫れや内出血を最小限に抑えるためのケアが推奨されている。
ケア方法 | 内容 |
---|---|
マッサージの実施 | 注射部位を1日1回、5日間ほどマッサージすることで、フィラーの分解を促し、なめらかな仕上がりを目指す。 |
冷却による腫れ対策 | 施術後の1~2日は、氷や冷却ジェルパックを使って腫れを抑える。直接肌に長時間当てると凍傷のリスクがあるため、タオルなどで包んで使用するとよい。 |
安静にすること | 施術後24時間は激しい運動や長時間の入浴など、血行が過度に促進されるような行動を避ける。これにより、内出血や腫れのリスクを軽減できる。 |
薬の服用に注意 | アスピリンなどの抗血栓薬などの血液を固まりにくくする薬は内出血のリスクを高める可能性があるため、注射の7日前から服用を控えるのが望ましい。服用中の薬がある場合は、事前に医師と相談することが重要である。 |
また、適切な医師を選ぶためのポイントも示されている。
- 施術実績が豊富な形成外科医や美容外科医を選ぶ
- 施術前にリスクやダウンタイムについて十分な説明を受ける
- 仕上がりのイメージを事前に医師と共有し、不安点を解消する
フィラー注入の施術を受ける場合には、ヒアルロニダーゼによってフィラーの溶解も一般的に行われており、海外の解説ではあるが、参考になる点も多い。