
英国では美容医療の新しいライセンス制度が作られる。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
英国で、美容医療に関連した制度の整備が進んでいる。
そうした中で、2025年4月、英国の公的機関である英国看護助産師協議会(NMC)は、6月1日から美容目的の注入製剤のリモート処方を禁止すると発表した。ヒアルロン酸やボツリヌス製剤などの非外科的治療を受けるには、医療従事者との対面診察が必要となる。
日本では、現行の制度では遠隔からの処方は認められていないが、今回の英国の対応の背景には、同国ならではのルールが関連している。
製剤の入手経路を知らない人も

フィラー製剤が無資格者の手で注入されることも。(写真/Adobe Stock)
今回の発表によると、注入療法を実施するには、看護師や助産師が対面で相談に応じることが義務付けられる。今後、遠隔処方を行った看護師や助産師は、英国看護師助産師協議会(NMC)の登録を抹消される可能性がある。英国では、同協議会の登録がないと、看護師や助産師として働くことができなくなる。実質的に、登録抹消は失職に直結する処分だ。
NMCによると、非外科的治療に関連する調査の結果、規制強化の必要性が浮き彫りになったという。英国では、英国では、製剤の入手経路を把握していない施術者が多く、医薬品としての認識がなかった者も少なくなかった。フィラー注射が過度に容易に受けられるとの懸念を示す声も多かった。一方で、処方に対面が不要で、ビデオ通話による相談で十分と考える意見も見られた。
このような調査結果も参考に、今回の制度の整備が進められることになった。
背景には英国の美容医療制度の特殊性

英国では検討の上で美容施術のライセンスが本格導入される予定。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
こうした背景には、英国の美容施術をめぐる独特な制度がある。実際に、英国では医師だけでなく、歯科医、看護師、さらには美容セラピストも美容施術を行っている。こうした多様な施術者に共通する最低基準の整備が、長らく課題とされてきた。
今回問題になったように、フィラー製剤の処方では、看護師や助産師が対面対応をせず、遠隔のみで行うケースもあった。美容業界の非営利団体である英国美容協議会(British beauty coucil)によると、複数人に対して一度に大量に処方されるケースもあったという。こうした大量処方された製剤が、無資格者による不適切な施術に使用されていた可能性がある。これは、美容施術に関連したトラブルの一因となる。リモート処方の禁止は、そうした制度的空白を埋める第一歩と位置づけられる。
ヒフコNEWSでも伝えている通り、2022年に英国で「医療・ケア法(Health and Care Act)」が成立し、手術を伴わない美容処置に対するライセンス制度の導入が進行している。同制度では、施術のリスクに応じて「グリーン」「アンバー」「レッド」の三段階に分類し、それぞれに施術者の資格要件や監督体制を定める方針だ。注入系処置は中程度のリスクとされており、厳格な監督下での実施が求められている。
美容施術に関連するトラブルは日本でも問題となっており、トラブルを起こさないルールを考える上で、英国の制度は参考になる可能性がある。
