
2025年5月、スコットランド政府は新施策プログラム「Programme for Government 2025-26」を発表するに当たり、「非外科的美容処置法案(Non-surgical Cosmetic Procedures Bill)」の導入を正式に打ち出した。(出典/スコットランド政府)
英国で美容医療の規制強化が進んでいる。ヒフコNEWSでは、リモートでの製剤の処方の禁止について既に伝えたが、今回、新たにスコットランド政府による法律の導入が発表されている。
免許制の導入や施設の認証などの独自の仕組みが作られることになる。英国とは美容医療をめぐるルールが全く異なるものの、日本でも美容医療のルール整備が注目されており、参考となる点も多いと考えられる。
非外科的美容施術の安全対策へ

スコットランドの中心都市であるエジンバラの街並み。(写真/Adobe Stock)
- スコットランドの制度改革→ 非外科的美容施術に関する法整備を進める「非外科的美容処置法案」の導入が正式に打ち出された。
- 背景→ 意見募集や専門家の助言を経て、施術者の免許制、施設の認証、資格基準の設定などが検討されてきた。
- 具体的課題→ 偽造ライセンスの対策、犯罪組織の介入排除、施術範囲の明確化といった問題への対応も視野に入れられている。
スコットランドでは、2024年に一般向けの意見募集を行い、その結果も踏まえて、免許制の導入、施術を提供する施設の認証、資格取得のための最低基準の設定などの法整備に向けた検討を進めてきた。
これまでにスコットランド政府が外部の助言を得て、今後の情勢変化に備えて基準の柔軟化、偽造ライセンスへの対策、施術範囲の明確化、犯罪組織との関係遮断といった具体策について提言を得ていた。
こうして2025年5月、スコットランド政府は新施策プログラム「Programme for Government 2025-26」を発表するに当たり、「非外科的美容処置法案(Non-surgical Cosmetic Procedures Bill)」の導入を正式に打ち出した。
今後、詳細な条文が固められると見られるものの、スコットランド政府が公表している文書には、以下のような規制内容が示されている。
美容やライフスタイル目的の一部非外科的処置の提供を規制し、安全性を確保。特定の処置は、適切な団体に登録された施設での実施を義務付け。サービス提供者への適切な基準の施行支援も盛り込む。
国境を越えて進むルール整備

スコットランド伝統のタータンチェックに身を包んだ、スコティッシュマーチングバンド。(写真/Adobe Stock)
- 英国の美容医療の問題→ NHSでは医療が無料だが、美容医療、とくに非外科的治療は医療資格を持たない者による施術が広がり、事故が多発していた。
- 法整備の背景→ スコットランドでは2024年から薬剤師の施術に対する規制が始まり、18歳未満への施術禁止も検討されている。
- 日本との比較→ 日本でもトラブル増加を背景に、業界ガイドライン策定が進んでおり、国際的にルール整備が注目されている。
英国では公的医療制度(NHS)により医療が無料で提供されている一方で、美容医療の中でも、非外科的治療については医療従事者でない者による施術が広がっており、問題視されている。ボツリヌス製剤やヒアルロン酸などの注射を含む非外科的治療が世界的に広がる中で英国でも普及が進んでいるが、独特のルールが一因となって事故も発生していた。そうした中で、規制強化の必要性が高まっていた。
今回の法律整備に関連して、スコットランドでは2024年6月から薬剤師などによる施術の規制が始まっているほか、2021年に英国イングランドでは18歳未満へのフィラーやボツリヌス製剤の施術が禁止されたが、スコットランドでも同様の年齢制限導入の検討が進められると見られている。
今回の法案発表を受け、美容関連の団体であるブリティッシュビューティーカウンシルやJCCP(美容施術者合同評議会)などは、規制強化を求めてきた主張が反映されたと評価する声明を発表している。
英国はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの構成国に分かれているが、イングランドとスコットランドで規制が先行している。他の2つの構成国では規制が進んでいないという。
英国では美容医療のルール整備が進み、より施術の安全性が高まることが予想される。安全性が確保されてこそ、美容医療の発展が可能となる。日本でも、トラブルが問題視され、業界ガイドライン作りが進んでいる。国内外でルールの整備が関心を集めることになりそうだ。
