
米国皮膚科学会(AAD)で2025年まで会長を務めたシーマル・R・デサイ氏。(写真/編集部)
肝斑などの色素疾患の診療は、「見た目の改善」を中心とした評価から、客観的な数値に基づく長期管理へと移行する可能性がある。
米国皮膚科学会(AAD)で2025年まで会長を務めたシーマル・R・デサイ氏は、2026年1月にフランス・パリで開催されたIMCAS World Congress 2026で講演し、色素疾患診療における画像診断技術やAIの活用について解説した。
色素の「深さ」を見えるように

米国皮膚科学会(AAD)で2025年まで会長を務めたシーマル・R・デサイ氏。(写真/編集部)
- 色素疾患は慢性の病気→ 肝斑や炎症後色素沈着などは美容の問題だけでなく、長く付き合う病気として管理する必要がある。
- 皮膚の中を観察→ RCMやOCTなどの画像技術で、皮膚を切らずに色素の深さや分布を確認できる。
- 再発の手がかり→ 見た目は改善していても、皮膚の深部に残る色素が再発リスクの指標になる可能性。
同氏は、肝斑や炎症後色素沈着(PIH)、白斑などの色素疾患は、特定の肌タイプだけの問題ではなく、あらゆる肌で起こり得る慢性的な病気であると説明した。
こうした病気は美容医療の施術後にも生じることがあり、皮膚科診療において重要なテーマになっているという。
色素疾患の診察では、これまで肉眼や写真による見た目の評価が中心だった。しかしデサイ氏は、現在では皮膚を切り取る生検をすることなく、皮膚内部の構造を観察できる技術が登場していると紹介した。画像診断技術によって、色素の分布や深さを客観的に評価できるようになっているという。
講演では、「反射型共焦点顕微鏡(RCM:Reflectance Confocal Microscopy)」が紹介された。
RCMは、組織を切り取る生検を行わずに、皮膚組織に近いレベルの構造を観察できる技術。表皮と真皮における色素の分布を可視化できる。これにより、表皮型と混合型の肝斑の鑑別や、治療反応のモニタリングが可能になるという。
また、画像解析の一つである「ブラウンチャネル」を用いると、通常の写真では改善しているように見える症例でも、皮膚の深部に残る色素沈着を確認できる場合があると紹介した。残存している色素は再燃リスクを示す指標となる可能性があり、色素疾患の長期管理の重要性を示唆する。
さらに「光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)」も紹介された。
OCTは、皮膚の断層構造をリアルタイムで観察できる技術で、白斑におけるメラニンの消失や再色素化、肝斑における色素の深さの評価などに活用できる。顔面など組織を切り取る生検が難しい部位では、「デジタル生検」として機能する可能性があるという。
AI解析で進む重症度評価の自動化

美容皮膚科でAIの活用が進む。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 評価の数値化→ 肝斑や白斑の重症度は、MASIやVASIなどのスコアで評価されている。
- AIで自動計算→ 画像解析により色素の範囲を自動で測定し、重症度スコアを算出する研究が進む。
- 長期管理へ→ 治療効果を数値で追跡しながら、色素疾患を長期的に管理する診療が広がる可能性。
デサイ氏によると、色素疾患の重症度評価では、肝斑ではMASI(Melasma Area and Severity Index)、白斑ではVASI(Vitiligo Area Scoring Index)といったスコアが用いられる。しかし、計算が複雑で、日常診療では活用しにくいという課題があった。
講演では、AIによる画像解析を用いて色素の領域を自動抽出し、MASIやVASIのスコアを自動算出する研究も紹介された。これにより評価者によるばらつきを減らし、臨床試験や日常診療におけるモニタリングをより客観的に行える可能性があるとした。
デサイ氏は、色素疾患診療は今後「測定主導型(measurement-driven)」へと進むと指摘した。AIと画像診断の進歩により、肝斑や白斑の治療効果を数値として追跡できるようになれば、長期的な管理がより精密になる可能性があるという。
一方で、こうした技術はあくまで診療を補助するものであり、最終的な意思決定は皮膚科医が担うべきだとも強調した。
肝斑などの色素疾患では、数値を追いながら長期的に改善を目指すという考え方が、今後さらに広がる可能性がある。
