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バイオスティミュレーターが注目される理由、美容医療は「若返り」から変わる? フィラー反動と再生系への動き IMCASで語られたフィラー注入をめぐる考え方の転換

カレンダー2026.3.19 フォルダー 海外
米国の皮膚科専門医ジェレミー・B・グリーン氏。(写真/編集部)

米国の皮膚科専門医ジェレミー・B・グリーン氏。(写真/編集部)

 美容医療は従来の「補正中心」の考え方を見直し、新たな方向へ進もうとする動きが出ている。

 米国の皮膚科専門医ジェレミー・B・グリーン氏が2026年1月に、IMCAS World Congress 2026で講演した。

 同氏は、「若返り(anti-aging)」ではなく「うまく年を重ねる(aging well)」という価値観への転換について述べていた。

フィラーの反動

ヒアルロン酸注入の効果と限界。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ヒアルロン酸注入の効果と限界。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • やり過ぎへの反発→ 過剰なフィラーによる不自然な顔が広まり、敬遠する動きが出ている。
  • 問題は使い方→ フィラー自体ではなく、入れ過ぎや設計の問題が本質とされる。
  • 量より質へ→ ボリューム補充よりも自然さや肌質改善を重視する流れに変化。

 こうした変化の背景として挙げられたのが、「フィラーの反動(filler backlash)」。

 ヒアルロン酸フィラーそのものではなく、過剰な注入によって生じる不自然な外見。問題はいわゆる「オーバーフィルド症候群」と呼ばれる状態につながる。

 講演では、SNSで広まったやり過ぎ顔が例示された。顔が膨らみすぎる、表情のバランスが崩れるといった現象が紹介された。

 こうした症例はSNSなどで拡散されて半ば娯楽的に扱われつつ、「ああなりたくない」という心理を生み、新たに施術を受けることへの心理的なハードルになっている。

 講演者はこれを「業界にとって有害」とし、美容医療への入り口を狭めるリスクに言及した。

 一方で、「フィラーは悪者ではない」とも明言された。

 実際の症例では、数mLの注入により顔貌を大きく変えるのではなく、「整って見える」「休養が取れて見える」といった自然な改善も示された。問題は製剤ではなく、「使い方」と「期待値」という整理だ。

 講演では「組織支持と再生(tissue support and regeneration)」というキーワードが示された。

 これは単なるボリューム補充ではなく、その人らしさを保ったまま自然に若々しく見えること。加えて「肌質の改善」「長期的で緩やかな変化」といったニーズが強まっていると指摘された。評価の軸が、量から質へと移行しているという考えだ。

 この変わりすぎないことへの意識を象徴するエピソードとして、顔認証で別人と判定された医師の例も紹介された。施術を受ける側が恐れているのは老化そのものではなく、「不自然な変化」であることが示された。

深いシワが刻まれる前に補う

注入製剤の世界とは。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

注入製剤の世界とは。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 再生系治療が注目→ コラーゲン生成を促すバイオスティミュレーターの需要が拡大。
  • 予防的なアプローチ→ シワが深くなる前に治療し、老化の進行を緩やかにする考え方。
  • ロンジェビティへ拡張→ 見た目だけでなく、健康や体全体を含めた若さ維持への関心が高まっている。

 こうしたニーズの変化に対応する手段として存在感が増しているのがバイオスティミュレーター。

 講演では「組織資本を守る(Protecting tissue capital)」という表現が用いられ、単なる充填ではなく、組織そのものの質を高める効果が強調された。

 カルシウムハイドロキシアパタイト(CaHA)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリカプロラクトン(PCL)といった素材が線維芽細胞を刺激し、コラーゲンやエラスチンの産生を促すメカニズムが紹介された。

 グリーン氏は、施術を受ける側が製剤を指名して選ぶケースが増えたと述べた。「フィラーは避けたいが、再生系治療は受けたい」という声があるという。

 バイオスティミュレーターは、予防という見方が広がっているようだ。深いシワが刻まれる前に予防的に補い、老化の進みを緩やかにするという考え方。

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)による急速な体重減少が、顔のボリューム減少を引き起こす点も指摘された。

 「組織のレジリエンス(回復力・抵抗性)」を高める治療が重要だという。

 施術を受ける側の関心は外見だけでなく、代謝、炎症、睡眠、筋肉量といった全身の健康に結び付く「ロンジェビティ」に広がっていると紹介。老化を止めるのではなく、より良く年を重ねることをサポートする重要性が強調された。

 日本などでも「フィラー疲れ」といった見方があった。また、バイオスティミュレーターが関心を集めている。世界中で考え方は共通しているだろう。もっともバイオスティミュレーターの合併症も報告されており、こちらもやり過ぎなど注意は必要になる。

参考文献

「GLP-1」による減量で美容医療ニーズが変化 顔のボリューム減少が新たな悩みに 「オゼンピックフェイス」の問題がデータで裏付けられる アラガン・エステティックスが調査結果を公表
https://biyouhifuko.com/news/world/16895/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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