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カンナムオンニCEO医療法違反で有罪判決、なぜか

カレンダー2023.9.1 フォルダー 海外

ポイント

  • カンナムオンニ運営会社の創業者が医療法違反で有罪判決を受けた
  • 韓国の医療法では金銭で患者を医療機関に紹介することを禁じる
  • 韓国では厳しい規制を問題視する意見も出ているが、日本ではどうか?
医療機関の紹介を受けるサービスの規制は日韓で異なる。(写真/Adobe Stock)

医療機関の紹介を受けるサービスの規制は日韓で異なる。(写真/Adobe Stock)

 美容医療関連の情報アプリ「カンナムオンニ」を運営する韓国ヒーリングペーパーの創業者で、CEO(最高経営責任者)のホン・スンイル氏が、医療法違反で有罪判決を受けた。23年7月、2審の結果、懲役8カ月、執行猶予2年の判決で、この判決は22年1月に1審で受けた有罪判決を支持するものとなった。

ヒーリングペーパー創業者が有罪判決に直面

美容整形手術に関連したアプリが問題視された。(写真/Adobe Stock)

美容整形手術に関連したアプリが問題視された。(写真/Adobe Stock)

 ホン氏は12年に韓国でヒーリングペーパーを設立した。同社は15年、美容整形手術の見積もりアプリ「カンナムオンニ」を発表。人気を博したこのアプリは20年に日本に進出、3年弱でダウンロード数が70万件を達成した。

 韓国の中央日報の報道によれば、ホン氏は15年から18年にかけて加入者と病院をつなぐ見返りに手数料を受け取っていたとして、医療法違反で21年2月に起訴された。ホン氏だけではなく、紹介を受けた韓国のクリニックも21年2月に起訴され、そのうちの1つのクリニックには、裁判を経て22年5月罰金刑が科せられた。

 23年7月ホン氏は2審で有罪判決を受けたが、美容医療関連の予約アプリを運営する企業の創業者がなぜ有罪判決を受ける事態に陥っているのか。

韓国では医療法で手数料を伴う紹介を禁止

日韓で規制が異なる。(写真/Adobe Stock)

日韓で規制が異なる。(写真/Adobe Stock)

 この事件の背景には、韓国の医療法がある。韓国の医療法第27条では、金銭その他の利益と引き換えに患者を医療機関に紹介する行為を禁止している。

 韓国のアサンナナム財団のレポートによると、韓国医師会は、カンナムオンニが提供した紹介に関連した値引きや治療体験などのインセンティブは医療法に違反していると主張した。医師会がカンナムオンニのサービスに反対しているわけだ。

 今回のカンナムオンニの事件を含めて、韓国では専門家の既得権に伴う規制を疑問視する声も挙がっている。

 中央日報の中では、カンナムオンニ以外にも、専門家と関連するサービスが専門家の団体から反対を受けている状況を紹介。海外で当たり前のサービスが韓国では規制されている現状が示唆された。

日本とルールに違い

 カンナムオンニが韓国で直面している規制と同様なものが日本にもある。ホン氏の有罪判決は、日本にどのように影響するだろうか。

 日本には、「保険医療機関及び保険医療養担当規則(以下、療養担当規則)」という省令があり、韓国の医療法と同様の内容がある。この省令では次のように定めている。

 保険医療機関は、事業者又はその従業員に対して、患者を紹介する対価として金品を提供することその他の健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益を提供することにより、患者が自己の保険医療機関において診療を受けるように誘引してはならない。

 簡単に言えば、企業が医療機関に紹介することで金銭その他の報酬を受け取ることができないということである。このことは、韓国と同様、日本においても紹介業務に規制が存在することを意味する。

 ただし、日本は韓国とは規制の中身に違いがある。

 ある医療機関が厚生労働省に対して、「インフルエンザ接種を受ける人を増やすために、企業に紹介料を支払って紹介してもらうことは、療養担当規則に違反するか」という趣旨の問い合わせをしたところ、厚労省は2020年6月、「違反していない」と回答した。なぜならば、インフルエンザ接種が、自費診療として行われるためだ。療養担当規則の省令では、保険医療機関と記載しているが、これは保険診療を行う医療機関を対象にしていることを意味する。

 このため日本で事業を展開するカンナムオンニは、韓国とは異なり、自由診療の美容整形外科を紹介しても問題にならない。

 ただし、美容医療の中には、保険診療として行われるものもあり、それに関しては、療養担当規則の対象になると考えられるだろう。

 カンナムオンニの創業者が韓国でなぜ有罪判決を受けたのか。その背景には、このような韓国と日本とのルールの違いがあるわけだ。

参考文献

韓国整形アプリ「カンナムオンニ」代表、医療法違反で懲役刑
https://japanese.joins.com/JArticle/306283

【1.月間利用者数前年比200% 2.予約数前年比580% 3.70万ダウンロード突破】国内最大級の美容医療・整形アプリ「カンナムオンニ」が急成長中。
https://www.sankei.com/pressrelease/prtimes/NXWE57WJY5PTBBRMT5BJ6NBXT4/

「カンナムオンニ」代表、医療法違反で再び懲役刑・執行猶予=韓国
https://www.wowkorea.jp/news/korea/2023/0706/10401924.html

[Pick] ‘강남언니’ 성형앱 쓰던 의사가 유죄 받은 이유 출처 : SBS 뉴스 원본 링크 :
https://news.sbs.co.kr/news/endPage.do?news_id=N1006773156&plink=COPYPASTE&cooper=SBSNEWSEND

【時視各角】韓国の規制、本当にしぶとい
https://japanese.joins.com/JArticle/307008

(사례) 언니의 눈물: 힐링페이퍼는 힐링받을 수 있을까? – 힐링페이퍼
https://asan-aer.org/activity-post/%EC%96%B8%EB%8B%88%EC%9D%98-%EB%88%88%EB%AC%BC-%ED%9E%90%EB%A7%81%ED%8E%98%EC%9D%B4%ED%8D%BC%EB%8A%94-%ED%9E%90%EB%A7%81%EB%B0%9B%EC%9D%84-%EC%88%98-%EC%9E%88%EC%9D%84%EA%B9%8C-%ED%9E%90%EB%A7%81/

韓国発の美容整形比較アプリ「カンナムオンニ」、日本進出から4ヶ月で350クリニックを獲得
https://thebridge.jp/2021/03/gangnam-sister-attracts-350-clinics-after-japan-expansion-pickupnews

의료법
https://www.law.go.kr/LSW/lsInfoP.do?efYd=20200912&lsiSeq=220901#0000

昭和三十二年厚生省令第十五号保険医療機関及び保険医療養担当規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332M50000100015

確認の求めに対する回答の内容の公表
https://www.mhlw.go.jp/content/000619346.pdf

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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