偽造ボツリヌス製剤が日本を含めた国内外で問題になっているが、米国で偽造ボツリヌス製剤を使用したことによる健康被害の詳細が明らかになった。2024年7月11日に米国疾病対策センター(CDC)が報告している。
呼吸困難を起こす事例も
24年3月、米国テネシー州とニューヨーク市において、医療機関以外でボツリヌス製剤の投与を受けた後に7人の女性が病気を発症したことが報告された。ニューヨーク市保健衛生局(DOHMH)とテネシー州保健局(TDH)は、正規ではない美容医療としてボツリヌス療法を受けた後に病気に関する報告を受け、米国食品医薬品局(FDA)とCDCを含んだ調査が行われることになった。
ボツリヌス製剤はクリニックなどの医療施設で使われる場合は安全と見なされているものの、この薬はもともとボツリヌス菌という微生物が作り出す毒を利用したものであり、神経に影響する副作用が起こることがある。例えば、まぶたが落ち込む眼瞼下垂や見た物がダブって見える複視などがある。
調査グループは、7人の女性(年齢範囲26~55歳、中央値48歳)が病気を発症したことを確認した。主な症状は、眼瞼下垂、口渇、嚥下困難、呼吸困難、筋力低下。全員が医療機関を受診し、4人が入院、2人が集中治療室で監視された。人工呼吸器は必要としていなかった。CDCのボツリヌス中毒相談サービスでは、7人ともに解毒するための「ボツリヌス抗毒素」が必要ないと判断した。注射を受けてから症状が現れるまでの期間は2日~20日で、平均3日だった。
日本でも偽造製剤が問題に
日本でも偽造ボツリヌス製剤が発見されており、7月3日に厚生労働省からメーカーの注意喚起文が公開された。日本でも医療機関以外で美容医療が行われ、警察によって摘発される事例が相次いでいる。こうした医療機関以外の場所で、偽造製品が使われている可能性が考えられる。これまでに表面化していないが、美容医療の競争が激化する中で、偽造製剤が医療機関にまで流れてくる恐れも否定できない。
特に医療機関以外の場所で行われた場合には、想定外の症状が起きたときの対処が難しいため重大な事故につながる可能性も考えられる。今回、米国からの報告では、人工呼吸器が使われてはいなかったが、呼吸困難が発生する事例が報告されている。窒息で亡くなる可能性も否定できず、医療機関以外で美容医療を受けることはないように注意することが重要だろう。