英国で最大規模を誇る美容クリニックチェーン「Sk:n(スキン)」が2024年7月、全医院を閉鎖し、関連ブランドも閉鎖することを発表。事前の通告がなかったこともあり、医院に勤める医療関係者などは大きな混乱を生じたと伝えられている。
背景にはコロナ禍や物価高騰があるとされる。日本では美容医療のトラブルが話題になることがあるが、それは英国でも同様だ。大手チェーンの倒産は美容医療をめぐる状況の変化を示している。
クリニックの急成長と突然の倒産
倒産を伝える英国の美容医療関連団体によると、スキンは70以上の医院など、450人を超える医療関係者を擁しており、英国の美容医療でメジャーな存在だった。
ところがこの7月にすべての医院、ソーシャルメディアのアカウント、ウェブサイトを閉鎖。「会社は営業を継続するための投資を確保しようと努めたものの、残念ながら成功しなかった」と経営破たんを公表した。スキンでは「The Harley Medical Group」「The Skin Experts」「ABC Medical」などの関連ブランドも閉鎖になった。
閉鎖には複数の要因が影響していると見られている。大きな打撃を与えたのはコロナ禍に医院の営業が困難になったこと。さらに小規模クリニックの増加による競争の激化、物価高騰による生活費上昇により消費者の支出が減少したことも影響を与えたという。
スキンは19年に投資会社であるTriSpanに買収され、それ以来3年間で30施設を新規開設する急成長路線にあったものの、この戦略が持続不可能だったと指摘されている。家賃や設備費用も重荷になった可能性がある。
PR代理店も事前の通知がないため、問い合わせに答えられない状況に陥った。政府は倒産の影響を受けた人たちに対するガイドを作り、業界全体でも失業したスタッフの支援が進んでいる。
クリニックをめぐる状況、日本との共通点は?
英国の美容医療チェーンの倒産は、美容医療をめぐる大きな変化を示す。日本との共通点はあるだろうか。
コロナ禍で医院閉鎖になったほか、物価高騰で一般の人たちが出費を抑える動きは日本でも共通している。チェーンの美容医療クリニックに対して、小規模な美容クリニックが増加し、競争が激しくなっている状況も日本に当てはまる。
日本でも医療脱毛クリニックが突然閉鎖になったトラブルが大きな問題になることがあるが、英国の今回のトラブルと根っこが共通しているといえる。
もっとも英国は医療が無料で提供されており、日本と比べると美容医療は特殊な位置づけの医療になっている。ヒフコNEWSで伝えているように、英国では非外科的治療が医療関係者以外によっても提供されている。このため英国の美容クリニック倒産の動きは、そのまま日本の状況に当てはまるものではない。
日本の美容医療について考えるときには、このような海外の動きも参考になる。ここまで見てきたように日本との違いはあるが、いずれにせよ、美容クリニックを利用する際には、医院について十分に調べて慎重に検討することが重要だ。