タイで2024年8月、若返りなどを目的として美容クリニックで使用されていた製剤のメーカーが警察により摘発された。
塗るための製剤であるにもかかわらず、注射のために使われていたのが問題視された。健康被害をもたらす可能性があると懸念された。日本でも未承認の製剤の使用が問題視される中で、タイでは警察が摘発に乗り出している。
若返りなどの目的に製剤を注射
タイ中央捜査局(CIB)は、同国の食品医薬品局(FDA)と協力し、塗るための化粧品として登録されていた「infiNADi NAD+」が医療機関で若返りなどのための注射薬として使用されていたとして、メーカーを摘発した。
警察によると、問題となった製剤はもともと皮膚に塗る化粧品として承認されていた。しかし、美容クリニックではDNAの修復や抗酸化作用、老化防止、免疫力向上などをうたい、体内に注射する目的で利用されていた。
警察は、注射による使用は本来の用途を逸脱し、消費者に危険をもたらす恐れがあると判断。摘発により、製造者や保管の場所を突き止めた。警察によると、民間病院5カ所、クリニック284カ所に製品が送られていた。製剤の入ったバイアルボトルなど、2500万バーツ以上(日本円で約1億円以上)の物品が押収された。
日本でもエクソソームの安全性に厚労省が注意喚起
タイでの事例は、日本における類似の問題とも重なる。日本ではエクソソームや幹細胞培養上清といった製剤が、未承認であるが、美容クリニックなどで医師の責任の下で体内への注射に使用されている。これらの製剤は、その安全性や有効性が十分に検証されていないため、消費者に対するリスクが高いとされている。
日本国内でも、これら未承認製剤の使用に対して規制の強化に向けた動きがある。厚生労働省は7月に都道府県や医療機関などに対して注意喚起している。日本でも美容医療で使われる製剤はエクソソームのほかにも未承認であるものが珍しくない。利用に当たっては慎重に検討することが重要だ。