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オゼンピックの偽造品問題が世界に拡大、混入した余剰成分を原因とした健康被害に懸念、WHOが改めて警告

カレンダー2024.9.9 フォルダー 海外

 肥満症薬として人気が過熱しているセマグルチド(商品名オゼンピック)の偽造品が世界的に出回っており、注意喚起されている。

 WHO(世界保健機関)が2024年6月に警告を発したほか、問題視する報道も相次いでいる。

WHO、オゼンピック偽造品で世界へ警告

WHO(世界保健機関)がオゼンピックの偽造品の問題を注意喚起。(出典/WHO)

WHO(世界保健機関)がオゼンピックの偽造品の問題を注意喚起。(出典/WHO)

 2024年6月、WHOは、糖尿病や肥満治療に使用されるセマグルチドの偽造品が世界各地で発見されたとして警告を発表した。

※セマグルチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬として知られる薬。糖尿病治療を目的として開発されたが、体重減少の効果から肥満症治療を目的としても開発されている。セマグルチドは、糖尿病治療を目的とする場合、注射薬は「オゼンピック」という商品名で、飲み薬は「リベルサス」という商品名。オゼンピックは肥満症治療を目的とする場合、注射薬は「ウゴービ」という商品名で呼ばれている。

 この薬品の代表的なブランドであるオゼンピックが特に標的となり、ブラジル、英国、米国などで偽造品が発見されている。WHOによれば、2022年以降、これらの偽造品に関する報告が増加しており、今回の警告は初の公式通知となると解説している。

 WHOは、偽造されたセマグルチドが健康に深刻な影響を及ぼす可能性があると指摘。偽造品には有効成分が含まれていないか、もしくは他の未申告の成分が含まれている場合があり、これが血糖値の管理不全や心血管疾患のリスクの増大などの健康問題を引き起こす可能性があると注意喚起している。

 WHOの報告では、偽造品が特に危険なのは、注射デバイスにインスリンなどの未申告の成分が含まれているケースがあるためだ。これらの成分が予期せぬ健康被害を引き起こす可能性がある。例えば、インスリンが含まれていた場合、血糖値の急激な低下(低血糖症)を引き起こし、めまいや発作、最悪の場合は命に関わる可能性もある。インスリンに限らず、余計な成分が混入している可能性があり、偽造品使用は危険だ。

 セマグルチドは2型糖尿病患者に対して血糖値を下げる目的で処方されるほか、食欲抑制効果があり、肥満治療薬としても人気が高まっている。特に、オゼンピックは週1回の皮下注射型であることから利便性が評価されているが、こうした需要の増加と供給不足が偽造品の横行を招いている。

 同薬はダイエット目的でも使用されることが問題視されており、肥満ではない人が安易に使うことも問題になっている。こうした人が偽造品に手を出さないとも限らず、影響は病気の人にとどまらない。

FDAも米国内での偽造品問題を警告

米国食品医薬品局(FDA)が偽造品の存在を警告。特定の製品番号や製造番号が使用されている。(出典/FDA)

米国食品医薬品局(FDA)が偽造品の存在を警告。特定の製品番号や製造番号が使用されている。(出典/FDA)

 米国食品医薬品局(FDA)も、23年12月にオゼンピックの偽造品に関する警告を発表した。

 特定のロット番号を付された偽造品が米国内の流通ネットワークで確認され、数千の製品が押収された。偽造品の中には針やラベルなどが偽造され、製品の品質や安全性が確認されていなかった。また、偽造品による健康被害が5件確認され、そのうちの1つは重篤な低血糖症によるものだった。幸い深刻な症状には至っていない。

 FDAは、正規の薬局からの購入するように求め、薬品のパッケージやロット番号に不審な点がないかを確認するよう呼びかけた。さらに、偽造品の報告をFDAに提出することで、今後の対策を強化する方針を示している。

 この9月には、ロイターも偽造品の問題を取り上げている。背景に犯罪組織による大規模な製造・流通ネットワークの存在が指摘された。複数の国で偽造品を原因とした入院患者が発生していると報じた。偽造品のロット番号が複数の国で共通し、一部の犯罪組織が関与している可能性が高いと指摘している。

 オゼンピックなどは日本でも人気を集めており、偽造品の問題は無縁ではない。十分に注意することが重要だ。

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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