タイ警察の中央捜査局(CIB)は9月に違法な美容クリニックや施術者を相次いで摘発したことを発表した。健康被害も発生しており、海外での医療行為への関心が高まる中で、注意した方が良さそうだ。
違法医療事件が次々報告
偽医師が逮捕されるなど、危険な無資格での美容施術がタイで広がっている可能性がある。
大規模だったのは、不正な美容施術クリニックの摘発で、タイ北部のペッチャブーン県、中部のチョンブリ県やサムットサコーン県で、8カ所の無資格の偽医師が運営する美容クリニックが摘発された。7人の偽医師が逮捕されたほか、診療所の所有者も逮捕された。これらの診療所では無登録の医薬品を使用し、無資格で病気治療や美容施術を提供していた。合計242点の未登録医薬品や医療機器が押収された。美容注射や手術により、女性が顔の変形や感染症といった健康被害も引き起こしていた。
このほか男性の性器に対する手術を無資格で行った施術者も逮捕された。自宅で違法手術を行っていた人物が摘発されている。施術を受けた人たちが感染症や性器の機能障害に苦しんでいた実態も明らかにされた。
無資格医療行為に要注意
今回の摘発は、タイ国内で繰り返し報告されている無資格医療行為の一環として位置付けられる。24年8月には、タイとフィリピンで無資格の美容医療行為が相次いで摘発された。フィリピンではタイ国籍の女性が無資格でフィラー注射やボトックス療法を行っていたため逮捕され、タイでは同時期に5人の容疑者が摘発された。
同8月にはタイ国内の美容クリニックで、登録された若返り製剤が違法に注射薬として使用されていた事例も発覚。CIBは、この製剤が違法に利用されていたクリニックと製造業者を摘発し、日本円で約1億円相当の物品を押収した。これらの事件は、無資格医療が地域的な問題に留まらず、国際的に広がっていることを示している。
24年7月には、タイで無資格の偽医師6人が逮捕され、29種類の医薬品や医療機器が押収された。これらの偽医師は広告を通じて顧客を集め、無資格で美容施術を行っていたが、顧客からは保健当局に苦情が寄せられていた。過去数年にわたり頻繁に報告されている同様の事件は、タイ国内での違法美容施術の蔓延を明確に示している。
無資格での医療行為や美容施術がタイで健康被害を引き起こしている実態がある。メディカルツーリズムが注目されるが、今回のような不正が行われている可能性もある。国外に限らないが、施術を受ける際には、慎重に施設や施術者について検討することが重要だ。