美容クリニックで受けられるしわやたるみ、ほうれい線などの治療と言えば、ヒアルロン酸注射を思い浮かべる方が多いと思いますが、「PRP療法」という方法を目にされたことはないでしょうか?
再生医療というメニュー名でも紹介されている「PRP療法」。何だか難しそうだけれど、いったいどのような方法で、どんな効果があるのでしょう。
ここでは、お肌を内側から活性化させてくれるという「PRP療法」の特徴や効果について、ご紹介したいと思います。
PRP療法とは
PRP療法とは、自分自身の血液から抽出した高濃度の多血小板血漿(PRP)を気になる部分に注入して、しわ、たるみ、くすみなどを改善する治療方法です。血小板に多く含まれている「成長因子」という成分によって肌細胞が活性化されるので、肌全体のエイジングケア効果が期待でき、ニキビ跡や薄毛にも効果があると言われています。
もともとは、自然治癒力を利用した再生医療として、インプラントや関節、腱、靭帯などのけがの治療に使用されており、メジャーリーガーの田中将大選手や大谷翔平選手の治療でも話題となりました。
PRP療法は、2014年に施行された法律によって国への届け出が必要な「第3種再生医療」となっているため、再生医療の計画書を厚生労働省へ提出し、受理されているクリニックのみがPRP療法を行うことができます。自分の血液を使用するため、アレルギーの心配がほぼなく、肌の自然な若返りが期待できる治療方法です。
PRP療法の仕組みと効果
PRP(多血小板血漿)とは
PRP(Platelet Rich Plasma)は、日本語では多血小板血漿といわれ、血液中の血小板を多く含む血漿(液体成分)のことです。
普段、指を切ったり、足をすりむいたりしたとき、しばらくすると血は止まり、傷口がふさがって、いつの間にか元の皮膚の状態に戻っていると思います。このような自然治癒の過程には、血小板の働きが大きく関わっています。
血液中の血小板には、血液を止める働きのほかに、ダメージを受けた体の細胞を修復し、きれいな肌を再生する働きを持つ「成長因子」という成分が多く含まれています。この成長因子が皮膚の細胞を活性化し、コラーゲンやヒアルロン酸の生成を促すことで、肌のハリやツヤを取り戻すことができると言われています。
適応部位と効果
顔全体のしわやたるみ
PRP療法は、肌トラブル全般に効果的といわれていますが、特に皮膚の薄い目元のしわやくぼみへの治療が人気となっています。ほうれい線、マリオネットライン、額や眉間などの深いしわよりは、目元、口元、額、首や手の甲など、ハリを失って細かいしわが増えている状態への効果が高いとされています。また、肌細胞の活性化が促されるので、ターンオーバーが改善されることによる、キメが整い、透明感あふれるツヤ肌へと導きます。
しわやたるみ改善で人気がある施術にヒアルロン酸注射がありますが、PRP療法と比較すると、その仕組みには大きな違いがあります。ヒアルロン注射は、しわやたるみなどの気になる部分にヒアルロン酸を注入し、肌を内側から持ち上げることで、しわの改善やリフトアップ、顔のパーツ形成を目的とした治療法です。PRP療法は、自分の血液から抽出、濃縮した血小板を注入することで、血小板に含まれる成長因子が自身の自然治癒力を高め、肌細胞を活性化させて、肌の若返りを図る治療となります。
ニキビ跡
ニキビ跡は、ニキビが悪化し、長期的に炎症状態が続いてしまったことで、肌の奥の真皮層、さらに皮下組織にまでダメージを与えてしまい、回復せずに凸凹のままとなってしまった状態のことを言います。
PRP療法では、血小板に含まれる成長因子の働きによって血管の新生やコラーゲンの生成を促すことで、傷ついた細胞を活性化させてニキビ跡の改善を図ります。皮膚細胞の活性化によりあらたな皮膚の再生が期待されるので、クレーター状のニキビ跡にも効果があると言われています。
薄毛
PRP療法は、薄毛治療にも効果があると言われています。
髪の毛は、頭皮にある毛母細胞の働きによって発毛、成長します。PRPは成長因子を豊富に含んでいるため、その作用によって毛根の毛母細胞が刺激を受けて活性化されるのと同時に、血管の新生によって頭皮の血流が改善することで、抜け毛が減り、増毛効果や育毛促進効果が期待されます。
女性のびまん性脱毛症や男性のAGAにも効果が認められていますが、毛根が消滅してしまっている頭皮の場合や、免疫性疾患による脱毛の場合は効果がありません。
PRP療法の種類
PRP療法でも、使用するキットの違いや、一緒に注入する成分の違いによっていくつかの種類があります。ここでは、その種類について説明していきます。
PRP療法
血液を採取して専用キットの試験管にとり遠心分離機にかけると、試験管の真ん中あたりに血小板の層ができます。その部分を抽出したものをPRPといい、成長因子を多く含んだ成分で、気になる部分に注入することで肌の改善を図ります。試験管の形をしたキットでの抽出では、血小板の濃度は2~3倍ですが、現在では通常の血液内に存在する量の約10倍の血小板を含んだ血漿を抽出できるキットも開発されています。クリニックによって使用されるPRPの濃度が違うので、HPなどで確認することをおすすめします。
PRP療法では、自身の血液から抽出した血小板のみを使用し、人工的な成長因子の添加は行いません。
W-PRP療法
W-PRP療法は、自分の血液に含まれる血小板に、さらに適量抽出した白血球を加えた成分も一緒に注入する治療法を言います。従来のPRPと比べて、濃縮率が7~10倍の高濃度血小板に白血球も含んでいるので、成長因子がより多くの線維芽細胞を刺激し、コラーゲンを増生する作用が期待できると言われています。PRP療法と同様に、自身の血液から抽出した血小板と白血球のみを使っており、外部からの成長因子は添加していません。
プレミアムPRP療法(セルリバイブジータ)
クリニックによって治療名称に違いがありますが、プレミアムPRP療法やセルリバイブジータと呼ばれる方法もあります。この施術では、高濃度に濃縮された血小板と白血球に、認可医薬品である成長因子(線維芽細胞増殖因子FGF)を添加することで、自己再生能力を高め、シワやたるみなどを改善すると言われている治療法です。
PRP療法では自身の血液のみを使用するため、年齢や体調などによって抽出する血小板の質にばらつきがあり、治療効果に個人差があるといわれていました。この問題点を解決し、成分濃度や注入量、注入部位を一人ひとりの症状に応じて調節することによって、優れた効果が期待されると言われています。しかしながら、この治療法では、医師の注入技術によって仕上がりに大きな差が生じ、しこりなどのトラブルがあるともいわれています。安全性に問題があるとして、成長因子の添加を行わないとしているクリニックもありますので、受ける前には安全性について医師にしっかりと確認することをおすすめします。
施術方法
注射(手打ち)
一般的にPRP療法としてクリニックで紹介されている治療では、注射器による注入がほとんどと言えます。目の周りや口元の細かいしわの改善に適した治療なので、気になる部分へのピンポイント注入が可能である方法によって、より高い効果が期待されるためと思われます。
水光注射
「水光注射」とはもともと韓国で生まれた美肌治療ための注射で、注入成分の効果だけでなく、針の穿刺の刺激によるコラーゲンの増生も同時にできる肌質改善の治療方法です。水光注射では、細い針が1ショットで5針または9針挿入され、皮膚を吸引しながらショットすることで、細かく、適切な位置に均一な量を注入することが可能です。そのため、ニキビ跡やたるみ、顔全体のハリ・弾力アップ、くすみの解消など、肌質改善やエイジングケアが期待できる施術方法と言えます。
目元や口元の細かいしわの改善などピンポイント注入には、水光注射よりも注射器の方がおすすめです。
ダーマペン
ダーマペンとは、髪の毛よりもさらに細くなった極細の針で、皮膚表面に目に見えないほどの小さな穴を開けることで、肌の再生能力を活性化させる治療方法です。肌に針で刺激を与えることで、自然治癒力によって皮膚が再生すると同時に、肌細胞の活性化によってコラーゲンなどが大量に作られ、ハリのある素肌へと導く効果が期待されます。また、新陳代謝も促進されるため、ニキビ跡の凹凸、クレーターなどの改善も期待できる治療方法です。この方法のオプションとしてPRPを肌に塗布して施術することで、さらなる効果が期待できると言われています。
PRP療法メリット・デメリットと費用相場
メリット
- 自身の血液を使うので安全性が高く、アレルギーや副作用の心配がほぼありません。
- 従来の治療法では対応が難しかった細かいシワ(チリメンじわ)やニキビ跡の改善にも効果的と言われています。
- 肌の細胞を活性化させて皮膚の再生を促すので仕上がりが自然で、ゆっくりとした変化のため周囲に気付かれにくいのも特徴です。
- 成分そのものの効果は半年~1年程度と言われていますが、皮膚の内側から肌質改善されているため、注入以前の状態まで戻ることは無く、若返り効果が期待できます。
- 採血から注入まで短時間で完了するので、即日の施術も可能です。
デメリット
- 肌細胞の活性化による再生治療のため即効性はなく、効果が表れるまで2週間~2か月程度かかります。
- 自身の血液を使用するため、年齢や体調によって成分の質には個人差があり、効果が出にくい場合があります
- 人によっては内出血や赤み、腫れなどが出る可能性がありますが、通常1〜2週間程度で消失します。
費用相場
クリニックによって、血小板を抽出するためのキットや使用する成分に違いがあるため一概には言えませんが、平均的な相場は15~25万円程度となります。
なお、水光注射やダーマペンによる施術はオプション料金となる場合が多く、クリニックによって使用するマシンなども違うため、それぞれのクリニックのホームページを確認しましょう。
ニキビ跡の治療や薄毛などは分からないことも多いと思いますので、無料カウンセリングなどを利用することをおすすめします。
クリニック選びのポイント
再生医療であるPRP療法は、比較的新しい治療分野であるため、症例数が多く、経験豊富な医師のいるクリニックを選ぶことが重要です。ヒアルロン酸やボトックスなど、注入による施術を多く扱っているクリニックが良いと言えるでしょう。
PRP療法は効果が出るまでに比較的時間がかかりますし、一人ひとりの症状に応じて、注入量や注入する場所など、細やかな治療のプランと医師の技術が必要となる治療法です。アフターケアがしっかりしていて、信頼できる医師のいるクリニックを選ぶことをおすすめします。
また、PRP療法は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の施行により、再生医療を行うための届け出が義務づけられています。治療を希望するクリニックが、厚生労働省の認める再生医療提供機関であることを、必ず確認しましょう。
まとめ
PRP療法は、安全性が高く、肌の若返り効果が期待できる肌の再生医療です。ダウンタイムもほとんどなく短時間で受けられる施術ですが、その効果はゆっくりと現れ、個人差もあると言われているため、期待半分、不安も半分という方もいらっしゃるかもしれません。
どんな施術でも同様ですが、PRP療法のように繊細な部分への施術では、医師の経験と技術力によって大きな違いが出ると言えるでしょう。不安をなくすためには、話をしっかりと聞いてくれるクリニックを選ぶことが重要です。無料カウンセリングを利用するなどして、安心して治療を受けられるクリニックを慎重に選びましょう。