ボツリヌス注射は、眉間や額、目尻などの表情ジワ治療に使われることでおなじみですが、毛穴開きやテカリ防止、肌質改善も期待できる「ボツリヌスリフト(マイクロボトックス)」という施術はご存知でしょうか?
同じボツリヌス製剤でも、注射の打ち方がちょっと変わるだけで、肌への作用が全く異なって現れるのです。
この記事では、ボツリヌスリフト(マイクロボトックス)について詳しく解説します。
(クリニックでは「マイクロボトックス」という呼び名が使われることが多い施術ですが、本来「ボトックス」は、アラガン社のボツリヌストキシン製剤の商品名として商標登録されているものです。この記事では、製剤会社の区別なく「ボツリヌストキシン製剤を使用した治療法」であることを明確にするために、「ボツリヌスリフト」として表記いたします。)
ボツリヌスリフトとは?
シワ取りボツリヌス注射との違い
ボツリヌス製剤は正式名称を「A型ボツリヌストキシン製剤」といい、脳の指令を全身に伝える神経伝達物質・アセチルコリンの働きをブロックする、という特性があります。
ボツリヌス製剤を筋肉に注射すると、その筋肉には脳からの指令が伝わりにくくなるため、筋肉の収縮が抑えられる、もしくは弱くなります。
この特性を利用しているのが、ボツリヌス製剤を表情筋に注射する表情ジワ治療です。
一方、ボツリヌス製剤を皮膚の浅い層に広くまんべんなく注射することで、肌全体のハリ感アップや毛穴の引き締め、肌質改善といった効果が得られると言われているのが、ボツリヌスリフトです。マイクロボトックス、メソボトックス、ネフェルティティリフトなどと呼ばれることもあります。
一般的なボツリヌス注射のイメージ
ボツリヌスリフトのイメージ
どんな仕組み?
筋肉より浅い真皮層にごく微量ずつ、何か所も広範囲にボツリヌス製剤を注射します。製剤はじわじわと拡散して、筋膜まで浸透するとされています。
表情筋に直接注射したときのような、顔が固まって動かなくなるという心配がほぼないと言われ、皮膚表面も筋肉も、表情を変えるたびに自然に動きます。
その一方、実は真皮の動きや真皮内の皮脂腺・汗腺の働きが抑制されていて、その結果、様々な効果を肌にもたらすのだとされています。
期待できる効果
小じわ改善、毛穴の縮小によって、肌がなめらかに美しく見えるようになった、という声が多く聞かれます。
皮脂の過剰分泌が抑えられてテカリが軽減、汗腺の働きが弱まって顔汗が減る、といった効果も得られるとされています。メイク崩れ防止のために、特に夏場にうれしい効果です。
まだ解明されていない点もあるのですが、皮脂腺や汗腺が萎縮することによって真皮全体のボリュームが減少し、肌のタイトニングにつながるとも考えられています。
注射針の刺激によって真皮でのコラーゲン生成が活発になることで、肌のハリや弾力がUPする効果も期待できます。
下あごからデコルテにかけての筋肉で、顔を下方向に引っ張っている広頚筋に作用して働きを弱めると、相対的に上方向に引っ張る筋肉の働きが強まるため、顔から首にかけてのリフトアップ効果が得られるとされます。
作用する部分 |
期待できる効果 |
筋肉の表面繊維 |
自然な表情を保ちつつ、小ジワを改善 |
真皮のコラーゲン |
注射針の刺激で産生が促され、ハリや弾力が改善 |
皮脂腺 |
皮脂の過剰分泌を抑制 |
汗腺 |
顔汗を抑える |
毛細血管 |
血管を収縮させることで、肌の赤みが解消される |
顔を下方向に引っ張る筋肉 |
相対的に上方向へ引っ張る筋肉が強くなることによるリフトアップ 首の縦ジワの改善 |
フェイスラインを含む顔全体、首、デコルテに注入でき、肌質改善やエイジングケアを希望する方に向いている施術と言えます。
施術について
施術は、一般的には以下のような流れになります。
診察・カウンセリング・洗顔 |
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↓ |
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必要な場合は、麻酔クリームを塗布 |
麻酔が効くまで15~20分 |
↓ |
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ボツリヌス製剤を注射 |
注入範囲によって10~15分 |
↓ |
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クーリング |
10分程度 |
↓ |
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終了 |
クリニックによって、メイクは施術直後から可の場合と、 |
カウンセリングから、治療全体で1時間ほどとみておくとよいでしょう。
注入方法は、注射器で一ヶ所一ヶ所に手打ちする方法、水光注射の薬液にボツリヌス製剤をプラスする方法、ダーマペンで浸透させる方法があります。水光注射やダーマペンを利用する場合は、その料金もかかるので、手打ちの場合よりも高額になることが多いようです。
施術後10日~2週間ほどで、肌質の改善やハリといった効果を実感できるようになる方が多いと言われています。
初めての施術よりも、2回目以降の方が、効果がしっかり出る傾向があります。回数を重ねる程に効果期間も延びると言われていて、初回の効果は3~4ヵ月間、2回目以降は4~6ヵ月間ということが多いようです。この期間を目安にして、効果がすっかりなくなってしまう前に次の注射を行うのが、美肌の維持に効果的です。
注意点
広範囲、複数箇所に注射針を刺すため、痛みはありますが、事前に麻酔クリームを塗布すれば軽減されます。
施術直後は、針を刺した部分が蚊に刺されたようにプクッと丘疹状になります。1時間ほどで目立たなくなりますが、針痕は1~2日赤く残ることもあるようです。
1~2週間ほど内出血になることもあるので、特別な予定の直前は避けて受けた方がよいでしょう。
ボツリヌスリフトに限らず、ボツリヌス注射を継続していると、体の免疫が「中和抗体」という物質を作ることがあります。中和抗体が作られると、アセチルコリンの働きを抑えるという効果が出なくなると言われています。
体内で中和抗体が作られないようにするには、できるだけ注射の間隔を空ける(4ヵ月以上)こと、一度に沢山の薬剤を注射しないことが大事です。中和抗体が作られる原因となる複合タンパク質を取り除いた製剤(ゼオミンやコアトックス等)を選ぶというのもひとつの方法です。
料金について
健康保険が適用されない自由診療であること、使用する製剤の違い、製剤使用量の違いがあるため、クリニックによって料金は異なります。
部位 |
一回あたり |
額 |
50,000~60,000 |
両頬 |
50,000~90,000 |
顔全体 |
80,000~130,000 |
フェイスライン |
40,000~90,000 |
首 |
60,000~82,000 |
表情ジワ治療がピンポイントであるのに対して、ボツリヌスリフトは広範囲への注入で使用量が多いので、料金は表情ジワ治療よりも高額になりがちです。
初回のみのトライアル割引、複数個所同時施術の割引、継続的治療を推奨する目的の、○ヵ月以内に同部位に注射する場合の割引、といったちょっとお得になる料金を設定しているクリニックもあります。
痛みの少ない針での注射を希望する場合は別料金が発生することもあります。
納得のいく治療を受けるために
ボツリヌスリフトは、医師の技量が如実に表れる治療法です。
特に、顔のどこにどんな筋肉があって、どう作用しているのかという知識や、狙った深さに適量を注入するコントロール技術が大切だと言えるでしょう。
とはいえ、素人に医師のスキルの見極めは難しいものです。カウンセリングの際には症例写真を複数見せてもらうことをおすすめします。治療前と比べて、治療後の顔に違和感がないか、魅力的になっているかに注意して見るとよいでしょう。
各製剤メーカーが、独自に注入指導医や認定医などの制度を設けています。そういった資格を所持しているかどうかも、クリニック・医師選びの参考にすると良いかもしれません。
まとめ
ボツリヌス製剤を、筋肉ではなく、肌のより浅い層に注入するボツリヌスリフトについて、ご紹介しました。
毛穴の開きやテカリの原因となる皮脂や汗を抑えて、肌をなめらかで透明感のある状態に導く効果や、コラーゲンが増えることによるハリツヤのUP、顔を下に引っ張る筋肉を弱めてリフトアップする効果が期待できます。
1つの製剤で様々な症状の改善を期待できる点が魅力の、一歩先を行く美肌治療と言えそうです。