厚生労働省が2024年11月22日に「美容医療の適切な実施に関する検討会」の報告書を公開した。
この報告書に示された方針に基づいて、美容クリニックは1年に1回の定期報告の義務を負うほか、問題が発生した場合の立入検査が可能になるなどの規制強化が行われる。この中に業界のガイドラインをまとめることが求められており、2025年に向けて美容医療をどのように行うべきかの議論が活発になることが予想される。
ガイドラインは、最低限盛り込まれるべき6つの焦点を中心にルールが定められる見通しだ。
報告書に示されたガイドラインの整備
- ガイドライン策定の中心→公益社団法人日本美容医療協会や日本美容外科学会(JSAS、JSAPS)などの関連学会が中心となり、日本医師会や日本歯科医師会も検討に加わる見通し
- 業界ガイドラインの焦点→違法行為の禁止、医療の質向上、契約ルールの明確化など、現在の課題を反映した6つの重要項目が盛り込まれる
ヒフコNEWSで伝えているように、報告書では、美容医療の安全性と質に関連した7つの対応策を求めている。このうち質に関連した対応策の中心に据えられているのが「関連学会によるガイドラインの策定」だ。
ガイドラインをまとめるのは、公益社団法人日本美容医療協会のほか、美容医療関連の学会などとなる。美容医療の学会は日本美容外科学会(JSAS、JSAPS)などが複数存在しており、中立性が高い組織として日本美容医療協会の役割も期待されている。さらに日本医師会や日本歯科医師会なども検討に加わる見通しだ。
先に示したように、報告書が求める業界ガイドラインには最低限盛り込むべき内容として重要な6つの焦点が示されている。それぞれに定めるべき詳細な項目が示されている。逆にいえば、これらは現在、課題になっていることを反映しているといえる。
例えば、ガイドラインでは、守るべき法律の解釈が明確にされる予定だが、これは違法状態が看過されている現状を反映したものだ。検討会では、施術を受けた人を対象にした調査で、カウンセラーが診察をしていたという回答が20.5%、施術をしていたという回答が13.8%の割合で確認されたほか、受付スタッフも診察8.7%、施術6.3%の割合で行っていたと明らかにされていた。医師法上、これらは違反状態であり、このような医師以外の医療行為について明確に禁止だと示される見通しだ。
治療内容や質については、既に美容医療診療指針があるが、内容が拡充され、医療機関の医師数や専門性が定められたり、副作用や後遺症についての説明方法や同意の取得方法などが示されたりする。
診療記録についても、記載事項が明確に示される予定だ。
また、有害事象が起きた際に、医療機関が間違いなく対応するように求められる。副作用に対応できない医療機関は許容されない方向で、トラブルの対応能力が問われる。
さらに注目されるのは、医師の指導や教育体制は、経験や専門性に対応した治療の実施が求められる。併せて教育システムが定められる。
契約締結でのルールも明確になる。ここでは「即日施術は原則禁止」がルールとして定められる見通しだ。即日施術は、不必要な施術につながるなど問題視されてきたため、業界の健全化には重要だ。
ガイドラインに最低限盛り込まれる6つの重要な焦点
項目 | 詳細 |
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医事法制や消費者保護法制等の遵守すべき関係法令の内容、明確な解釈 |
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治療内容及び質の標準化 |
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診療に関する記録として残しておくべき事項やその記載方法 |
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有害事象発生時の対応 |
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医師の指導・教育体制 |
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契約締結時において最低限遵守すべきルール |
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施術を受けるに当たってメリットに
- ガイドライン遵守の確認→各医療機関がガイドラインを守っているかどうか確かめる仕組みが導入される見通し
- 美容医療の健全化→ガイドラインの整備が、美容医療の安全性と信頼性を高める大きな一歩となる
新しいガイドラインが作られることは、美容医療を利用する人にとって大きな利点がある。
先に述べた通り、医師以外の無資格者によるカウンセリングなどは解消されることが期待される。クリニックが守るべき法律がいくつもあるが、そうしたルールに従った場合に、やっていいことと、やっていけないことが明確になるからだ。
このほかにも、施術を検討する人に施術を強要するような、不当な拘束や執拗な説得を行い、即日施術を受けさせるようなトラブルも解消が期待される。
施術を受けるに当たって説明と同意のプロセスが明確化され、十分な情報を得た上で施術を受けることが標準化されることなども利点になる。
各医療機関が、作られたガイドラインを守っているかどうかを確かめる仕組みも導入される見通しだ。
ガイドラインの整備は、美容医療の健全化に向けた大きな一歩となる。どのようなルールが作られるか今後注視される。