女性ホルモンを補うホルモン補充療法によって、生物学的老化を遅らせる効果が期待できる可能性がある。
2024年8月、中国のキャピタル医科大学と北京大学の研究チームがホルモン補充療法に関する研究成果を発表した。
※生物学的年齢とは、生まれてからの年月によって決まる「暦年齢」とは異なり、体の組織や細胞の老化の度合いによって決まる年齢のこと。
ホルモン補充療法は老化に影響?
- 分析方法→血液中の9種類のバイオマーカーを用いて生物学的年齢を算出し、ホルモン補充療法の有無による影響を比較
- 研究結果→ホルモン補充療法を受けた女性は、受けていない女性よりも平均で0.17年若いと確認された
- メカニズムの可能性→ホルモンバランスの改善により、炎症や細胞損傷を抑制し、老化速度を低下させる可能性
ホルモン補充療法は、更年期症状に対する一般的な治療法として普及している。更年期症状とは、閉経前後に生じるもので、顔のほてり(ホットフラッシュ)や疲れやすさなどの症状が現れることを指す。
今回の研究では、これらの症状を抑えるだけでなく、若返り効果につながる可能性も示された。
中国の研究グループは、英国の大規模な健康データベースである「UK Biobank」に登録された閉経後の女性11万7763人を対象として、ホルモン補充療法の使用状況と生物学的な年齢を分析した。
研究チームは、血液中の9種類のバイオマーカーを用いて生物学的年齢を算出し、ホルモン補充療法の使用による影響を比較した。
その結果、ホルモン補充療法を受けている女性は、受けていない女性よりも平均で0.17年若いことが確認された。特に、55歳以降にホルモン補充療法を開始した女性や、4~8年間継続して使用した女性では、老化抑制効果が顕著に見られた。
研究チームは、ホルモン補充療法がホルモンバランスを改善し、炎症や細胞損傷を抑制することで老化速度を低下させる可能性を指摘した。
研究では、教育水準が低い女性の方が効果を得やすいことが示され、これが健康格差を是正する方法につながる可能性もあると説明されている。また、生物学的年齢のギャップが死亡率の低下に寄与する可能性も示された。
生物学的年齢に注目
- 生物学的年齢の注目度→「エピジェネティック・クロック」を用いた老化研究が注目を集めており、妊娠回数の増加が生物学的年齢を加速させる可能性が示されている
- 生物学的年齢測定の重要性→若返り治療の効果を評価し、早期の対策を講じる上で有効な指標
- 美容医療への影響→美容医療の効果を客観的に把握するために、生物学的年齢の測定が今後重要な要素となる可能性
ヒフコNEWSでも伝えているように、生物学的年齢は現在、大きな注目を集めている。その代表例として、「エピジェネティック・クロック」を用いた老化研究が挙げられる。この研究では、妊娠回数の増加が生物学的年齢の進行を加速させることが示されている。
※エピジェネティック・クロックは「DNAのメチル化」を利用して生物学的年齢を測定する方法。DNAのメチル化とは、遺伝情報を収めているDNAにメチル基と呼ばれる分子が付くことで、遺伝子の発現のオン、オフと調整する仕組みのことである。このようなDNAの調節の仕組みは、エピジェネティックな変化と呼ばれている。
生物学的年齢の測定は、若返り治療の効果を評価し、早期の対策を講じる上で役立つ。そのため、今後も生物学的年齢に関連した研究への関心はさらに高まるだろう。
美容医療においても、その効果を把握するために、生物学的年齢の測定が欠かせない要素になる可能性がある。