- 幹細胞培養上清やエクソソーム→ 医師の裁量で自由診療として実施されるが、リスク懸念がある。
- 現行法での規制→ 細胞を含まないため安確法の規制対象外とされている。
- 2024年12月16日の中間報告→ 培養上清やエクソソームが細胞加工物と同等の管理が必要な可能性を指摘。
美容医療の分野で広がりを見せる幹細胞培養上清やエクソソームを用いた治療は、現在、医師の裁量による自由診療として実施されている。これらは細胞を含まないため、現行法である安確法の規制対象外とされているが、その安全性やリスクについての懸念もある。
2024年12月16日、厚生科学審議会再生医療等評価部会で、「再生医療等安全性確保法におけるリスク分類の見直しに資する調査研究」の中間報告が発表された。
この報告では、培養上清やエクソソームを含むEVs(細胞外小胞)が、現行の規制対象である細胞加工物と同等の管理が必要である可能性などが指摘された。
※「安確法」は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」のそれぞれ略称。EVsとは「細胞外小胞」を意味する「extracellular vesicles」の略称で、細胞から分泌される微小な膜構造を持つ粒子のこと。
規制対象の「細胞加工物」と同様の管理が必要
- 間葉系幹細胞(MSCs)→ 現時点ではリスク分類の見直しは行わない方針。
- EVsおよび培養上清→ 細胞加工物と同等のリスクがあると認識され、法的規制や管理体制の整備が議論された。
- エクソソーム療法→ 安全性に関する科学的根拠が乏しく、問題視された。
中間報告は、大阪大学大学院医学系研究科特任教授であり、日本再生医療学会常務理事を務める岡田潔氏によって行われた。この中で、美容医療に関連するところとして、間葉系幹細胞(MSCs)およびEVs/培養上清のリスクに関する分析結果が説明された。
間葉系幹細胞については、現時点でリスク分類の見直しを行わない方針が示された。一方、EVsおよび培養上清については、細胞加工物と同等のリスクがあるとの認識が示され、今後の法的規制や管理体制の整備の必要性が議論された。
特に、「エクソソーム療法」の実態については、安全性に関する科学的根拠が乏しい点が問題視された。
※エクソソームはEVsの中でも特に細胞内の「エンドソーム」と呼ばれる泡状の構造物から発生する粒子で、サイズが約100nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)のものをいう。
科学的根拠に基づく管理の強化
- 品質管理→ 成分や製造工程が有効性と安全性に影響を与えるため、厳格な管理が求められる。
- 中間報告の提案→ 提供計画や報告書に有効性・安全性評価のための項目を追加し、治療の実態把握を促進。
- 線引きの課題→ EVsと培養上清の特性を明確化し、品質と安全性を確保する包括的管理基準が必要。
EVsや培養上清は、その成分や製造工程が有効性および安全性に対して直接影響を与えるため、厳格な品質管理が求められる。しかし、現行の基準や体制では管理に関するルールがなく、これは健康被害などにつながる恐れがあるとされる。自由診療として行われる治療では、敗血症などの重篤な有害事象のリスクが報告されている。
中間報告では、再生医療等提供計画や定期報告書において、有効性や安全性に関する科学的根拠を評価するための項目を追加することが提案された。これにより、治療の実態を把握し、安全性を確保する基盤を整えることが目的とされている。
一方で、EVsと培養上清については線引きが難しいことから、それぞれの特性を明確化し、品質および安全性を確保するための包括的な管理基準の策定が必要であるとの意見が多く出された。
ヒフコNEWSで伝えているが、エクソソームを含むEVsについては製造方法や品質に関連したガイドラインが整備される予定となっている。今後、こうしたガイドラインも参考にしながら、ルール作りも進められるものと見られる。方向性としては規制強化に向かう可能性がある。