
ノボノルディスクファーマがウゴービを発売。(写真/Adobe Stock)
肥満症治療薬として世界的にヒットしているウゴーピ(糖尿病薬としてはオゼンピック、一般名はセマグルチド)の開発元であるノボノルディスクで、CEO(最高経営責任者)が退任を迫られる事態となっていることが明らかになった。
ゼップバウンドが台頭

イーライリリーは日本でもゼップバウンドを今年4月に発売。同社プレスセミナーで講演した虎の門病院の門脇氏。(写真/日本イーライリリー、田辺三菱製薬)
デンマークの製薬企業ノボノルディスクは、2025年5月16日にCEO退任を発表した。
同社によれば、CEOを務めるラース・フルーアゴー・ヨルゲンセン氏が、退任することが決まったという。この退任は本人の辞意によるものではなく、大株主であるノボノルディスク財団からの要請によるものだった。後継者は未定で、決まるまでCEOの職は続ける見通しとなっている。
ヨルゲンセン氏は、2017年にCEOに就任し、糖尿病薬オゼンピックと肥満薬ウゴーピの世界的な成功を背景に、売上、利益、株価をそれぞれ約3倍に成長させた。
それでも退任を迫られたのは、2024年半ば以降の株価急落がある。そもそもヨルゲンセン氏が就任した当時、同社の株価は約25ドルだったが、2024年6月のピーク時には約140ドルに達した。この時点では3倍どころか5倍を超えていたことになる。しかしその後、株価は下落を続け、2025年4月には約60ドルまで落ち込んだ。5月7日に発表された2025年度第1四半期の決算では、売上、利益ともに増加していた。それにもかかわらず退任が求められた背景には、肥満薬市場における競争の激化があると見られている。
ノボノルディスクの経営変化に影響を与えた要因の一つとして、肥満症薬のゼップバウンド(糖尿病薬としてはマンジャロ、一般名はチルゼパチド)の存在が挙げられている。
ゼップバウンドの開発元である製薬企業イーライリリーは5月11日、同薬による平均体重減少が20.2%に達し、ウゴービの13.7%を上回ったと発表した。また、15%以上の体重減少を達成した人の割合は、ゼップバウンドが64.6%、ウゴービが40.1%となるなど、複数の指標においてゼップバウンドの優位性が示された。
海外メディアでは既に「ノボノルディスクのCEOが更迭された」と報じられており、ゼップバウンドの市場シェア拡大により、ウゴービが競争上の劣勢に立たされていたことが退任の一因との見方が出ている。
他のメーカーからも続々登場の予定

米国食品医薬品局(FDA)が偽造品の存在を警告。特定の製品番号や製造番号が使用されている。(出典/FDA)
日本では2024年2月にウゴービは発売されていたが、異例の遅れを引き起こすという問題もあった。ダイエット目的での処方が増え、世界的な品不足に陥っていたからだ。日本では学会が安易な使用をやめるよう声明を出すほど混乱した。
このほかにもウゴービをめぐっては、偽薬が流通するという問題も発生していた。
2024年6月、ヒフコNEWSでも伝えたが、WHO(世界保健機関)も、オゼンピックの偽造品に対して警告を出す事態となった。偽造品は世界各地で流通しており、ブラジル、英国、米国での発見が報告されている。この注射薬は申告されていない成分も含まれている可能性があるとして、WHOは注意を促した。
こうした問題はCEOが対処すべき事柄であり、問題が解決されない状況が退任につながる一因になった可能性もある。
一方で、ゼップバウンドを販売するイーライリリーの株価も上昇しているわけではない。
ウゴービも、ゼップバウンドも、GLP-1受容体に結合する効果を持つ薬だが、今後、同様の作用を持つ新薬が他メーカーからも発売予定であり、それも市場の変化に影響していると見られる。
肥満症薬は、その効果から世界中で大ヒットになっている。
肥満症ばかりではなく、ダイエットに使われることから、各地で欠品や副作用の問題が指摘されるようになっているが、基本的にはその効果は高く評価されている。
製造販売元のトップが退任に追い込まれるという異例の展開は、それだけ薬に対する期待が極めて大きいことの裏返しとも言える。
メーカーに過度の期待がかかる中で、今後、肥満症薬の無理な販売合戦が激しくなる可能性も考えられる。薬の乱用はトラブルの元でもあり、注意が必要だ。
