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肥満症薬ウゴービ、異例の遅れを経て日本市場に登場、薬不足の懸念続く

カレンダー2024.2.22 フォルダー 国内

ポイント

  • 肥満症治療薬ウゴービが発売、ダイエット目的使用による薬不足問題に注目
  • 学会からの声明発表や健康上のリスク指摘にもかかわらず、需要は世界的に急増
  • 日本では健康保険適用でウゴービの安定供給と使用範囲の適正化が課題に
ノボノルディスクファーマがウゴービを発売。(写真/Adobe Stock)

ノボノルディスクファーマがウゴービを発売。(写真/Adobe Stock)

 2024年2月22日、肥満症治療薬であるウゴービが異例の遅れを経て発売となる。

 ウゴービをめぐっては、美容医療を含む自由診療においてダイエット目的での処方が増えて、薬不足へとつながる事態が発生。この問題は学会から声明が出されるほど注目された。

 今後、健康保険での安定供給も関心を集める中で、自由診療での利用も注目される。

ダイエット目的で世界的に利用急増

セマグルチドは用途により名称が変わる。(写真/Adobe Stock)

セマグルチドは用途により名称が変わる。(写真/Adobe Stock)

  • ウゴービとは → 糖尿病治療薬オゼンピックから派生した肥満症治療薬で、成分セマグルチドを含むGLP-1受容体作動薬。
  • 発売の遅れの原因 → 薬が足りなくなったため。ダイエット目的で幅広い層に使用され、世界的に需要が急増した。
  • 日本での状況 → 自由診療を通じてダイエット目的での使用が増え、異例の需要逼迫が発生。
  • 問題点の指摘 → 日本糖尿病学会や日本肥満学会が、美容目的での使用を問題視。
  • 副作用と安全性 → 膵炎や甲状腺がんのリスク上昇の可能性が指摘されており、使用には安全情報の確実な理解が必要。

 ウゴービは、糖尿病の薬として使われていたオゼンピックが体重減少効果を持つことから肥満症治療薬にも適用されるようになった薬だ。使用目的に応じて名称が異なっているが、「GLP-1受容体作動薬」というタイプの「セマグルチド」という成分は同じだ。

※セマグルチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬として知られる薬。また、チルゼパチドは、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド (GIP)/ グルカゴン様ペプチド1 (GLP-1)共受容体作動薬という薬。いずれの薬も糖尿病治療を目的として開発されたが、体重減少の効果から肥満症治療を目的としても開発されている。セマグルチドは、糖尿病治療を目的とする場合、注射薬は「オゼンピック」という商品名で、飲み薬は「リベルサス」という商品名。オゼンピックは肥満症治療を目的とする場合、注射薬は「ウゴービ」という商品名で呼ばれている。また、チルゼパチドは、糖尿病治療薬としては「マンジャロ」という商品名で、肥満症治療薬としては「Zepbound(ゼップバウンド)」という商品名となっている。

 肥満症治療薬としてのウゴービは、米国では21年6年、欧州では同年11月に発売され、日本ではそれから2年以上遅れての発売となる。日本でウゴービが承認されたのは23年3月だが、承認後約1年の期間を経ての発売は異例の遅れといっていいだろう。というのも、一般的には承認されてから60日以内に薬価収載と呼ばれる価格の決定があり、速やかに発売される。「60日ルール」という言葉もあるくらいだ。ウゴービの場合が薬価収載が11月22日までずれこみ、さらに発売まで3カ月を要した。

 なぜ遅れたかと言えば、薬が足りなくなったからだ。問題は、ダイエット目的での使用だ。病的に体重の重い人ばかりではなく、幅広い人たちからやせるために使われたのである。こうした背景で、世界的に使用が急増し、薬が足りなくなる事態になった。

 国内においても、自由診療を通じてダイエット目的での使用が増えて、異例の需要逼迫が発生していた。2020年時点で、日本医師会はオンライン診療での処方増加を受けて、糖尿病以外での使用が問題だと記者会見で指摘していた。

 この不足問題が世界的な利用急増でますます顕著になり、日本糖尿病学会が23年11月、ダイエット目的での使用を受けて、供給不足の問題解決を厚生労働省に要望。日本肥満学会も同月、美容目的に使うべきではないと声明も発表した。

 さらに、GLP-1受容体作動薬に関しては、膵炎の副作用が報告され、動物実験のおける甲状腺がんのリスク上昇の可能性が指摘された。思わぬ健康上のトラブルにつながる可能性があり、使用に際しては安全情報の確実な理解が必要になる。

保険適用で問題なく行きわたるか?

1カ月の保険適用前の薬剤価格は約4万円。(写真/Adobe Stock)

1カ月の保険適用前の薬剤価格は約4万円。(写真/Adobe Stock)

  • 健康保険適用の条件 → BMI30以上の人、またはBMI27以上で一定の条件を満たす人が健康保険適用でウゴービを使用可能。
  • 薬の価格と保険適用後の負担額 → ウゴービの価格は月額約4万円だが、保険適用で患者負担は約1万2000円に。
  • 自由診療での販売状況 → 学会の動きに関わらず、ウゴービや同成分の飲み薬リベルサスがダイエット目的で自由診療で販売中。
  • 薬不足と保険診療の影響 → ウゴービが保険診療で本格的に使用されると、自由診療への薬供給が逼迫する可能性あり。
  • GLP-1関連薬の動向 → ウゴービを含むGLP-1関連薬の今後の供給と使用動向が引き続き注目される。

 今後、日本国内においてはBMIなどの一定条件を満たした人が健康保険の適用内でウゴービを使用可能になる。この薬の価格は、最初に少量から開始し、一定量を毎週注射する段階で時月額約4万円となるが、保険適用により、3割の1万2000円程度になる。

※今回、肥満症治療薬が適用されるのは、次の2つの条件のどちらかに当てはまり、しかも食事療法・運動療法を行っても十分な効果がない場合となる。

BMI27以上で、2つ以上の健康障害を持つ場合 2つ以上の健康障害は、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のうちいずれかに加えて、11の健康障害のうちいずれかを持つ場合。
11の健康障害とは、耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞・一過性脳虚血発作、非アルコール性脂肪性肝疾患、月経異常・女性不妊、閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)、肥満関連腎臓病である。
BMIが35以上で、条件を満たす場合 条件は、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のうちいずれかを持つ場合。

 しかし、学会などの動きにかかわらず、GLP-1関連薬の自由診療での販売は続いている。ウゴービは注射薬であるが、同成分を持つ飲み薬のリベルサスがダイエット目的で販売されている状況もある。こちらは日本では肥満症薬としても承認されていない。

 薬が不足が続く中、保険診療でウゴービが本格的に使われるようになったときに、自由診療への薬の供給が薬の逼迫を引き起こす心配がある。

 GLP関連薬はほかの種類もありいずれも注目されている。今後、このグループ薬の動向は引き続き注目されることになりそうだ。

参考文献

肥満症の新たな治療法?セマグルチド飲み薬が体重減少に効果
https://biyouhifuko.com/news/research/2373/

「GLP-1ダイエット」広告、美容医療の新たな問題?厚労省が委員会で議論
https://biyouhifuko.com/news/japan/3731/

ダイエット目的の薬が不足、厚生労働省に糖尿病治療薬の要望書、関連団体が提出
https://biyouhifuko.com/news/japan/4213/

体重減少効果で注目の「GLP-1薬」、まれながら重い副作用の報告、米国医師会雑誌が注意呼びかけ
https://biyouhifuko.com/news/world/4374/

「肥満症治療薬は美容などに使う薬ではない」、日本肥満学会が声明
https://biyouhifuko.com/news/japan/4533/

米国FDA”肥満薬”の違法販売に警告、問題の会社は「研究目的」と偽装、過熱する人気
https://biyouhifuko.com/news/world/5740/

吉田晃子 「新薬はなぜ、承認から60日で患者さんに届くのか-60日ルールの誕生と現状、これから」、 政策研ニュース、 医薬産業政策研究所、 No.66、 2022
https://www.jpma.or.jp/opir/news/066/bvd7r100000004d2-att/66_11.pdf

新医薬品一覧表(令和5年11月22日収載予定)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001167629.pdf

Wegovy™ recommended for approval for the treatment of obesity by the European regulatory authorities
https://www.novonordisk.com/news-and-media/news-and-ir-materials/news-details.html?id=86334

令和4年(2022年)3月20日(日) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース 自由診療におけるオンライン診療の不適切事例について(医薬品の適応外使用)
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/010525.html

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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