ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

若年女性の「やせすぎ」は病気、日本肥満学会が新たに「FUS」提唱、低体重や低栄養がもたらす月経異常や貧血などを症候群として定義、「痩せ=美」の圧力、健康問題に対策迫られる

カレンダー2025.6.5 フォルダー 国内
ダイエット志向の強まりなどが健康問題につながることも。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ダイエット志向の強まりなどが健康問題につながることも。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 日本肥満学会は2025年4月、20代女性を中心に広がる低体重や低栄養に関連する健康障害について、これらを新たに「女性の低体重/低栄養症候群=FUS(Female Underweight/Undernutrition Syndrome)」という病気として位置づける考え方を示した。

 最近、正常な体重であるにもかかわらずダイエット志向が強いなどの原因により、健康の問題を引き起こしているケースが存在していると指摘されることがある。一方で、美容医療関連では、自由診療において適応外にもかかわらずGLP-1受容体作動薬が処方されるケースがあり、過度な体重減少を招くリスクが指摘されている。低体重や低栄養が病気として扱われることになれば、その対策が加速し、自由診療の現場にも少なからぬ影響を与えることが考えられる。

20代女性の2割が低体重

低体重や低栄養が増えている恐れ。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

低体重や低栄養が増えている恐れ。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 痩せ志向とボディイメージの歪み→ 20代女性の約2割がBMI18.5未満の低体重で、SNSやメディアの影響により「痩せていること=美しさ」という価値観が浸透。BMI20.5でも「太っている」と感じる傾向がある。
  • 健康障害と医療対策の遅れ→ 低体重や低栄養によって月経異常、貧血、骨量減少など多くの健康問題が生じるが、これまで国の対策は肥満に偏り、低体重対策は不十分だった。
  • 新たな問題と課題→ 明確な病名がないことで対応が後回しになりがちで、正常~低体重の人によるGLP-1薬の過剰使用といった副作用リスクや過度なダイエットも懸念されている。

 同学会によれば、日本では、20代女性のうち2割前後がBMI18.5未満の「低体重」に当てはまり、先進国の中でも特に高い水準だという。

 この背景には、「痩せていること=美しい」と見なす価値観が、SNSやファッション誌などのメディアで広がり、特に若い女性にダイエット志向を強めているなどの動きがある。学会では、低体重の女性が「自分は太っている」と感じる体格が、BMI=20.5という低すぎる水準であることを問題視し、ボディイメージの歪みがあると指摘する。

 結果として、低体重や低栄養に伴い、月経周期異常や貧血などのさまざまな健康問題が引き起こされていた。

※健康障害と見なされる状態としては、骨量減少(骨粗鬆症や骨減少症)、月経異常(低体重に伴う月経の減少)、鉄、カルシウム、ビタミンDなどの栄養不足、鉄欠乏性貧血、筋肉量や筋力の低下、耐糖能異常や低トリヨードサイロニン(T3)症候群、脂質異常症、徐脈や低血圧、抑うつ、不安、認知機能の低下、冷え、頭痛、睡眠障害などが含まれている。また、若い女性のFUSが、将来のQOLや虚弱のほか、生まれてくる子どもの発育にも影響を与える可能性も考えられている。

 一方で、従来、国の対策などでは、同じ体重の問題としては肥満に焦点が当てられることは一般的だが、低体重や低栄養への取り組みは十分ではなかった。

 学会は、背景には低体重や低栄養に名前のついた「病気」としての位置づけがなかったことも影響すると推定し、医療や社会の対応が後回しにされがちだと訴える。

 そうした中で、正常または低体重の人が、GLP-1受容体作動薬を「痩せ薬」として求めて、副作用のリスクや過度なダイエットを助長するような問題も引き起こされている。

病気の概念としての「FUS」

低体重や低栄養によりもたらされる健康問題を病気としてとらえる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

低体重や低栄養によりもたらされる健康問題を病気としてとらえる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • FUSという新たな病気概念の提示→ 若い女性の低体重や低栄養による健康障害に対し、「FUS(Female Underweight/Undernutrition Syndrome)」という病気の枠組みを日本肥満学会が提示。メタボのように全体像の把握と対策を促す狙いがある。

 こうした背景の下、日本肥満学会では、関連学会と共にワーキンググループを設置した上で、若い女性の低体重や低栄養に関連する健康障害について問題点を整理。今回、新たな病気の概念として「女性の低体重/低栄養症候群=FUS(Female Underweight/Undernutrition Syndrome)」が提示されるに至った。

 学会によると、この病気の考え方を作る上で参考としたのは、メタボリックシンドローム(いわゆるメタボ)という病気の考え方だったという。

※メタボでは、高血圧や高血糖、脂質異常症などの多くの病気を氷山の一角としてとらえ、背後にある内臓脂肪を本質的な問題としてとらえ直した。これによって、多くの人が病的な状態を理解しやすくなり、さまざまな対策をとられやすくした。

 同じように、FUSは、貧血や月経周期異常、けん怠感などの表面的に現れる症状だけではなく、背後にある低体重と低栄養という本質的な問題に焦点を当てるものとなる。FUSの考え方を取り入れることで、従来、さまざまな健康障害は個別に扱われる傾向があったが、症状の全体像をとらえやすくなり、対策を取りやすくなると想定されている。

 学会によるFUSの定義は、「低体重または低栄養の状態を背景に、それを原因とした疾患・症状・徴候を合併する状態」と定義され、BMI18.5未満や特定の栄養素欠乏のほか、月経周期や貧血などの症状が見られる場合が該当する。なお、現時点では、科学的な根拠が不足していることもあり、病気の考え方の枠組みを示すにとどまっていると補足している。低体重ではないものの、低栄養であるだけの場合でも、健康障害が引き起こされている場合にFUSと見なせる可能性も想定されている。

※なお、FUSは、摂食障害のほか、甲状腺の病気やがんなど他の病気が原因である場合には対象外となる。あくまで他の病気では説明が付かない、低体重や低栄養を背景とした健康障害が対象だ。

 また、主な対象者の範囲は18歳以上で、閉経前の女性とされ、閉経後の女性や男性を含んでいない。今後の研究が進むことで、見直される可能性もある。

 低体重や低栄養は社会的な問題が背景にあることも想定しており、FUSという名称により、レッテル貼りや偏見が生じないよう、配慮や啓発も必要と強調している。

 FUSの原因としては、体質的に痩せやすいこと、SNSやメディアの影響によるダイエット志向、社会経済的な要因や貧困による低栄養が考えられている。こうした要因が複雑に絡まり合い、FUSに至ると想定されている。

急務と見なされる肥満症薬の乱用への対策

日本肥満学会が声明。(出典/日本肥満学会)

日本肥満学会が声明。(出典/日本肥満学会)

  • ダイエット目的で乱用→ 「オゼンピック」や「マンジャロ」などの糖尿病や肥満症の治療薬が、病気でない人にダイエット目的で処方、使用されるケースが増加している。
  • FUS概念が過度な薬使用への歯止めに→ 体重減少効果が強い薬の乱用が、低体重・低栄養を助長する恐れがあり、FUSの認知拡大によって適正使用の促進が期待される。

 前述のように、「オゼンピック」「ウゴービ」「マンジャロ」「ゼップバウンド」などの薬の名前が、ダイエットとの関連で当たり前のように語られる状況が存在している。こうした薬は、本来、糖尿病や肥満症の薬だが、病気でもない人がオンライン診療などにより処方を受けて使うケースが増えているとされる。

 体重減少という意味で、この動きが問題視されるのは、体重減少効果が大きいため、低体重の問題をさらに深刻化させる恐れがあるためだ。過度な体重減少や栄養不足が健康問題を引き起こす場合、FUSの概念が広く認知されることで、不適切な薬の使用を含めた対策が、社会や医療の現場で取りやすくなると考えられる。

 従来、日本肥満学会は、不適切な肥満症薬の使用に注意喚起をしている。FUSの考え方を広めることで、過度な薬の使用にも歯止めをかけるという狙いも考えられる。

 こうした動きは、今後、美容医療を含めた自由診療にも影響を与えることが予想される。

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。