
唇へのフィラー。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
唇のヒアルロン酸注入はよく行われる施術で、重い合併症としては血流障害が知られている。
一方で、それとは別に、神経に関わる痛みが長引くケースもあり得るようだ。
イタリアの研究グループが2026年4月、美容皮膚科誌に報告した。
注入10日後、歯や口の奥にひびくような痛み

唇へのフィラーを効果的に。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 注入後に遅れて痛み→ 唇へのヒアルロン酸注入から約10日後に、顔や口の痛みが出た。
- 歯の異常は見つからず→ 歯科検査では原因が確認されず、感染や血流障害も疑われなかった。
- 通常対応では改善乏しい→ ヒアルロニダーゼやステロイドなどでは、十分な改善が見られなかった。
報告されたのは49歳女性の症例。2025年11月、唇だけにヒアルロン酸を合計0.6mL注入した。施術直後には、強い痛みや血流障害を疑う変化、はっきりした神経症状は見られなかった。
ところが約10日後から、上下の歯ぐきや歯列に沿って広がるような顔や口の痛みが出てきた。口の上あごや舌先のしびれ感もあり、痛みは電気が走るような、刺すような性質だった。痛みの強さは、10点満点で最大7とされている。
歯科での診察や画像検査では、歯が原因となる異常は見つからなかった。血管障害や感染の可能性もうかがわれなかったため、ヒアルロニダーゼやステロイド、イブプロフェンなどで対応したが、十分な改善は見られなかった。
その後の超音波検査では、下唇の右側に小さな変化が疑われたものの、痛みの原因をはっきり特定できる特徴ではなかった。痛みが3カ月近く続いたため、歯や血流の問題だけでは説明しにくいとして、神経の痛みの可能性も含めて詳しく調べることになった。
神経の痛みとして対応

唇へのフィラーを間違いなく行うには。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 神経の痛みとして対応→ 三叉神経痛に似た、神経に関連する痛みとして治療された。
- 薬で徐々に改善→ プレガバリンやPEAを使い、1カ月後から痛みが大きく軽くなった。
- 炎症やむくみも関与か→ 注入後に遅れて起きた局所反応が、痛みに関わった可能性がある。
研究者らは「三叉神経痛」と決めつけずに、神経の障害に関連した痛みとして対応した。
一般に三叉神経痛は、片側に出る電気が走るような短い痛みで、触れる、話す、食べるといった軽い刺激で引き起こされることが多い。今回は痛みが顔面の両側に広がり、しびれ感もあったものの、はっきりとしたきっかけは確認されなかった。
そのため、研究者らは典型的な三叉神経痛そのものというより、処置に関連して起きた神経の障害による痛みが、三叉神経痛に似たかたちで現れたと考えた。
その後、神経の痛みを抑える薬のプレガバリンと、炎症や神経周りの反応を和らげる目的で使われるパルミトイルエタノールアミド(PEA)による治療を始めたところ、1カ月後には痛みが大きく軽くなり、3カ月後にはさらに改善した。
研究では、注入そのものによる神経への刺激だけでなく、処置後に遅れて生じた部分的なむくみや炎症反応が、痛みに関わった可能性を考察している。
一つの症例報告で、痛みの仕組みをはっきり証明したものではないものの、唇のヒアルロン酸注入後に長引く痛みやしびれが続く場合に、神経に関連した痛みが起こる可能性があると知っておくと、相談や対処がしやすくなる可能性がある。
参考文献
Calabrò RS, Bonavita P. Persistent Trigeminal Neuralgia-Like Pain Following Isolated Hyaluronic Acid Lip Augmentation: A Case Report. J Cosmet Dermatol. 2026 Apr;25(4):e70822. doi: 10.1111/jocd.70822. PMID: 41923295; PMCID: PMC13044321.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41923295/
