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海外で得た視点を日本の診療に生かす、IMCASで印象的なブランド名抜きの議論 ニードルフリー注入とレーザーの講演から得た学び 池袋駅前のだ皮膚科院長・野田真史氏に聞く

カレンダー2026.5.11 フォルダーインタビュー
野田真史(のだ・しんじ)氏。池袋駅前のだ皮膚科院長。フランス・パリで取材。(写真/編集部)

野田真史(のだ・しんじ)氏。池袋駅前のだ皮膚科院長。フランス・パリで取材。(写真/編集部)

野田真史(のだ・しんじ)氏
池袋駅前のだ皮膚科院長

  • 国ごとの違いを実感→ 同じ美容医療のテーマでも、国によって主だった治療や考え方が異なる。
  • 海外で日本の治療を紹介→ ニードルフリーインジェクターなど、日本での経験に海外医師が関心を示した。
  • 学会のつながりが診療に生きる→ 国際学会で得た知見や人脈が、日常診療の選択肢を広げる。

──IMCAS World Congressで講演した。

野田氏: ニードルフリージェットインジェクターとニキビ跡治療、赤みのレーザーの3つの講演をしました。

 ニードルフリーインジェクターは、針を使わずに製剤を注入することができるデバイスです。これによってニキビ痕の治療などを行うことが可能です。

 発表自体は短時間で、質疑応答も限られています。その短い時間でも「どういう反響があったか」「何が評価されたか」は感じられます。

──現地で特に印象に残ったのは?

野田氏: 同じセッションに参加している医師のバックグラウンドが多様です。欧州、中東、米国など、国が違う医師が同じテーマを見ている。そうすると同じ条件でも主だった施術が異なることがよく分かります。

 例えば、欧米はレーザーが主流の治療になりやすい。一方、日本で使われている機器や手技が、海外では一般的ではないこともあります。

 こちらがニードルフリーインジェクターについて紹介すると「そんなものがあるのか」と興味を持たれることがあります。逆に海外の医師から別の施術を勧めるような声掛けを受けたりします。国が違うと、前提が違うのだと実感します。

 美容に限らず、話の幅もかなり広いです。私の普段の臨床では馴染みが薄い話題、例えば傷跡の治療に本来糖尿病治療薬のインスリンを使う話なども出てきました。日本で普通に診ているケースとは違うものが、当然のように議論されているのです。

 国が違うと、診療の前提や経験している症例が違い、治療の発想も変わるのだと思います。こういう場に来ると、「知らないからこそ面白い」「自分でも試してみよう」という発想が生まれることがあります。

 一方で、赤みに対するレーザー治療では、海外の医師も同じ悩みを抱えていると感じました。効果を出したいものの、合併症を抑えたい課題があり、そこは国が違っても共通の話題になりました。

 そうしたやり取りから知り合いが増えることが財産になります。昨年、学会で得たつながりや技術が、今年の診療にそのまま生きています。つながりが、日常診療を変えることがあるのが学会だと思います。

野田真史(のだ・しんじ)氏。池袋駅前のだ皮膚科院長。フランス・パリで取材。(写真/編集部)

野田真史(のだ・しんじ)氏。池袋駅前のだ皮膚科院長。フランス・パリで取材。(写真/編集部)

  • 中立性を重視→ IMCASではブランド名を出さず、科学的な内容で議論する姿勢が印象的だった。
  • 日本は慎重、海外は攻める傾向→ 日本はリスクを抑えて積み重ねる治療が多く、海外では一度の効果を重視する傾向もある。
  • 診療に還元する意義→ 海外で得た知見を取り入れることで、施術を受ける人に返せる選択肢が増える。

──発表は中立が保たれる。

野田氏: はい。IMCASは企業寄りと言われることもありますが、一般演題ではブランド名を極力出さない運用が徹底されている印象でした。発表で、具体なデバイスや製剤の名前を出せない部分がありました。

 アジアの学会でも「一般演題ではブランド名を出さないでください」と規定がありますが、現実にはスライドで出たり、質疑で出たりすることがある。ところが今回は、質疑で「ブランド名は何ですか」と聞かれても、演者が明言しない場面がありました。「柔らかいタイプのヒアルロン酸」などの表現に留めて、最後まで言わない。そこまで徹底されているのは意外でした。

 最初は不思議でしたが、裏を返せば「サイエンスがあれば、それで議論が成立する」という姿勢なのだと思います。

 もっとも課題が共有されていれば会話は成立します。海外の医師も同じように困っていることが多く、共通の話題としてやり取りできたのは印象的でした。

──日本と海外の違いはどうですか。

野田氏: 日本は比較的保守的で、リスクを抑え、回数を重ねて改善を積み上げる発想が強いと思います。施術を受ける側にとっては比較的リスクの少ない治療を受けやすいという長所があります。日本ではそうした選択肢が多いと感じますし、レーザーの出力も控えめになりやすい。

 一方で海外では「一度で満足度が高い」強い施術が好まれる部分もある。良し悪しですが、外に出ると「こんなに攻めていいのか」と学べることがある。その差を知ること自体が、参加の価値だと思います。

──国際学会への参加は意義がある。

野田氏: 来年もし参加するなら、別の切り口で発表したいと思っています。

 将来的には毛穴や色素沈着の治療など、テーマを少し広げていきたい。学会で得た知見を、帰国後すぐ診療に役立てる。そうすると診療の選択肢が増え、結果として、施術を受ける方々に返せるものが増えると感じています。

 セッションは並列が多く、全部を聴くのは物理的に無理です。ただ今回はアプリが使いやすく、興味のある演題をオンデマンドですぐ視聴できました。講演の見逃しが減るのは大きいです。トピックも幅広いので、自分の関心に合わせて選べる。美容だけでなく医療全般まで含むので、参加者の目的に応じて取れるものが変わる学会だと感じました。

プロフィール

野田真史(のだ・しんじ)氏。池袋駅前のだ皮膚科院長。フランス・パリで取材。(写真/編集部)

野田真史(のだ・しんじ)氏。池袋駅前のだ皮膚科院長。フランス・パリで取材。(写真/編集部)

野田真史(のだ・しんじ)氏

池袋駅前のだ皮膚科院長。東京大学医学部卒業後、皮膚科診療に従事。東京大学大学院医学系研究科修了。医学博士。ニューヨーク州医師免許を取得し、2014年からロックフェラー大学皮膚科で診療・研究に携わる。2016年東京大学医学部附属病院皮膚科助教。2018年に池袋駅前のだ皮膚科を開業。皮膚科専門医として日米で経験を重ね、海外の美容医療・皮膚科領域の知見も日常診療に取り入れている。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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