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見えない美容医療 世界でどれだけ施術されているのか簡単には分からない 全体像をつかみにくい3つの理由 市場推計も大きく割れる【編集長コラム】

カレンダー2026.6.21 フォルダー連載・コラム
肌の状態を気にする女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

肌の状態を気にする女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 世界の美容医療がどれくらい行われているのかを考えると、実は全体像をつかむのは難しいことが分かる。

 その背景として3つの理由が挙げられる。

「形成外科医の統計」では漏れる情報

世界的な視点を想起させる目元。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

世界的な視点を想起させる目元。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

  • ISAPS統計が手がかり→ 2024年版では、形成外科医による美容施術が世界で約3795万件と推計された。
  • 形成外科医以外は見えにくい→ 皮膚科医、美容皮膚科医、メディカルスパなどで行われる施術は十分に反映されにくい。
  • 国別データにも抜け→ 韓国や中国など、美容医療が盛んな国の情報も十分に見えない部分がある。

 世界の美容医療件数を考える時、まず頼りになるのが国際美容外科学会(ISAPS)の統計だ。

 2024年版では、形成外科医が行った美容施術は、外科が1740万件超、非外科が2050万件超で、合計約3795万件とされた。世界の美容医療が非常に大きな規模で動いていることを感じさせる数字だ。

 ただし、この数字をそのまま「世界の美容医療の総数」と受け取るのは難しい。最大の理由は、ISAPSの統計が、あくまで形成外科医を中心に集めたデータだからだ。2024年版では、約1万7000人の形成外科医に調査参加を呼びかけ、2975人の形成外科医から得たデータを基に、各国の形成外科医数などを踏まえて推計している。報告書でも、各国でボード認定相当を受けた形成外科医に焦点を当てた調査であることが示されている。

 そのため皮膚科医や美容皮膚科医、あるいは形成外科以外の医師が多く担っている美容医療は、これだけでは十分に見えてこない。

 実際、今の美容医療では、ボツリヌス療法やヒアルロン酸注入、レーザー、たるみ治療、肌治療など、外科以外の領域で広がっている施術も多い。

 また、ヒフコNEWSで見てきたように、米国ではメディカルスパのような新しいタイプの施設で美容医療が広がっていたり、ブラジルのレーザー施設で医療従事者以外によって施術が行われていると見られたりする。日本のエステも、国際的な基準で見れば、美容施術に含まれる可能性がある。

 その上、ホルモン補充療法や、アンチエイジング、ロンジェビティといった分野は、ここまで示した分野にも含まれない可能性があるが、美容医療の一環としてとらえられ始めている。化粧品のような分野まで含めるかといった問題もある。

 にもかかわらず、ISAPSの統計でカウントされているのは、形成外科医が行ったものに限られる。そう考えると、そこで示される数字は「世界の美容医療全体」というより、「形成外科医から見た世界の美容医療」に近い。

 しかも、では皮膚科系の団体が世界全体を補っているのかというと、そこも簡単ではない。米国皮膚外科学会(ASDS)には美容皮膚科処置に関する消費者調査があり、欧州の欧州皮膚科・性病学会(EADV)にも美容皮膚科の枠組みはあるが、ISAPSのように毎年、世界全体の美容医療件数を総計した決定版の統計があるわけではない。

 最も有名な数字が、そのまま最も完全な数字とは限らないところに、このテーマの難しさがある。

 2つ目の理由は、頼りになるはずのISAPSの統計にも、国別に見ると抜けがあることだ。

 ISAPSの2024年版では、個別掲載される国・地域が前年の23から32に増えたと説明している。個別掲載される国と地域リストには、米国、ブラジル、日本、イタリア、ドイツ、メキシコ、インド、トルコ、フランス、チャイニーズ・タイペイ(台湾)などが並ぶ。だが、少なくともこれらの中には、韓国、中国、ロシアなどが含まれない。

 もちろん、これはその国に美容医療が存在しないという意味ではない。世界の美容医療の全体像を見るには、決定的に情報が足りない。

美容医療の進化が速く、統計が追いつきにくい

IMCAS World Congress 2026で行われたディスカッション。(写真/編集部)

IMCAS World Congress 2026で行われたディスカッション。(写真/編集部)

  • 施術の進化が速い→ 機器治療や肌質改善、再生寄りの施術が広がり、分類が追いつきにくい。
  • 単純比較が難しい→ 新しい施術項目が追加されるため、前年との増減をそのまま比べにくい。
  • 市場規模にも幅→ 金額ベースの推計は調査によって大きく異なり、世界全体の実態把握には課題が残る。

 3つ目は、美容医療そのものの進化が速すぎることだ。統計の分類が、新しい施術の広がりに追いつきにくい可能性がある。

 ISAPS自身、2024年版では新しい施術項目が追加され、前年比の比較は各年で一貫している施術に限定して行うと説明している。つまり、総数だけを見て前年より増えた減ったと単純に言いにくい構造がある。

 実際、2024年版では、非外科的スキンタイトニングやケミカルピーリングなど、顔の若返りや肌質改善に関わる施術の伸びが目立っていた。市場の中心が、昔ながらの手術や注入だけでなく、機器や複合治療、再生寄りの施術へと動くほど、どこまでを同じカテゴリーで数えるのかが難しくなる。美容医療の進歩が速いほど、統計は追いかけにくくなるのである。

 最後に付け加えると、世界の美容医療市場については、さまざまな団体や調査会社が金額ベースの推計を出しているが、その数字はかなりばらつく。

 例えば、IMCASがボストンコンサルティンググループ(BCG)のデータとして紹介した数字では、美容医療市場が2024年に217億ユーロ、2029年に302億ユーロへ伸びると紹介している。1ユーロ185円で単純に換算すると、約4兆円から約5.6兆円となる。さらに、このほかの複数の調査結果も並べると、2025年の市場規模は約3兆円から約16兆円という開きがあるのを見て取れる。30年代の推定規模も約6.3兆円から約45兆円まで幅が見られる。

 「世界の美容医療市場はいくらか」と聞かれても、一つの正解があるわけではない。ただ、美容医療の分野が拡大するという見通しは示されている。美容医療をより健全に広めるには、実態を把握できる仕組みも重要だろう。

参考文献

ISAPS Global Survey 2024 Full Report and Press Releases.
https://www.isaps.org/discover/about-isaps/global-statistics/global-survey-2024-full-report-and-press-releases/

世界の美容医療は今どうなっているのか 美容クリニック編 非外科的施術チェーン世界で拡大 世界の美容医療の今を知る Vol.1
https://biyouhifuko.com/news/column/16091/

美容医療はスキンケア・施術・皮膚科などが統合、ロンジェビティ分野へ広がる 一般の医療が美容に転用されるとの観測も IMCASで元ガルデルマCEOが講演
https://biyouhifuko.com/news/world/16783/

Medical Aesthetic Market Analysis 2025
https://www.imcas.com/en/blog/article/1143/medical-aesthetic-market-analysis-2025

Aesthetic Medicine Market Size, Share & Industry Analysis, By Procedure Type (Invasive, Non-invasive Procedures), By End Use (Hospitals, Clinics & Aesthetic Centers), and Regional Forecast, 2026-2034
https://www.fortunebusinessinsights.com/aesthetic-medicine-market-116387

Global Medical Aesthetics Market to Reach USD 39.9 Billion by 2034, Fueled by Escalating Consumer Consciousness Regarding Appearance
https://www.imarcgroup.com/global-medical-aesthetics-market

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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