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ビフィズス菌が脳の老化をブロック、「1日200億の菌」で意外な結果

カレンダー2023.6.12 フォルダー 国内

ポイント

  • 腸内環境を整えることが脳の健康につながる可能性が指摘されている
  • 多数あるビフィズス菌の中でも「ビフィズス菌MCC1274」の脳や認知機能に与える効果が調査された
  • 研究の結果、摂取により脳の縮小が進行しづらくなるなど、脳の老化を防ぐ可能性が示された

 「ビフィズス菌」の摂取によって、脳の老化を予防する可能性があると示された。この研究は、2023年6月9日、森永乳業研究本部基礎研究所の小田巻俊孝氏(腸内フローラ研究室長)によって第23回日本抗加齢医学会総会で発表された。

※認知機能とは、記憶力、時間や空間の認識、日常的な仕事の遂行能力など、さまざまな能力含んでいる。認知機能が低下すると、軽度認知機能障害(MCI)と呼ばれる状態になり、日常生活に支障を来すほどに低下した状態が認知症とされる。

脳の老化と腸内細菌の間に関係あり

第23回日本抗加齢医学会総会。写真/編集部

第23回日本抗加齢医学会総会。写真/編集部

 ビフィズス菌は、ヨーグルトなどにも含まれる善玉菌としてよく知られている。私たちの腸内にはさまざまな腸内細菌が存在しているが、健康な人では特にビフィズス菌が多い傾向がある。

 これまでに森永乳業の研究グループは、多くのビフィズス菌を調査し、認知機能の改善効果がある菌を見つけようと取り組んできた。その中で、「ビフィズス菌MCC1274」という菌を選抜することに成功。続いて、この菌が腸内環境の改善、脳の老化予防、認知機能の改善にどのような効果があるのか、人を対象とした試験が進められてきた。今回、その研究結果が報告された。

 ビフィズス菌の摂取が認知機能の低下を防ぐかどうかは、前述の通り研究グループにより注目されてきた。さらに、研究グループは、MRI検査を用いて脳の大きさの変化を調べ、脳の老化と関連する脳の萎縮(いしゅく)の程度についても詳しく検討した。

※脳が縮むことを萎縮(いしゅく)と呼ぶ。認知症の特徴の一つとして脳の萎縮がある。

 対象としたのは、認知機能が低下し、脳の老化の兆候が見られる50歳~79歳の人たち。具体的には、対象となった80人をランダムに2つのグループに分け、一つのグループには毎日200億個のビフィズス菌が含まれるカプセルを摂取してもらい、もう一つのグループにはビフィズス菌を含まないプラセボのカプセルを摂取してもらった。そしてそれぞれのグループの脳の大きさと認知機能などの変化を比べた。

脳の萎縮(いしゅく)が見られなかった

 こうして確認されたのが、ビフィズス菌MCC1274を摂取したグループでは、脳の萎縮がなかったこと。具体的には、プラセボを摂取したグループでは脳が萎縮していたのに対して、ビフィズス菌MCC1274を摂取したグループでは脳が萎縮していなかった。

 なお、毎日200億というビフィズス菌は、通常の乳製品をわずかな飲むだけで得られる量。今回の研究結果が確認されれば、無理なく摂取を続けられる。ただし、すべてのビフィズス菌が同じ効果を持つわけではなく、一部のビフィズス菌には効果がないという。したがって、種類によって効果には差があることには注意する必要はあるようだ。

 ちなみに、脳の萎縮を防いだメカニズムとしては、ビフィズス菌の作り出した成分が腸から吸収されることで、体内の免疫系全体の改善、脳の炎症の抑制などにつながり、脳にとって好ましい効果をもたらした可能性が考えられている。

※炎症は、体の赤みや腫れ、痛みなどを引き起こす免疫反応の一種。異物を体から排除するために欠かせない反応であるもの、反応が強く出過ぎると、逆に体にダメージを与えるため、過剰な炎症は好ましくないと考えられている。

 動物実験の結果が常に人間でも同じようになるとは限らないことを考慮すると、実際に人間を対象にした比較試験で明確な差が現れたことは意外かもしれない。分かりやすく書き直してください。しかし、今回の結果から、ビフィズス菌の摂取が脳の老化防止対策として大きな注目を集める可能性はあるだろう。

第23回日本抗加齢医学会総会の会場となった東京国際フォーラム。写真/編集部

第23回日本抗加齢医学会総会の会場となった東京国際フォーラム。写真/編集部

参考文献

緑黄色野菜で若返りにつながる?腸内細菌と脳との関係が注目される

https://biyouhifuko.com/news/japan/1889/

Asaoka D, Xiao J, Takeda T, Yanagisawa N, Yamazaki T, Matsubara Y, Sugiyama H, Endo N, Higa M, Kasanuki K, Ichimiya Y, Koido S, Ohno K, Bernier F, Katsumata N, Nagahara A, Arai H, Ohkusa T, Sato N. Effect of Probiotic Bifidobacterium breve in Improving Cognitive Function and Preventing Brain Atrophy in Older Patients with Suspected Mild Cognitive Impairment: Results of a 24-Week Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. J Alzheimers Dis. 2022;88(1):75-95. doi: 10.3233/JAD-220148. PMID: 35570493; PMCID: PMC9277669.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35570493/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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