
組換えヒトコラーゲンは、小ジワや肌質改善、組織修復を支える材料として研究されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
美容医療や再生医療の材料として「組換えヒトコラーゲン」が注目されている。
動物組織から採取する従来型のコラーゲンとは異なり、ヒトコラーゲンの遺伝情報を基に、酵母や細菌、培養細胞などにタンパク質を作らせる技術だ。
韓国の研究者らは2026年8月、医学分野における組換えヒトコラーゲンの研究を整理したレビュー論文を美容皮膚科学誌で発表した。
人工的に設計できるコラーゲン

美容医療では、コラーゲンなどの注入材料を「充填」だけでなく、皮膚の組織環境を整える目的で使う研究も進んでいる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 組換えヒトコラーゲン→ヒトコラーゲンの遺伝情報を基に、酵母や細菌、培養細胞などを使って作るタンパク質。
- 従来型との違い→動物由来コラーゲンに比べて品質をそろえやすく、大量生産や用途に応じた構造の調整がしやすい。
- 製造上の課題→天然コラーゲン特有の三重らせん構造などを十分に再現するには、製造方法による技術的な課題が残る。
コラーゲンは、皮膚や腱、角膜などの細胞外マトリックスを構成する主要なタンパク質の一つ。これまで医療や美容で利用されてきたコラーゲンは、ウシやブタ、魚などの動物組織から得られるものが中心であった。
ただし、動物由来の材料には製造ロットによるばらつきや、免疫反応、病原体混入への懸念があるほか, 倫理や宗教上の理由から使用しにくい場合もある。また、天然組織から取り出す方法では、目的に応じて分子の構造を設計することにも限界がある。
こうした課題への一つのアプローチが組換えヒトコラーゲンだ。
組換えヒトコラーゲンは、酵母や細菌、培養細胞、植物などを使って、ヒトのコラーゲンに近いタンパク質を作る技術だ。動物組織から取り出す方法に比べて品質をそろえやすく、大量生産にも向く。さらに、用途に応じて構造や性質を調整できることも特徴となる。
一方、組換え技術で作れば、そのまま天然のヒトコラーゲンと同じものになるわけではない。コラーゲンには特徴的な三重らせん構造があり、その形成には複雑な過程が関わる。どの細胞を使って作るかによっては、天然のコラーゲンと同様の構造や性質を十分に再現することが難しい。研究チームは、こうした製造上の特徴を含め、これまでの研究を整理した。
美容では組織修復への応用に期待

組換えヒトコラーゲンは、美容医療で使われる注入材料の一つとして研究が進んでいる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 美容への応用→I型やIII型コラーゲンを使い、小ジワや光老化、傷跡、肌質改善などへの活用が研究されている。
- 組織修復→単にボリュームを補うだけでなく、細胞外マトリックスの形成や組織修復を支える材料として期待されている。
- 今後の課題→製品ごとに構造や性質が異なり、臨床研究も限られるため、美容効果や長期的な安全性のさらなる検証が必要。
レビューで整理された応用先は幅広く、美容分野では、皮膚に多く存在するI型やIII型コラーゲンを使い、小ジワや肌質改善などに役立てる研究が進んでいる。レビューではこのほか、傷の治療や、角膜、腱、口腔粘膜などへの応用も紹介されている。
皮膚に塗るタイプの組換えコラーゲンでは、皮膚表面の保湿や、バリア機能が低下した皮膚の回復を助けるといった用途が主に想定されている。
注入するタイプでは、特にIII型コラーゲンを用いた材料について、小ジワ、光老化、皮膚が薄くなる変化、傷跡、肌質改善などへの応用が研究されている。ヒアルロン酸製剤のようにボリュームを補う用途もあるが、それだけではなく、細胞や組織を支える材料として働き、細胞外マトリックスの形成や組織修復を支える可能性も研究されている。
中国では2023年、組換えヒト化III型コラーゲンを使った注入剤が承認された例も紹介されている。承認用途には、顔の真皮を充填してシワを改善する目的が含まれる。
ただし、「組換えヒトコラーゲン」と呼ばれる材料は一様ではない。完全長に近いヒトコラーゲンのほか、ヒトコラーゲンの一部の配列を利用したもの、コラーゲンに似たタンパク質、化学的に加工したもの、架橋したゲルなどがあり、それぞれ構造や性質が異なる。ある製品で得られた結果を、別の組換えコラーゲン製品にそのまま当てはめることはできない。
安全性についても、単に「ヒトコラーゲンに近いから安全」と判断することはできない。無菌性や毒性、製造工程で使った物質の残留などを確認する必要がある。注入剤では結節や肉芽腫、感染、血管障害、遅れて生じる炎症、材料の移動などにも注意が必要になる。架橋した製品では、残留する架橋剤や長期的な組織反応の評価も欠かせない。
今回のレビューから見えてくるのは、組換えヒトコラーゲンが一つの完成された製品カテゴリーではなく、さまざまな構造や製造法を含む材料群だという点だ。美容医療への応用は興味深いものの、現在の臨床研究には、規模が小さく、観察期間が短いものも多く、結果は個別の製品に左右される。
一方、細胞外マトリックスを補う材料としては、ヒフコNEWSでも紹介した「hADM(人由来無細胞真皮マトリクス)」のような別のアプローチもある。hADMは人の皮膚から細胞を取り除き、コラーゲンなどを含む細胞外マトリックスを残した材料で、組換えヒトコラーゲンとは由来や製造法が異なる。美容医療では、こうしたさまざまな材料を使って組織の環境を整える研究が進んでいる。
こうした製品は、新たな美容材料として期待される一方、実際の効果や長期的な安全性を見極めるには、さらに研究を重ねる必要がある。
参考文献
K.-H. Yi, J. K. Song, and H. Kim, “ Recombinant Human Collagen in Clinical Medicine,” Journal of Cosmetic Dermatology 25, no. 8 (2026): e71092.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jocd.71092
「hADM」は日本でも注目される?人由来の注入製剤とは、感染リスクなど製品の安全性には課題も、韓国医師がAMWC Japan 2025で発表
https://biyouhifuko.com/news/japan/15303/
