肝斑に対して、メラニンそのものではなく、皮膚の深い部分にある真皮と表皮の相互作用に着目した超音波治療が有効である可能性が示された。
横浜市のHills Grace Clinicの奥健太郎氏は、Sofwaveを用いた超音波施術を実施し、研究成果を2026年4月、美容皮膚科学誌で報告した。
メラニンだけでなく「真皮の老化」に着目

Sofwaveの施術風景。(写真/Sofwave medicalのYoutubeチャンネル)
- 研究の着眼点→肝斑をメラニンだけの問題ではなく、老化した線維芽細胞など真皮の変化も関わる可能性があると考えた。
- 研究対象→肝斑のある40~65歳の女性20人に、Sofwaveによる超音波施術を顔全体へ1回実施した。
- 評価方法→治療前と6カ月後の画像を比較し、肝斑の広がりや濃さを示すmMASIスコアで効果を評価した。
肝斑は、頬や額、鼻の周囲などに左右対称に現れやすい色素沈着だ。紫外線、ホルモン、遺伝的要因など複数の要素が関係するため、治療しても再び目立つことがあり、治療の難しい色素性疾患の一つとなっている。従来の治療では、メラニンを作る働きを抑えたり、蓄積したメラニンを減らしたりすることが主な標的となってきた。
一方で、肝斑の背景には表皮だけでなく、その下にある真皮の変化も関係すると考えられるようになった。特に注目されているのが「線維芽細胞」。線維芽細胞はコラーゲンなどを作り、皮膚の構造を保つ細胞だが、加齢や紫外線などによって老化すると、周囲の細胞に影響を与える物質を分泌する。こうした変化がメラノサイトなどに作用し、色素沈着を長引かせる可能性が指摘されている。
そこで今回の研究では、メラニンを直接除去するのではなく、超音波によって真皮に熱を加え、真皮と表皮の相互作用を整えるという考え方が検討された。
対象となったのは、肝斑と診断された40~65歳の女性20人で、平均年齢は50.5歳。研究は対照群を設けない前向き臨床試験として行われた。参加者は顔全体に1回だけ平行超音波ビームによる施術を受けた。使用した機器はSofwave(ソフウェブ)で、7本の超音波ビームによって皮膚表面から約1.5mmの深さを中心に熱を加える。額では1ショット3.0ジュール、頬、こめかみ、あご下では3.2ジュールに設定された。皮膚表面を守るため冷却機能も併用された。
なお、施術に用いられた「サーマル・スレッド・テクニック(Thermal-Thread Technique)」では、皮膚の自然な張力線に対して垂直になるよう超音波を連続して照射する。
治療前と6カ月後に高解像度の画像を撮影し、2人の独立した評価者が、肝斑の広がりと濃さを数値化する「修正版肝斑面積・重症度指数(modified Melasma Area and Severity Index、mMASI)」を用いて変化を評価した。
肝斑スコアは4.63から1.69へ、平均64%改善

Sofwaveを用いた超音波施術では、皮膚表面から約1.5mmの深さに熱を加え、真皮と表皮の相互作用に働きかける可能性が検討された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

肝斑は頬や額などに左右対称に現れやすい色素沈着で、紫外線やホルモン、皮膚の加齢変化など複数の要因が関係すると考えられている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 肝斑の改善→mMASIスコアは平均4.63から1.69へ低下し、6カ月後の平均改善率は64%だった。
- 安全性→熱傷や瘢痕、色素変化などの有害事象は確認されず、治療後のダウンタイムも認められなかった。
- 研究の限界→対象は20人と少なく対照群もないため、効果の確立にはより大規模で長期間の研究が必要。
その結果、治療前のmMASIスコアは平均4.63だったが、6カ月後には1.69まで低下した。平均改善率は64%で、統計学的にも有意な変化だった。
肌の色のタイプ別に見ると、日光への皮膚の反応性を示すフィッツパトリック肌タイプ(Fitzpatrick Skin Type)のIIでは59.9%、IIIでは68.9%、IVでは52.7%の改善となった。タイプによる改善率の差は統計学的には有意ではなかった。
ただし、タイプIVは2人しか含まれておらず、肌タイプによる効果の違いを判断するには症例数が限られている。
安全性についても目立った問題は確認されなかった。治療時の痛みは5段階評価で平均2.95と軽度から中等度で、研究期間中には熱傷、瘢痕、色素変化など、治療に関連する有害事象は確認されなかった。また、治療後のダウンタイムも認められなかった。
また、20人のうち7人が治療に「非常に満足」、13人が「満足」と回答した。
今回の結果で注目されるのは、1回の施術後、6カ月という時点で肝斑の明確な改善が確認された点だ。これまでの肝斑治療がメラニンやメラノサイトを主な標的としてきたのに対して、真皮と表皮の相互作用に注目するという新たな治療の方向性を示した研究といえる。
もっとも、この研究は20人という小規模な試験で、参加者は全員女性であり、比較対象となる無治療群や別の治療を受けた群も設定されていない。そのため、今回観察された改善を超音波治療だけによる効果と断定することはできない。また、研究では肝斑の画像と臨床スコアを評価しており、線維芽細胞の老化が実際に改善したかどうかを組織検査などで直接確認したわけではない。
研究者も、より多くの患者や重症例を対象とした研究、複数回治療の検証、さらに長期間の追跡が必要としている。特に肝斑は再発しやすいため、効果がどの程度長く続くのかを確認することが重要になる。
肝斑を単なる「メラニンの増加」としてではなく、加齢に伴う真皮の変化を含めた皮膚全体の問題として捉える考え方は、今後の治療法を広げる可能性がある。
参考文献
Oku K. Treatment of Melasma Targeting Dermal-Epidermal Interactions Utilizing High-Intensity, High-Frequency Parallel Ultrasound Beam in Asian Skin. J Cosmet Dermatol. 2026 Apr;25(4):e70820. doi: 10.1111/jocd.70820. PMID: 41881668; PMCID: PMC13017079.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41881668/
