韓国美容医療の現場では、いま何が起きているのか。2026年の動きを見ると、新しい医療機器や製剤の開発が続く一方、韓国系クリニックの日本進出、医師教育の国際化など、美容医療を取り巻く環境そのものが大きく動いている。昨年に続き、韓国カイロス(KAIROS)院長の林鍾学(イム・ジョンハク)氏に話を聞いた。

KAIROS(カイロス)院長の林鐘学(イム・ジョンハク)氏。(写真/編集部)
林氏は、韓国では美容医療に使われる医療機器やレーザー、製剤の開発が引き続き活発だと話す。
2025年の取材では、かつて韓国が日本から美容医療を学ぶ立場にあった一方、2000年代以降は美容医療機器や製剤の領域で存在感を高めてきたという経緯が語られていた。
その背景の一つに、市場環境の違いがある。
韓国企業にとって、国内市場だけで成長することは難しく、早い段階から海外展開を意識する必要がある。海外市場で使用経験を積み、その結果を基に改良を進め、韓国国内にも還元する。そうした循環が、機器や製剤の開発速度を高めてきたと林氏は見る。
韓国美容医療の強みは、新しいものを早く取り入れ、国内外での使用経験によって、さらに次の製品や治療の進化につながるところだ。
一方、日本では安全性を重視する文化や制度が強く、新しい手技や機器が一気に広がりにくい面がある。林氏は日本の若手医師の教育にも関わっているが、日韓には新しい治療を受け入れる速度に違いがあると感じている。
脂肪治療は「減らして引き締める」

韓国市街。(写真/Adobe Stock)
最近の治療の流れとして林氏が挙げるのが、脂肪を減らすことと、その後の皮膚の引き締めを一体として考える治療だ。
その例として紹介したのが、韓国のChungwoo Medicalが開発した高周波機器「APOLEX Tite(アポレックス・タイト)」だった。林氏によると、皮下に高周波エネルギーを加え、脂肪への作用と皮膚側のタイトニングを狙う機器だという。
「脂肪をたくさん取ると、どうしてもたるみが問題になります。そこを引き締めることまで考える機械です」
林氏が注目するのは、脂肪を減らすだけでなく、その後の引き締めまで考える点だ。
日本では、自然に引き締まった印象や小顔感を求める人も多く、こうした治療は日本人にも合うのではないかと林氏は見る。
林氏によると、この機器はコロンビアやブラジルなどの南米諸国に加え、米国でも人気があるという。脂肪吸引と組み合わせ、ボディーラインを作る治療で使われている。脂肪がある部位であれば、顔だけでなく身体にも応用できる。
脂肪治療では、「取る」「減らす」だけでなく、輪郭や皮膚まで意識する考え方が広がっている。こうした機器の登場からも、美容医療機器の開発が次々と進む韓国のスピード感が見えてくる。
治療の選択肢が広がれば、それだけ医師に求められる判断も複雑になる。
林氏が繰り返し強調するのは、機器や注入技術を学ぶ前に、医師としての基礎が必要だという点だ。
切開、縫合、デザイン、解剖学、合併症への対応。美容医療では見た目の変化が注目されやすいが、安全に治療を行うためには、こうした基礎的な知識と技術が欠かせない。
外科系の専門研修を受け、基本的な手術手技を習得した医師が美容医療に入れば、それまで培った技術を生かすこともできる。一方、現在の美容医療市場では、外科手術よりもレーザー、RF、ヒアルロン酸、ボツリヌストキシン製剤などの非外科的治療が大きな比重を占めるようになっている。
美容医療に参入する医師が増える中、どのような教育を受け、何を基礎として身につけるべきかという問題は、日韓共通の課題になりつつある。
韓国では承認品の使用が原則

江南区の一帯には美容医院が密集する。(写真/編集部)
韓国美容医療は、新しい治療を急速に取り入れるイメージを持たれやすい。しかし林氏は、制度面ではむしろ明確な制約もあると説明する。
その一つが、医薬品や医療機器の承認制度だ。
林氏によると、韓国では、原則として国内で承認された薬剤や医療機器を用いることが求められる。
「韓国では、国で承認されたものを使わないといけません。日本のように、医師の個人輸入で未承認のものを使う形とは違います」
日本の自由診療では、医師の責任の下で未承認医薬品や未承認医療機器が個人輸入され、使用されることがある。
韓国美容医療の発展は、自由度の高さだけによるものではない。新しい製品を開発しながら、その一方で承認制度の枠組みの中で治療を行うという側面がある。
施術を誰が行うかという点にも、日韓の違いがあると林氏は話す。
韓国では、注射やレーザーなどの美容医療施術は基本的に医師が担っているという。
「韓国では、医師がすべてやっています。日本のように看護師が注射をしたり、レーザーを打ったりすることはできません」
林氏は、医師が直接施術を行う現在の仕組みを、安全性の面から評価している。
一方で韓国でも、医師以外の職種が一部の美容医療行為を担うことについて議論があるという。背景には、急速な市場拡大や価格競争、クリニック経営の効率化がある。
施術を効率化できる可能性がある一方、医師の関与が薄くなれば安全性や医療の質に影響する可能性もある。誰がどこまで施術を担うのかは、韓国でも今後の論点になりそうだ。
また韓国では、一定の医療広告を対象とした事前審査の仕組みも設けられている。
韓国美容医療は、新しい機器や治療の導入が速い一方、承認や広告については一定の規制が設けられている。新しい治療が広がりやすいことと、規制が緩いことは同じではない。
韓国系クリニックが日本に進出する理由

美容医療のクリニックが多く入居する江南区のビル。(写真/編集部)
こうした韓国美容医療の変化は、韓国内だけで完結していない。
最近では、韓国で成長したネットワーク型の美容クリニックが日本に進出する動きも見られる。
林氏によると、こうしたクリニックの多くは、外科手術よりもレーザー、RF、ヒアルロン酸、ボツリヌストキシン製剤、スキンブースターなどの非外科的治療を中心に展開している。
機器や製剤を効率的に使い、多くの来院者に比較的低価格で施術を提供する。韓国国内で広がってきた非外科的治療中心のビジネスモデルを、日本市場にも展開する動きといえる。
「韓国では価格がかなり安くなってしまいました。日本はまだ美容医療の価格が比較的安定しています。人口も多いので、韓国側から見ると日本は魅力があると思います」
韓国では美容医療施設間の競争が激しく、価格競争も進んでいる。そうした環境の中で、日本は新しい市場として見られているという。
韓国系クリニックの日本進出がさらに進めば、日本国内でも非外科的治療の価格や提供方法に影響が出る可能性がある。
韓国の美容医療では国際化も進んでいる。林氏自身、会長としてAFAS(Asia Forum for Aesthetic Surgery and Medicine、アジア国際美容医学フォーラム)を運営し、韓国外からも医師を集めた講演会を定期的に開催している。
学会に限らず、韓国には、日本、中国、フィリピン、インド、インドネシア、台湾、香港、ロシア、南米など、さまざまな国や地域から医師が美容医療を学びに来ているという。目、鼻、輪郭、肌の質感など、どの部位を重視するかには地域差がある。美容の理想像も、美的感覚、文化、経済状況、SNSを通じた情報流通によって変わる。
中国など他国で流行した美容医療の手法やトレンドがSNSなども通して日本にも伝わる。美容医療のトレンドは一方向に流れるものではなく、国境を越えて相互に影響するようになっている。韓国は現在、そうした人や技術が行き交う拠点の一つになっている。
もっとも林氏は、今後は自然な美しさがより重視されるのではないかと見る。「10人が見て、10人ともきれいだと思う。でも、何かやったようには見えない。そういう自然さが大事だと思います」。日本でも美容医療の分野で「ナチュラル」ということがよく言われるが、今後は過度な変化よりも自然さを重視する方向が広がる可能性がある。
ヒフコNEWSでは、林氏から韓国美容医療の新しい動きについての紹介を受け、今回、複数のクリニックやコスメ企業を取材した。目周りの美容医療や婦人科形成など、韓国美容医療の専門領域がさらに細分化していることが見えてきた。引き続き、韓国美容医療の今を見ていく。
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