ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

感染症診断からK-Beautyへ、韓国INSOLがコスメ「NINOVA」を開発 乳酸菌とクロレラの発酵エキスに着目 韓国美容医療の現場2026⑥ 会長のイ・ヤンボク氏、CEOヘレナ・ユ氏、研究開発H.クリスチャン・ホン氏、チョン・ウンス氏

カレンダー2026.8.23 フォルダー連載・コラム

 韓国美容医療の広がりは、クリニックの中だけにとどまらない。レーザーや注入治療などの施術と並び、日常的に肌をケアする化粧品やホームケア製品も大きな市場を形成している。今回訪れたINSOL(Innovative Medical Solution)は、もともと感染症診断や医療機器を手がけてきた企業だ。約20年にわたって培ってきた医療・バイオ分野の経験を背景に、近年は化粧品事業へ領域を広げる。クロレラや乳酸菌、PDRN、ペプチドなどを取り入れ、「肌のバランス」を掲げる化粧品をどう作ろうとしているのか。イ・ヤンボク(Yang-Bok Lee)会長、ヘレナ・ユ(Helena “Eunseo” Yu)最高経営責任者(CEO)、研究開発を担うH.クリスチャン・ホン(H. Christian Hong)氏、チョン・ウンス(Eun-Soo Jeong)氏に話を聞いた。

取材に応じるINSOL会長のイ・ヤンボク氏。

INSOL会長のイ・ヤンボク氏。医療機器や診断技術で培った経験を、美容・化粧品分野にも広げている。(撮影:編集部)

 INSOLは、もともと化粧品会社として始まった企業ではない。感染症診断関連製品や医療機器を中心に事業を展開してきた。現在の企業情報でも医療機器関連企業として登録され、心電図モニタリング機器「REFIT PATCH U8」やCOVID-19、インフルエンザの抗原検査製品などが紹介されている。

 会社の設立は2004年。20年以上にわたって医療関連分野に取り組んできた。感染症診断や唾液を用いた検査技術などを扱い、医療機器や診断に関する研究開発を積み重ねてきたという。その背景には、経営陣自身の研究開発経験もある。イ・ヤンボク会長によると、米国では大手製薬企業の研究開発に携わった経験があり、その経験も生かしながら医療や診断技術を中心に事業を広げてきたという。INSOLでは、医療機器の販売だけでなく、自社での開発にも取り組んできた。

 そのINSOLが、新たな事業として力を入れているのが化粧品だ。

 イ会長が説明したのは、会社全体としての事業拡大の考え方だった。医療機器だけに事業を限定するのではなく、これまで蓄積してきた医療・バイオ分野の技術を別の市場にも広げ、新たな柱を作る。その候補として選ばれた一つが化粧品だったという。

 注目したいのは、こうした化粧品への参入が、もともとの化粧品会社だけに限られない点だ。韓国では、美容医療、医療機器、バイオ、ヘルスケアなどの周辺分野で技術を持つ企業も、自社の研究開発力を生かして化粧品事業へ参入している。INSOLもその一例になる。韓国化粧品の輸出額は2025年に114億ドルに達し、世界第2位の化粧品輸出国となった。K-Beautyの市場には、大手化粧品企業や有名ブランドに加え、異なる分野から新しい企業が参入し、成分や機能性、研究背景を競い合う層の厚さも見える。

 今回の取材を含め韓国美容医療の現場を見ていると、医療と美容の距離の近さに気が付く。レーザーや医療機器を開発する企業が美容分野へ入り、バイオ分野で研究されてきた成分や技術が化粧品へ応用され、クリニックでの施術とホームケアが連続して考えられる。INSOLも、感染症診断や医療機器を手がけてきた企業が、その研究開発の延長線上で化粧品へ進んだ例になる。医療分野で培った技術を、美容やスキンケアという別の領域へ展開する。こうした医療と美容の近さも、韓国美容産業の強さを支える一つの要素になっている。

医療機器メーカーの研究力を化粧品へ

ノートパソコンを前に。INSOL最高経営責任者のヘレナ・ユ氏。

INSOL最高経営責任者(CEO)のヘレナ・ユ氏。医療機器企業としての研究開発経験を生かし、化粧品ブランド「NINOVA」を展開する。(撮影:INSOL)

 化粧品事業を実際に進めているのがヘレナ・ユ最高経営責任者(CEO)だ。INSOLは、医療機器や診断分野で約20年の経験を積んだ後、新たな事業として化粧品ブランド「NINOVA」を立ち上げた。現在はスキンケア製品を複数展開し、「乳酸桿菌/クロレラ発酵エキス液」を主要な成分の一つに位置づけている。

 ユ氏は、既存の化粧品会社と同じ方法で競争するのではなく、医療機器や感染症診断に取り組んできた企業だからこそ、研究開発や成分の科学的な背景を製品づくりに生かしたいと話す。新しい成分を取り入れるだけではなく、肌の状態を長期的に捉え、「肌のバランス」や健やかな状態を保つことをブランドの基本的な考え方に置いているという。

 こうした方向性は、美容医療や化粧品研究の潮流とも重なる。美容領域では、見た目を一時的に変えるだけではなく、皮膚の機能をできるだけ長く良好に保つ「スキンロンジェビティ」への関心が高まっている。その中で、皮膚に存在する微生物との関係を捉えるマイクロバイオームや、植物や藻類など自然由来素材に含まれる成分をスキンケアへ生かす研究も進んでいる。こうした研究は「フィトサイエンス」と呼ばれることもある。

 INSOLの特徴は、こうしたテーマを単なる商品訴求に使うだけではなく、医療やバイオ分野で研究を重ねてきた人材が、その科学的な背景から原料や処方を検討している点にある。

白衣を着て取材に応じるINSOL最高科学責任者のH.クリスチャン・ホン氏。

INSOL最高科学責任者(CSO)のH.クリスチャン・ホン氏。感染症や免疫、微生物に関する研究経験を化粧品開発にも生かす。(撮影:編集部)

 最高科学責任者(CSO)のH.クリスチャン・ホン(H. Christian Hong)氏は、医師としてのバックグラウンドを持つ。これまで感染症や免疫、微生物に関わる研究に携わってきたという。

会議室で取材に応じるINSOL研究開発担当のチョン・ウンス氏。

INSOLで研究開発を担うチョン・ウンス氏。高分子材料などの研究経験を化粧品開発に生かしている。(撮影:編集部)

 一方、研究開発センターを率いるチョン・ウンス(Eun-Soo Jeong)氏は、取材によると高分子材料などの研究を専門とし、韓国やドイツで長く研究開発に携わってきたという。異なる分野で経験を積んだ研究者を社内に抱え、その専門性を化粧品開発に生かしている。

 その専門性が交わる研究テーマの一つが、乳酸菌とクロレラだ。

 乳酸菌は食品のイメージが強いが、2026年現在、皮膚マイクロバイオームとの関係から化粧品分野でも研究が進んでいる。化粧品では、生きた菌そのものだけでなく、発酵物や菌体由来成分、ポストバイオティクスなどを利用し、皮膚バリアや肌の状態との関係を調べる研究が行われている。一方のクロレラは、淡水に生息する微細藻類だ。日本ではサプリメント原料としても広く知られている。藻類はタンパク質や色素、多糖類など多様な成分を含み、植物や藻類に由来する成分をスキンケアへ生かそうとするフィトサイエンスの流れが注目されている。

 こうした研究潮流を、INSOLでは実際の原料開発につなげている。乳酸菌の一種である乳酸桿菌(Lactobacillus reuteri)とクロレラ(Chlorella vulgaris)を組み合わせて発酵させ、その抽出物を化粧品原料として利用する取り組みだ。クロレラを含む培地で乳酸菌を培養し、発酵後に得られる「乳酸桿菌/クロレラ発酵エキス液」を化粧品原料として利用している。

 INSOLの取り組みは、既に製品化につながっている。NINOVAでは当初、4種類の化粧品を展開し、クレンジングフォーム、シートマスクと首用クリームを組み合わせたセット製品、PDRNやペプチドなどを配合した製品、日常使いのクリームをそろえた。さらに、スージングクリーム、ペプチドクリーム、サンクリーム、シャンプーなど、製品ラインナップをさらに拡充している。

医療と美容の相乗効果を目指す

NINOVAのフェイス&ネック用マスクパックを紹介するウェブサイトの画面。

INSOLが展開する化粧品ブランド「NINOVA」のフェイス&ネック用マスクパック。(出典:INSOL)

 イ会長が描くのは、医療機器で培った技術と無関係に化粧品へ移るのではなく、医療と美容の双方を事業として持ちながら、相乗効果を生かしていくことだ。

 その構想の実行を担うユCEOが化粧品事業を進め、Hong氏やJeong氏ら研究者が原料や処方の開発に関わる。韓国の化粧品市場は新しいブランドや製品が次々に登場する競争の激しい市場だが、INSOLは流行だけを追うのではなく、医療機器やバイオ分野で培った研究開発の経験を土台に製品を増やそうとしている。

 韓国美容医療を見ていると、クリニックでの治療と日常のスキンケアとの距離は近い。レーザーやRF、注入治療を受けた後、自宅では化粧品を使って肌をケアする。クリニックで扱われる製品もあれば、一般に販売される化粧品もあり、その間には「メディカルコスメ」と呼ばれる領域も存在する。

 INSOLが現在展開するNINOVAは一般向けの化粧品だ。医療機器やバイオ分野で培った研究開発の経験を、成分研究や製品開発へつなげている点は、医療、美容、化粧品の境界が近づく韓国の動きを考える一例になる。

記事一覧

  • 韓国美容医療の「外へ向かう力」、日本への進出も加速? 韓国美容医療の現場2026年① 韓国カイロス(KAIROS)院長 林鍾学(イム・ジョンハク)氏@ヒフコNEWS
    https://biyouhifuko.com/news/column/19118/
  • 「黒目を大きく見せる」白目に約1mm幅のリング状インプラント カラーコンタクトの合併症をきっかけに開発 韓国美容医療の現場2026② BEAUEYE VISION イ・ドンホ氏@ヒフコNEWS
    https://biyouhifuko.com/news/column/19135/
  • ヒト由来コラーゲンを膣フィラーに、韓国で広がる婦人科形成 機能と美容の両面からアプローチ 韓国美容医療の現場2026③ I AM QUEEN WOMEN’S CLINIC イ・チャンファン氏@ヒフコNEWS
    https://biyouhifuko.com/news/column/19154/
  • ブラジルで学んだ形成外科医が見た韓国美容医療30年 手術と30~40台の機器をどう使い分けるか 韓国美容医療の現場2026④ Bonita Clinic チョン・グァンソプ氏@ヒフコNEWS
    https://biyouhifuko.com/news/column/19172/
  • 脂肪由来の「SVF」を美容とアンチエイジングに 韓国でも広がる再生医療 韓国美容医療の現場2026⑤ 清潭ジュネックスクリニック(Chungdam Jeunex Clinic) 成箕秀(ソン・ギス)氏@ヒフコNEWS
    https://biyouhifuko.com/news/column/19184/
  • 感染症診断からK-Beautyへ、韓国INSOLがコスメ「NINOVA」を開発 乳酸菌とクロレラの発酵エキスに着目 韓国美容医療の現場2026⑥ 会長のイ・ヤンボク氏、CEOヘレナ・ユ氏、研究開発H.クリスチャン・ホン氏、チョン・ウンス氏@ヒフコNEWS
    https://biyouhifuko.com/news/column/19197/

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。