韓国美容医療は、海外の技術を取り入れながら独自の発展を遂げてきた。今回訪れたBonita Clinic代表院長のチョン・グァンソプ氏は、ブラジルで医学と形成外科を学び、1995年に韓国でクリニックを開院した。現在は手術だけでなく、レーザーやエネルギーベースデバイス、スキンブースターなどを組み合わせて治療している。韓国美容医療が大きく変化した30年間を、現場の医師はどう見てきたのか。
チョン・グァンソプ氏は、ブラジルで医学部を卒業し、一般外科や形成外科の研修を受けた。ブラジルの形成外科専門医試験には首席で合格し、米国テネシー州立大学での研修経験も持つ。その後は韓国美容外科学会(Korean Society of Aesthetic Surgery、KSAS)会長を務めるなど、韓国の美容外科分野でも学会活動に長く関わってきた。
ブラジルは美容外科が盛んな国として知られ、顔だけでなく、乳房や脂肪吸引、ボディーラインを整える手術など、身体の美容外科も広く行われてきた。チョン氏は、こうした環境で形成外科を学べたことが、その後の診療にも大きく影響したと話す。
韓国に戻り、Bonita Clinicを開院したのは1995年。「ボニータはポルトガル語で美しいという意味。それが大事だと考えてきました」とチョン氏。以来、名称を変えず診療を続けてきた。
「当時の韓国では、現在の江南のように美容クリニックが集中していたわけではありません」とチョン氏は振り返る。チョン氏は、ブラジルで学んだ形成外科の基礎を生かしながら、韓国の来院者に合わせて治療を調整してきた。当時と現在では街の様子も、クリニックの数も大きく変わった。現在の江南には美容医療施設が数多く集積し、国内だけでなく海外からも人が訪れる。クリニック同士の競争も激しく、SNSやウェブを使った情報発信の重要性も高まった。「この地域は毎日のように変わっています。30年前とは全く違います」(チョン氏)。
30~40台の機器を備える理由

Bonita Clinicの施術室。レーザーやエネルギーベースデバイスなどを症状に応じて使い分ける。(撮影:編集部)
Bonitaの診療で特徴的なのは、形成外科医でありながら、早い時期から非外科治療にも取り組んできたことだ。開業当初からレーザーやピーリングなどを取り入れてきた。日本美容外科学会誌にも、2008年にはNd:YAGレーザーによる顔の若返り、2014年には高周波を併用した顔の輪郭形成について、チョン氏は論文発表している。
Bonitaには、多数のレーザーやエネルギーベースデバイスが置かれている。チョン氏は「30~40台ほどになる」と話す。筆者が院内を見学した際にも、多数の機器が複数の部屋に分かれて配置されていた。機器を増やすこと自体が目的ではない。一つの機器ですべての悩みに対応するのではなく、色素、赤み、瘢痕、肌質、たるみなど、症状に応じて適した機器を選ぶ。「来院者の問題を解決するために必要だと思えば機器を導入してきた」。チョン氏の考え方は、機器を中心に治療を決めるのではなく、最初に来院者の問題があり、その解決策として機器を選ぶというもの。必要ならレーザーを使い、注入治療を組み合わせ、それでも難しければ手術を行う。
美容医療の分野では、機器の名前やブランドが入り口となり、それを使った施術を受けたいと考えてクリニックを訪れることもあり得る。それに対して、チョン氏が言うように、課題に合わせた治療内容を選ぶのは本来の形だろう。機器を多く持つことが、治療の選択肢を増やすことにつながる。
その上でレーザーやエネルギーベースデバイスは、購入すれば誰でも同じ治療ができるものではないとチョン氏は考える。同じ機器でも、どのような状態に、どの程度の出力で、どのように照射するかによって結果は変わる。チョン氏は、多くの症例を経験しながら機器の特徴を理解することが重要だと話す。
Bonitaでは、非外科治療では顔の若返りも大きな柱になっているという。色素や肌質にはレーザー、たるみにはエネルギーベースデバイス、さらに必要に応じてスキンブースターなどを組み合わせる。注入製剤の種類も増えた。PN(ポリヌクレオチド)・PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)系製剤、ヒアルロン酸系製剤、PRP(多血小板血漿)、コラーゲン製剤など、目的の異なる製剤が登場している。チョン氏は、新しい製品が増える中でも、一つの製品を全員に使うのではなく、その人の肌の状態や目的に合わせて選ぶことを重視している。
ここも、レーザーと同じ考え方だ。「何が新しいか」よりも、「誰に何を使うか」が重要になる。
小さな色素病変を短時間で治療する場合もあれば、顔全体の若返りでは複数の機器や治療を組み合わせる場合もある。現在の美容医療では「何の機械を使ったか」だけではなく、それらをどう選び、どう組み合わせるかも医師の技術の一部になる。
クリニック内の治療だけで終わらないことも、現在の美容医療の変化だという。チョン氏は、施術後のホームケアも肌の状態を維持するために重要だと考えている。スキンケア製品の選択肢も以前より増えた。クリニックでレーザーや注入を行い、その後は状態に合わせたホームケアを続ける。
美容医療が、1回の治療だけで完結するものから、日常のスキンケアまで含めて考える方向へ広がっていることが分かる。
医療ツーリズムは「何日滞在できるか」を考える

Bonita Clinicが入る韓国・ソウルのビル外観。(撮影:編集部)
Bonitaには海外からの来院者も訪れる。
外国人を治療する際に、チョン氏が確認することの一つが韓国での滞在期間だ。レーザーや手術にはダウンタイムを伴うものがある。赤みや腫れ、皮むけなどが続く可能性がある治療では、帰国日まで考えて選択する必要がある。滞在が短ければ回復の早い治療を中心にし、時間に余裕があれば回復に時間を要する治療も検討する。
長く美容医療に関わってきたチョン氏に、医師にとって何が重要なのかを尋ねると、「技術への投資」を挙げた。手術をするなら手術の技術を磨き続け、レーザーを扱うなら機器について学ぶ。必要な設備があれば、クリニックにも投資する。「良い医師であるためには、技術に投資すること。そしてクリニックにも投資することです」。
ブラジルで形成外科を学び、韓国で30年以上診療を続けてきたチョン氏。その歩みは、海外で得た技術を韓国の来院者に合わせながら、手術と非外科治療の両方を取り入れてきた韓国美容医療の変化とも重なっている。
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