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ヒト由来コラーゲンを膣フィラーに、韓国で広がる婦人科形成 機能と美容の両面からアプローチ 韓国美容医療の現場2026③ I AM QUEEN WOMEN’S CLINIC イ・チャンファン氏

カレンダー2026.8.20 フォルダー連載・コラム

 韓国美容医療では、顔や身体だけでなく、婦人科形成の領域でも治療の選択肢が広がっている。膣縮小などの外科手術に加え、ヒアルロン酸やヒト由来コラーゲンを使った膣フィラーなど、手術以外の治療も行われているという。今回訪れたのは、ソウル江南のI AM QUEEN WOMEN’S CLINIC。代表院長のイ・チャンファン氏は産科婦人科専門医で、婦人科形成を長く手がけ、関連学会の学術活動にも携わってきた。韓国ではどのような治療が行われ、なぜ関心が高まっているのか。

I AM QUEEN WOMEN'S CLINIC代表院長のイ・チャンファン氏が、診察室で取材に応じている。

婦人科形成を手がけるI AM QUEEN WOMEN’S CLINIC代表院長のイ・チャンファン氏。(撮影:編集部)

 イ氏は、婦人科形成について、大きく二つの方向から考えることができると説明する。

 一つは膣内部を中心に扱う治療で、もう一つは外から見える外陰部を対象とする治療だ。さらに目的で分けると、性的な機能や満足感に関わる治療と、外見を整える美容的な治療がある。

 婦人科形成という言葉からは、見た目を整える手術だけを想像しやすい。しかし実際には、膣のゆるみなど機能に関する悩みと、外陰部の形や大きさなど美容面の悩みが重なることもある。

 治療法も一つではない。組織を切開して整える手術もあれば、フィラーなどを注入してボリュームを補う方法もある。どの治療を選ぶかは、悩みの内容や希望する変化、身体への負担をどこまで受け入れるかによって変わってくる。

膣フィラーに「ヒト由来コラーゲン」

イ・チャンファン氏が、膣フィラーに用いる製剤や器具について説明している手元。

膣フィラーに使う製剤について説明するイ・チャンファン氏。韓国ではヒアルロン酸のほか、ヒト由来コラーゲンを用いる選択肢もあるという。(撮影:編集部)

 婦人科形成の中で、重要な施術の一つが膣縮小手術。膣の内部を狭くする手術だが、単純に組織を切除すればよいわけではない。膣周囲の構造を理解しながら、形や機能を調整する必要がある。イ氏は、婦人科形成は外見にも機能にも配慮すべき領域であり、解剖学的な理解が治療の基本になると強調する。

 婦人科形成には興味があっても、手術には抵抗を感じる人もいる。そうした人にとって、注入治療は一つの選択肢になる。外科手術と比べると、フィラー注入は手軽な治療に見えるが、施術そのものが単純というわけではない。

 イ氏は、注入治療で問題につながりやすいのも、施術する部位の解剖を十分に理解しないまま行う場合だと説明した。

 膣や外陰部には血管や神経があり、どこに何を注入するか、どのような影響が生じ得るかについて正しく理解する必要がある。「皮膚の治療を皮膚専門医に受けるのと同じように、膣の治療はその構造を理解している産科婦人科専門医が行うことが大切です」(イ氏)。注入治療だから手術より安全、という単純な話ではない。方法が違えば、注意すべき点も変わる。

 韓国で使われている膣フィラーの選択肢の一つに、ヒト由来コラーゲンがある。

 膣へのフィラーといえば、日本ではヒアルロン酸の注入について医師の間で議論されているのを聞くことがよくある。一方、I AM QUEEN WOMEN’S CLINICでは、ヒアルロン酸とは別に、ヒト由来の同種真皮コラーゲンを使うことがあるという。

 イ氏によると、製剤は粉末状になっており、使用時に調製して注入する。顔に使われる一般的なフィラーをそのまま応用するというより、膣フィラーとして使用されている製剤だとイ氏は説明する。筆者にとっても、ヒト由来コラーゲンをこの領域で使うという話は印象的だった。

 イ氏は、以前には別の由来のコラーゲンも使われていたが、現在はヒト由来の製剤も選ばれるようになっていると説明する。イ氏によると、ヒトの真皮に由来するコラーゲンを原料とした製剤だという。

 ヒト由来コラーゲンの特徴の一つは、人の組織になじみやすいことが期待される点がある。もともと人の身体に存在するコラーゲンに近く、動物由来のコラーゲンと比べて免疫反応が起こりにくいと考えられている。

 ヒト由来コラーゲンは日本ではまだ一般的とはいえず、ヒト由来という点に抵抗感を持つ人もいるかもしれない。この点、イ氏は、ヒト由来であることについて受け入れられているという見方を示した。

韓国で婦人科形成への関心が高まった背景

I AM QUEEN WOMEN'S CLINICの院内で立つ、代表院長のイ・チャンファン氏。

ソウル江南のI AM QUEEN WOMEN’S CLINIC。代表院長のイ・チャンファン氏は、婦人科形成の診療と学術活動に携わっている。(撮影:編集部)

 イ氏によると、韓国では婦人科形成への関心そのものも高まっている。

 その背景の一つとして挙げたのが、女性を取り巻く医療や社会の変化だ。

 婦人科診療では、子宮頸がんなどの疾患を早期に発見し、治療することが重要な役割を担ってきた。近年は、検診やHPVワクチンなど予防への取り組みも進んでいる。こうした従来の診療に加え、女性のQOL(生活の質)や性生活など、これまで表立って扱われにくかったテーマにも関心が広がってきたとイ氏は説明する。

 もう一つは、結婚や出産をめぐる価値観の変化だ。韓国でも結婚年齢が上がり、出産をめぐる考え方が変わっている。家庭や出産だけではなく、自分自身の生活やパートナーとの関係を重視する人も増えてきた。

 性生活についても、自分の満足感やパートナーとの関係を意識するようになり、それが婦人科形成への関心にもつながっているのではないかとイ氏は見る。

 婦人科形成は、単に見た目を整える美容医療としてだけでは捉えきれない。見た目の悩みだけでなく、機能や性生活、年齢による変化など、複数の問題が重なって治療につながることもある。

 需要の拡大に伴い、医師の側でも婦人科形成への関心が高まっている。

 イ氏によると、韓国では産婦人科関連の学会や学術集会でも、婦人科形成だけで一つのセッションが組まれるようになってきたという。イ氏自身も産婦人科専門医として婦人科形成を長く扱い、関連学会での学術活動や専門書の執筆、国内外での講演に関わってきた。

 以前は婦人科の中でも限られた医師が扱う分野だったものが、徐々に一つの領域として認識されるようになっている。治療を希望する人が増えれば、それを学ぼうとする医師も増える。その一方で、外科手術でもフィラーでも、婦人科特有の解剖を理解するための教育が必要になる。

 イ氏は、需要だけでなく、医師向けの教育や学会活動も今後さらに広がると見ている。

国によって治療の選び方にも違い

江南区の一帯には美容医院が密集する。(写真/編集部)

江南区の一帯には美容医院が密集する。(写真/編集部)

 I AM QUEEN WOMEN’S CLINICには、韓国だけでなく、中国、香港、台湾、日本、米国などからも来院があるという。

 イ氏によると、国や地域によって治療の選び方にも違いが見られる。米国から来る人では、一度の手術でしっかり変化を得る外科的な治療を希望する傾向がある一方、韓国や中国では比較的簡便な治療を選ぶ人も多いという。

 日本から来る人では、特に身体への負担が少ない方法への関心が高く、膣フィラーを選ぶ傾向があると説明した。婦人科形成そのものは日本にもあるが、顔の美容医療などと比べれば、まだ人前で語られにくい領域かもしれない。ただ、外陰部の形や膣のゆるみ、性生活などについて、日本でも悩みを抱える人はいる。なお、同医院の通訳担当も兼ねたスタッフの日本語能力は他の医院と比べても高いものだった。

 今後、日本で婦人科形成がどのように広がっていくのか。韓国の動きは、その行方を考える一つの材料になりそうだ。

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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