韓国美容医療の現場では、いわば「目の美容医療」として、日本ではあまり見られない斬新な施術が登場している。カラーコンタクトを使わずに黒目を大きく見せることを目的としたインプラントだ。開発したのは、眼科医で、BEAUEYE VISIONのイ・ドンホ氏。開発のきっかけになったのは、カラーコンタクトによる眼のトラブルを繰り返しながらも、美容上の理由から使用をやめられない若い女性を診療した経験だったという。その施術がどういうものなのか、イ氏に話を聞いた。

黒目を大きく見せるリング状インプラントを開発した、BEAUEYE VISION最高経営責任者(CEO)のイ・ドンホ氏。(撮影:編集部)
イ氏はまず、カラーコンタクトが広がった背景について説明した。
韓国でも、黒目を大きく見せるサークルレンズやカラーコンタクトは人気だ。目元の印象を変えやすく、美容目的で手放せない人もいる。
一方、カラーコンタクトの使用に伴って眼のトラブルが起きることもある。
開発のきっかけになったのは2016年頃、カラーコンタクトを常用し、合併症を起こしていた女性との出会いだったという。イ氏は、眼の状態を考えればカラーコンタクトをやめた方がよいと説明し、女性はいったん使用を控えたが、数カ月後、同じような問題を抱えて再び受診した。「美容のためには、カラーコンタクトをやめることが難しい」という話だった。
その女性から「カラーコンタクト以外に方法はないのか」と尋ねられ、黒目を大きく見せる方法を思いついた。眼科の分野では、近視や乱視であれば、レーシックやICLなどの屈折矯正手術が選択肢になる場合がある。「黒目を大きく見せたい」という美容的な希望に対し、イ氏が考えたのが、黒目の周囲に色の付いたリング状のインプラントを挿入する方法だった。
承認まで5年以上、安全性を重視

BEAUEYE VISIONが開発した、黒目の周囲に挿入する細いリング状インプラント。薄く柔らかい素材で作られている。(撮影:編集部)
イ氏は韓国で特許を出願し、その後プロトタイプを作り、医療機器の製造が可能な企業とともに開発を進めた。イ氏によると、デバイスには医療用グレードのシリコンと顔料を使用している。色素を表面に塗るのではなく、シリコンに顔料を混ぜることで、色素が外に出にくい構造にしているという。
取材では実際のデバイスも見せてもらった。細いリボンのような形で、幅は1mm前後。薄く、柔らかく、伸縮性のあるリング状の素材になっている。
イ氏によると、動物実験などの評価を行い、形状や厚みの改良を重ねた。2017年の最初の試作品から、2023年10月に韓国食品医薬品安全処(MFDS)の承認を得るまで、5年以上を要したという。
現在は第2世代のデバイスを使っている。初期のデバイスは現在よりも厚く、形状にも課題があった。眼の近くに入れる場合には、厚みや大きさは組織への負担や手術のしやすさに影響する。このため、イ氏は厚みや形状を繰り返し改良してきた。
黒目をどの程度大きく見せるかについても、自然さと安全性の両方を考えながら設計を進めたという。

黒目の周囲、白目に当たる部分へ細いリング状インプラントを挿入する手術の拡大映像。(撮影:編集部)
このインプラントの挿入には手術が必要となる。
手術では、黒目の上下に小さな創を作り、専用の器具を使って組織を剥離した後に挿入する。イ氏が特に強調するのが、黒目の表面を覆う角膜には触れないことだ。「角膜には触れません。角膜は視力にとって非常に重要だからです」。角膜の周囲、白目に当たる結膜とその下の強膜の間に、幅1mm前後の細いリングを置く。正面から見ると、このリングが黒目の輪郭の延長のように見え、黒目が一回り大きく見える仕組みだ。
黒目をより大きく見せようとすれば、デバイスを黒目に当たる角膜に近づけたくなる。しかし、近づけすぎると炎症や角膜浮腫などの問題につながる可能性が高まるとイ氏は説明する。
初期には、より角膜に近い位置に置いたこともあったが、安全性を考え、現在の位置や形状へと改良してきたという。リングと角膜の間にはわずかに白目が残る。同社は、角膜輪部には重要な組織があるため、この間隔を残す必要があると説明している。美容的な変化を大きくすることと、安全性を確保すること。そのバランスが、この手術では特に重要になる。
イ氏が安全性の面で重要だと考えているもう一つの点が、デバイスを除去できることだ。手術である以上、リスクは伴う。同社も、術後の充血や炎症、異物感などが起こり得るとしている。また、手術後に本人が見た目を気に入らない可能性もある。「もし合併症が起きたり、本人が気に入らなかったりした場合には、取り出すことができます」。イ氏は、この「取り出せること」を安全性を考える上で重要な特徴と位置付けている。
カラーコンタクトの代わりになるのか

黒目を大きく見せるインプラントによる見た目の印象。写真はBEAUEYE VISIONイ氏の娘。(撮影:編集部)
イ氏によると、手術を受ける人は韓国人が中心だが、中国やモンゴルなど海外から来る人もいるという。
当初は、黒目を大きく見せたいというニーズは主に東アジアにあると考えていた。しかし、海外の医師からも関心を示されていると話す。
カラーコンタクト自体は日本、中国、東南アジアなどでも広く使われている。黒目の大きさや色によって目元の印象を変えたいというニーズも、韓国だけのものではない。
今後、韓国外でどこまで広がるかは、各国の承認制度や手術を担う医師の教育体制にも左右される。
韓国美容医療というと、レーザー、注入治療、フェイスリフト、脂肪吸引などが思い浮かぶ。今回の技術は、そこからさらに眼科に近い領域へと美容医療が広がっていることを示している。しかも、結膜と強膜の間に細いリングを入れ、黒目を大きく見せるという発想は斬新だ。筆者が日本の眼科専門医にこのインプラントについて聞いたところ、「眼の構造から考えれば、こうした位置にリングを置くという手術ができることは理解できる」との見方を示した。こうした新しい技術が韓国外にも広がるのか、今後が注目される。
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