
SNSの影響。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
美容医療とSNSは、今や切っても切れない関係にある。そうした中でも、SNSをしていない医師は少なくないかもしれない。避けることなく、情報発信を始めた方がよいのではないか。
私は、2026年9月、福岡市で開催された第28回国際心身医学会(ICPM 2026)で「Social Media Era for medical professionals」をテーマに講演した。
準備を進めながら改めて感じたのは、医療とSNSの関係を「危ないから距離を取る」というだけで考える時代ではなくなっているということだ。
一部では、SNSが何かと厄介者扱いされがちだ。しかし、あまりに悪くとらえることで、貴重な情報発信の機会が失われているとすれば、もったいないことだ。
「SNSは危ない」だけでは不十分

第28回国際心身医療学会での筆者の発表。(写真:板東正浩氏)
- SNSの影響は使い方で変わる→ 通常利用と心身の不調との関連は小さい一方、コントロールしにくい使い方では抑うつ、不安、睡眠問題との結びつきが強まる。
- 見る内容も重要→ 理想化された自撮り画像など、どのような情報に触れるかによって、外見への満足度や美容への意識が変わる可能性がある。
- 正確な情報発信には効果→ 医療情報をSNSで紹介すると閲覧やダウンロードにつながりやすく、誤情報への訂正にも一定の効果が確認されている。
SNSを巡っては、メンタルヘルスへの影響、誤情報、過度な利用など、ネガティブな側面が強く語られがちだ。
ただ、研究を見ていくと、「SNSを使うこと」自体を一括りにして考えるのは少し違うと分かってくる。
2024年、オーストラリア国立大学などの研究グループは、SNS利用とメンタルヘルス、睡眠との関係について、182研究、計約117万人を調べた。
その結果、通常のSNS利用と抑うつや不安との結びつきは小さかった。一方、利用を自分でコントロールしにくい「問題のあるSNS利用」では、抑うつや不安、睡眠の問題との結びつきがより強く、ウェルビーイングの低下も見られた。
意外なのは、「問題のあるSNS利用」であっても、メンタルヘルスとの結びつきは突出して大きいものではなかったことだ。SNS利用と心身の不調との関係は、一般に抱かれがちなイメージほど単純ではないことが見えてくる。
別の研究では、メイクをして理想的に見せた自撮り画像を見た若い女性は、自分の顔への満足度が下がり、顔や髪、肌を変えたいという気持ちも強くなった。美容医療ともつながりの深い結果だ。SNSの影響を考えるときには、使っている時間だけでなく、普段どのような画像を目にしているかも重要になってくる。
一方、SNSは正確な医療情報を広げる手段としては、大きな力を持っている。
2024年、英国の研究グループは、研究に基づく医療情報をSNSで発信した場合にどれだけ情報が届きやすいのかを過去の研究から分析した。
その結果、SNSで紹介された情報は、リンクのクリックや論文の閲覧、ダウンロードにつながりやすくなっていた。情報を公開するだけでなく、SNSで発信することで、実際に見てもらえる機会が増えることが分かった。
SNSでは、いったん広まった誤情報は、あとから訂正しても手遅れと思われがちだ。だが、訂正には一定の効果があることも分かっている。
米国の研究グループが、SNS上の健康に関する誤情報を訂正する効果を調べたところ、誤情報を訂正することで、その影響を弱める効果が確認された。
正しい情報を発信するだけでなく、間違った情報が広がったときに訂正することにも意味がある。
その意味でも、SNS上に医療者による発信があることには価値がある。必要な情報を届ける機会が増え、誤情報が出たときにも、その場で正しい情報を示しやすくなる。
専門家がもっと関わると、SNSの医療情報はどう変わるか

第28回国際心身医療学会。(写真:編集部)
- 専門家が参加する意味→ 美容医療のメリットだけでなく、限界、副作用、向かない人などを医師が発信することで、利用者が複数の視点を比べやすくなる。
- 肩書だけでは十分ではない→ 専門家による情報は非専門家より説得力が高い傾向があるものの、差は大きくなく、内容の質や分かりやすさも重要になる。
- SNSを情報の拠点に→ フォロワー数を競うのではなく、日々診療する医療者がそれぞれの専門分野について情報を置く場所として活用することに意味がある。
美容医療ではSNSによる情報発信が非常に活発で、治療を知ったり、クリニックを探したりするきっかけにもなっている。その一方で、広告的な投稿や、治療効果を強く印象づける表現、誤解を招きかねない情報が目立つこともある。
こうした状況を見ると、「美容医療のSNSは危ない」と感じるのも無理はない。ただ、だからといって専門家の発信まで少なくなれば、私たちが目にする情報は、どうしても偏りやすくなる。
治療にはどんな特徴があり、どこまで期待できるのか。どんな副作用があり、どんな人には向かないのか。こうした情報は既にSNS上にもあるが、日々診療しているさまざまな医師が、それぞれの経験や専門性から発信するようになれば、見えてくる意見や考え方にも幅が出てくる。利用する側にとっても、一つの強い意見だけではなく、複数の視点を比べながら考えやすくなるはずだ。
SNSに問題があるから離れるのではなく、問題があるからこそ専門家もそこに参加する。美容医療では、そうした発想が必要になっていると思う。
ただ、専門家が発信すれば、それだけで情報が信頼されたり、広く届いたりするわけでもない。そんなことを示す研究もある。
2026年、オーストラリアのアデレード大学の研究グループは、SNS上の健康情報について、「専門家が発信している」ことが、どの程度その情報の説得力につながるのかを調べた。専門家が発信した情報の方が、非専門家による情報より説得力は高かったものの、その差は大きくなかった。
美容医療では、医療者だけでなく、施術を受けた人やインフルエンサー、企業など、さまざまな立場の人が情報を発信している。そう考えると、「医師が言っているから」というだけで情報が強く信頼されるわけではないという結果にも納得できるところがある。
同じレビューでは、専門家という肩書だけでなく、実用的で質の高い情報を示すことや、難しすぎない伝え方なども、情報の受け取られ方に関係する可能性が指摘されている。
大切なのは、SNSを一部の「発信が得意な医師」だけの場所にしないことなのかもしれない。
日々の診療で患者と向き合っている医師が、それぞれの専門分野について少しずつ情報を出す。治療のメリットだけではなく、限界や注意点についても説明する。そうした投稿が増えれば、私たちがSNSで医療情報を探したときに、選べる情報そのものが増えていく。
フォロワー数が多い必要も、有名になる必要もない。診療所という現実の拠点があるように、ウェブサイトやSNSにも、さまざまな専門家による情報の「拠点」がもっと増えていく。利用する側から見ても、そんな環境の方が情報を比べながら考えやすいのではないか。
SNSに専門家がもっと加わることは、医師だけの課題ではない。私たちがどんな医療情報に出会えるのかという、情報を受け取る側にも関わる話だと思う。
なお、私が登壇したセッション全体は、音楽療法をテーマにしたものだった。医師の板東浩氏と私が座長を務め、帝塚山音楽療法研究所の福田ゆみ氏が認知症の行動・心理症状(BPSD)と音楽聴取について、板東氏が音楽療法や心身医学について発表した。一方で、音楽事業を展開するクロアの大久保卓也氏は、音楽と高解像度動画、ソルフェジオ周波数を使った研究を紹介。徳島大学医学部の板東正浩氏は、阿波おどりを音楽療法や心身医学の観点から講演した。
音楽療法をテーマにしたセッションだったが、研究や医療情報をどう一般に届けるかという問題は、美容医療も含めた、医療全体に共通する課題だと改めて感じた。
当日の講演は英語で行ったが、内容を日本語で解説した動画も筆者の会社のYouTubeチャンネルで公開している。学会で専門家に向けて話す内容をベースにしているが、SNSと医療情報について考える参考にしてもらえればと思う。
参考文献
Ahmed O, Walsh EI, Dawel A, et al. Social media use, mental health and sleep: A systematic review with meta-analyses. Journal of Affective Disorders. 2024;367:701-712.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165032724014265
Fardouly J, Rapee RM. The impact of no-makeup selfies on young women’s body image. Body Image. 2019;28:128-134. doi:10.1016/j.bodyim.2019.01.006.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1740144518305424
Roberts-Lewis S, Baxter H, Mein G, et al. Examining the Effectiveness of Social Media for the Dissemination of Research Evidence for Health and Social Care Practitioners: Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Medical Internet Research. 2024;26:e51418.
https://www.sciencedirect.com/org/science/article/pii/S1438887124008409
Walter N, Brooks JJ, Saucier CJ, Suresh S. Evaluating the Impact of Attempts to Correct Health Misinformation on Social Media: A Meta-Analysis. Health Communication. 2021;36(13):1776-1784.
https://psycnet.apa.org/record/2020-59441-001
Simmonds BP, Ransom KJ, Mullins E, Stephens RG. The effect of source expertise on the persuasiveness and sharing of health information on social media: A systematic review. Psychonomic Bulletin & Review. 2026;33:175.
https://link.springer.com/article/10.3758/s13423-026-02943-2
SNSを利用した医療情報発信はどうあるべきか|リスクと可能性、専門家はどう関わるか【LIVE】
https://www.youtube.com/live/uZooq06b5O8
