医療広告の限定解除要項と注意したい内容は?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」vol.3
近年、増え続ける美容医療に関する消費者トラブル。どのような広告に注意すべきなのか?連載のvol.1とvol.2では広告が禁止される事例と、広告可能事項の不適切な事例を紹介してきた。連載最後となるVol.3では、一部、特定の条件(限定が解除される要件)を満たした場合に広告できるようになる情報、および広告が禁止されてはいないものの、注意が必要な情報を説明する。
※限定が解除される要件とは、制限がなくなり、その広告ができるようになるための条件のこと。基本的に、広告が規制されている事柄でも、一定条件を満たすと広告できるようになることがある。逆に言うと、その条件を満たさないのに広告している場合は問題となる。
限定解除要件の記載が不適切な事例
限定解除要件について
医療従事者の資格には広告規制があり、例えば、内科や小児科など厚生労働省が定める「広告可能な医師等の専門性に関する資格名等について」などのルールに含まれない資格は広告の規制がかかってくる。
しかし、こうした規制がかかる資格でも、広告可能事項の限定解除要件を満たし、禁止される広告に当てはまらなければ広告可能となる。
それらは「専門外来」「診療科名」「専門性資格」「手術件数」「新聞や雑誌等で紹介された旨」についてであり、これらの情報は医療広告ガイドラインの記載に沿った情報を提供することで、広告できるようになる。
※医療広告ガイドラインで指示する条件は次の2つである。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
1つ目の条件は、閲覧者がウェブサイトなどを使い、自分で検索などで探し出して情報を得ること。例えば、ウェブサイトに掲載されている情報は、検索に連動したバナー広告やリスティング広告でなければ、自分で探して情報を得るものになる。この場合は、禁止された情報に当てはまらなければ広告することができる。2つ目の条件は、閲覧者が広告された情報を簡単に問い合わせられることを保証すること。
つまり、閲覧者が自分から情報を探すものであり、しかも、その閲覧したページに電話番号やメールアドレスといった情報を明記することで限定解除となる。
自由診療における限定解除
自由診療を広告する際にも、医療広告ガイドラインに示されている条件を満たすことで限定解除となる。
※医療広告ガイドラインで指示する条件は次の2つである。
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること。
- 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること。
厚生労働省は次の通り限定解除要件を示している。
治療内容を適切且つ十分に記載
治療の流れなどを明記する。
通常必要とされる治療期間及び回数を記載
治療に3〜6カ月の期間を要し、5〜6回の治療回数が必要であるといった情報を明記する。
通常必要とされる標準的な金額(最低金額〜最高金額)を記載
費用について、具体的に200,000〜300,000円といった情報を明記する。
別途発生する費用や内訳を記載
別途、診断・診察、麻酔費などが必要であれば費用詳細と共に明記する。
治療における主なリスクや副作用の記載
外科処置に伴う痛み・腫れ・出血・合併症の可能性があり、お手入れ次第で感染することがある。などリスク、副作用を十分に明記する。
未承認医薬品であること、入手経路など、国内の承認医薬品などの有無、諸外国における安全性などに係る情報を記載
日本の「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」で承認されていない医薬品・医療機器、あるいは承認された効能・効果、用法・用量が異なる医薬品・医療機器を用いた治療は、「未承認医薬品等であること」「入手経路など」「国内の承認医薬品などの有無」「諸外国における安全性などに係る情報」を明示した場合のみ、広告することが許されている。
広告するにあたって注意が必要な事例
広告が制限されている診療科は限定解除要件を満たすと広告できると説明したが、厚労省はこの場合でも誤解を与えないよう注意するよう求めている。
様々な治療法が含まれ、いずれの治療を提供するのかという点が明確ではない診療科名
広告が規制されている診療科などを示す場合、その内容が多岐にわたるときには誤認されないよう注意が必要になる。
※厚労省は、法令上根拠のない名称や組み合わせの診療科名のうち、様々な治療の方法が含まれ、そのいずれの治療を提供するのかという点が明確ではない名称と説明している。
厚労省は、「審美歯科」を例に挙げて、この中に含まれている治療メニューを具体的に示すよう求めている。美容医療のカテゴリーでもこの辺りは詳しく記載することが必要になるだろう。
提供される医療とは直接関係のない事項による誘引
「治療後にガチャガチャを一回プレゼント」「出産祝いとして赤ちゃんグッズをプレゼント」と、物品を贈呈するなどの情報は問題になる。提供される医療とは関係のない事項で誘引しようとする広告には十分に注意する。
割引費用を前面に押し出した内容や会員特典を強調した広告
「期間限定夏のキャンペーン20,000円→特別価格15,000円」と赤字や文字を大きく表記していたり、「当院専用アプリからのご予約で30%オフ」なども問題だ。キャンペーンや会員特典による割引を強調したりする広告には注意が必要である。
医薬品の一般的名称ではなく販売名を記載
平成29年9月29日付け薬生発0929第4号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知の別紙「医薬品等適正広告基準」により、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告は行わないものとされている。これを踏まえ、医薬品または医療機器の販売名については、広告してはならない。医薬品または医療機器は、一般的名称など特定されない記載をすることで、広告が可能になる。
※医薬品や医療機器には、一般名と商品名がある。例えば、ビタミンCの成分の名前は、アスコルビン酸と言う。このアスコルビン酸は一般名に当たる。一方で、これが販売されるときには必ずしもアスコルビン酸という名前で売られているとは限らず、別の商品としての名前で売られていることが多い。その販売するための名前が商品名である。
バナー広告やリスティング広告における違反
バナー広告やリスティング広告が一律禁止されているわけではなく、広告可能事項の範囲内であれば広告は可能である。
医療広告ガイドラインに従って、検索結果に連動して表示されるバナー広告やリスティング広告に、広告可能事項以外の情報を出すことはできない。それを見た人が自分から探して情報を得たとは言えないためだ。
会員限定ページなど特定の人のみが閲覧可能な広告における違反
会員限定ページなど、特定の人のみが閲覧可能なウェブサイトであっても、虚偽広告や比較優良広告などに該当する内容は、通常のウェブサイトと同様に、禁止される広告であり、認められない。そのほかの情報についても、ここまで示したルールに従い、通常のウェブサイトと同じように広告する情報に合わせた限定解除要件を満たしたり、注意事項に気を付けたりする必要がある。
Vol.1、vol2と合わせて確認し、不正な広告の誘引に惑わされ危険な美容医療を受けないように気をつけたい。
参考文献
禁止されている美容医療の広告とは何?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」 Vol.1
https://biyouhifuko.com/news/column/1672/
こんな医療広告は危ない!?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」vol.2
https://biyouhifuko.com/news/column/1826/
医療法における病院等の広告規制について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
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