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肌の悩みは自分の血で解決、多血小板血漿(PRP)使う美容医療が世界で急拡大

カレンダー2023.7.14 フォルダー 海外

ポイント

  • 多血小板血漿(PRP)の世界市場は、2030年までに約2300億円に達すると見込まれている
  • 年間成長率は15.1%。自分自身の血液に由来するPRPは整形外科や美容医療などで利用が進む
  • 美容医療においては、PRPでシワやシミを減らし、肌を若返らせるなどの用途で利用される
自分の血液から血小板を豊富に含んだ血漿を抽出する。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

自分の血液から血小板を豊富に含んだ血漿を抽出する。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 自分自身の血液から抽出される血小板を使った治療法である「多血小板血漿(PRP)」が世界で利用が進み、市場規模が急速に拡大すると予想されている。2023年7月、市場調査会社のアイルランドResearchAndMarkets社が報告している。

本人の血液を使う治療

自分の血液から赤血球と白血球を分離する。(写真/Adobe Stock)

 PRPは美容医療の分野で一般的に使用されるようになってきている。血小板は血液の凝固を助ける成分で、これが組織の再生を助ける成長因子も含んでいる。PRPは遠心分離機と呼ばれる機械を使って、自分自身の血液から血小板を豊富に含む血漿を分離し、赤血球やその他の成分を除去することで作られる。

 もともとは膝の治療で使われていたPRPは、現在では美容医療に加えて、ケガの治療や、筋肉や骨格の状態を治す目的で応用が広がっている。美容医療では、皮下に注射することで、成長因子の効果によって、コラーゲンの生成を促し、シワやシミを減らし、肌を若返らせるために使われる。また、ニキビ痕の治癒、植毛の効果向上にも使用される。

 PRPの利点は,治療を受ける本人の血液を使うため、使いやすさ、費用対効果、副作用リスク低減など。しかし、治療プロセスには時間がかかり、複数回を行う必要が出てくることもある。

整形外科の分野から美容医療へと利用広がる

目元のシワにどんな効果がある?(写真/Adobe Stock)

 PRP治療をより身近にするための動きが活発になっているようだ。ResearchAndMarkets社によると、PRPの利用拡大はコロナ流行でいったん頓挫していたが、規制緩和に伴い、再び需要と供給が回復しつつあるという。

 世界市場は2030年までに毎年15.1%のペースで増大して、19億4000万ドル(日本円で約2300億円)に達するという。日本の美容医療の市場規模が約4000億円とされるので、世界で見たものではあるが、小さくはないと言えるだろう。

 PRPが主に使われているのは、整形外科の分野。膝の関節にある軟骨がすり減り、痛みの原因になる変形性膝関節症の治療のため頻繁に使われている。PRPは現在、美容医療やメディカルツーリズムの需要の高まりを受けて、より広く使われるようになっている。

 ヒフコNEWSの過去の記事でも、目元の若返りのための有効性や安全性についての論文を紹介したことがある。目元のシワ、シミ、光老化の改善のための効果が検証されていた。治療効果が見られ、満足度も高い治療であるという結果だ。

 日本国内では、PRPをめぐっては、これだけではなくbFGFを添加した治療が広がっている。美容医療診療指針(令和3年度改訂版)では、PRPそのものについては、「治療を希望する患者には,行うことを弱く推奨(提案)する」と位置づけられているが、PRPにbFGFを添加した方法については、「行わないことを弱く推奨(提案)する」という位置づけになっている。ガイドラインでは、この方法において、しこりが過度にできるといった合併症の課題が指摘されている。

 PRPの注目は国際的に高まっており、ヒフコNEWSでもPRPについて継続して取り上げていく。

参考文献

Global Platelet Rich Plasma (PRP) Market Trends/Analysis Report 2023-2030: The 1.94 Billion Market is Poised for Strong Growth, Driven by Rising Demand in Cosmetic Surgeries and Sports Injuries – ResearchAndMarkets.com
https://www.businesswire.com/news/home/20230713875191/en/Global-Platelet-Rich-Plasma-PRP-Market-TrendsAnalysis-Report-2023-2030-The-1.94-Billion-Market-is-Poised-for-Strong-Growth-Driven-by-Rising-Demand-in-Cosmetic-Surgeries-and-Sports-Injuries—ResearchAndMarkets.com

目元の若返りのためのPRP治療、有効性、満足度、副作用はどうなっている?
https://biyouhifuko.com/news/research/397/

美容医療市場がコロナ前水準に、5つのトレンドが勢いづく理由とは
https://biyouhifuko.com/news/japan/2193/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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