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インフルエンサーの発信する美容医療トレンド、どう信じる?どう疑う?

カレンダー2023.10.5 フォルダー 海外

ポイント

  • インフルエンサーは美容医療の情報をオープンに共有し、美容医療を身近にしている
  • インフルエンサーは、誤った情報を広めたり、偏りのある情報を出したりする可能性もある
  • インフルエンサーだけに頼らず、資格を持った医師とのやりとりを欠かさないのが重要
インフルエンサーの情報を見る?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

インフルエンサーの情報を見る?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ソーシャルメディアでインフルエンサーが発信する情報が、美容医療のトレンドを作り出しているが、インフルエンサーには課題もあるようだ。どう信じて、どう疑うとよいのか。米国形成外科学会(ASPS)は2023年9月、その影響や課題についてコラムを寄せている。

SNSで美容医療はオープンなものに

インフルエンサーの情報によって美容医療は身近に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

インフルエンサーの情報によって美容医療は身近に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 スマホが当たり前になり、Xやインスタグラム、TikTokが情報発信の中心になっている。

 米国形成外科学会によると、かつては有名人が美容整形手術を受けていても、実際のところはよく分からないというケースも多かった。それに対して、インフルエンサーはむしろ美容整形手術をオープンにして、情報を共有するのが当たり前に。Z世代はそれらの情報にアクセスしやすくなり、美容医療は身近になったという。

 形成外科医のアシュリー・アマルフィ氏とスミタ・ラマナダム氏は、TikTokのようなデジタルプラットフォームがトレンドを生み出し、インフルエンサーの出す情報が特定の施術のニーズを大きく高めるような直接的な影響力があると指摘する。例えば、首から肩に掛けてつながる筋肉にボトックス療法をして、首を長く見せる「バービーボトックス」のような施術が人気になったという。

 一方で、インフルエンサーに関連した問題もある。解説で挙げられているインフルエンサーの問題点は主に次の3つ──。

誤った情報の拡散の可能性 多くのインフルエンサーは、美容整形に関する個人的な経験を語るが、それは全ての人に当てはまるとは限らない。インフルエンサーの中には、結果を誇張したり、合併症やリスクについて詳しく説明しない人もいるかもしれない。このような重要な情報を誤って伝えることは、人々に非現実的な期待を抱かせ、不案内な決断をさせる可能性がある。
インフルエンサーが発信する情報の偏り インフルエンサーは特定のブランドやクリニックとつながりがあることが多い。インフルエンサーがこのような提携関係を明らかにしていない場合、人々はその人ならではのニーズに合うかどうかを考えずに、偏った情報に基づいて特定の製品や治療法が最善と信じてしまう恐れがある。これは、商業的利益がインフルエンサーの推薦に影響を与えるリスクを浮き彫りにする。
非現実的なイメージの発信 インフルエンサーは、デジタル編集やフォトショップで加工された画像を頻繁に使用するため、非現実的な美の基準を作り出す可能性がある。人々がそのような画像に基づいて期待する場合、望んだ結果が得られなかったときの不満につながる可能性がある。このような美の幻想は、個人の自尊心に悪影響を及ぼし、現実を歪んだ見方で見ることになりかねない。

インフルエンサー、もろ刃の剣

インフルエンサーの発信する情報には課題も。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

インフルエンサーの発信する情報には課題も。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 インフルエンサーの出す情報は赤裸々なもので透明性は需要である一方で、「ソーシャルメディアでは合併症や課題を過度に強調して、誤った情報を広める可能性もある」(ラマナダム氏)。

 ソーシャルメディアでは、美容医療をもてはやすような部分がある一方で、海外などでは、美容医療の事故がSNSで共有されて炎上することも話題に上ることが多い。最近ではヒフコNEWSでも伝えたメキシコでのメディカルツーリズムでの死亡事故が、米国で大きな話題になっていた。そうした状況が問題になり得る。

 また、取り上げられる施術の向き不向きの問題が無視されやすい課題もある。インフルエンサーが特定の治療を絶賛することもある。そのときにフォロワーがその治療を完璧なものと受け止めて、お気に入りのインフルエンサーと同じように自分もしてほしいという状況はよくある。実際、誰にでも当てはまるとは限らず、合併症やリスクも含めた偏りのない情報に基づいて判断することが重要になる。

 インフルエンサーは、ブランドやクリニックと提携していることが多いが、その提携関係を必ずしも公表していない。透明性の欠如は、フォロワーに不正確な認識を植え付けかねない。

 さらに、インフルエンサーの発信するイメージは編集されたり加工されたりするのは日常茶飯事。そうした非現実的なイメージに近づけようと美容医療に過度の期待を抱くのはその後の不満につながり危険だ。

 結局のところ、「最も公平で包括的な情報は、認定形成外科医との会話から得られる」とアマルフィ氏。医師と一緒に考えるのは欠かせない。

参考文献

Circle of influence: How social media influencers are shaping plastic surgery trends
https://www.plasticsurgery.org/news/articles/circle-of-influence-how-social-media-influencers-are-shaping-plastic-surgery-trends

SNS時代の美容医療、非現実的な「美しさ」基準との向き合い方、米国形成外科学会が伝える
https://biyouhifuko.com/news/world/3433/

米国が警告、美容整形後に真菌性髄膜炎疑い、メキシコでの医療観光に懸念広がる
https://biyouhifuko.com/news/world/1496/

【続報】2人死亡、メキシコ美容医療ツーリズム感染症集団発生、WHOへの動きも
https://biyouhifuko.com/news/world/1618/

【続報】メキシコ美容医療感染症の集団発生、メディカルツーリズムのリスクを最小化する方法とは
https://biyouhifuko.com/news/world/1787/

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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