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【続報】メキシコ美容医療感染症の集団発生、メディカルツーリズムのリスクを最小化する方法とは

カレンダー2023.6.5 フォルダー 海外

ポイント

  • 米国でメディカルツーリズムについての情報提供が行われている
  • 医療ツーリズムには、感染症を含めて一定のリスクがある
  • 旅行前の調査や医療機関への相談など予防策が重要

 ヒフコNEWSで伝えているように、米国人がメキシコで美容医療を受けて、その後に感染症にかかる人が集団で発生している。この動きを受けて、米国疾病対策センター(CDC)がメディカルツーリズムのリスクを避ける方法についての情報を提供している。

毎年数百万人が利用、注意点を解説

海外へ。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

海外へ。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 メディカルツーリズムは、医療を受けるために海外に渡航すること。日本でも韓国への美容医療を受けるための渡航が話題になっているが、米国では中南米へのメディカルツーリズムが人気だ。CDCによるとメキシコ、カナダ、そのほかの中南米やカリブ海の国々など、毎年数百万人が渡航しているというから、その人数は膨大。

 メディカルツーリズムを選ぶ理由は様々で、米国の高額な医療費を避け、海外で手頃な価格で治療を受けたいというのが理由の一つ。さらに、文化的、言語的な背景が同じ医師から治療を受けたい、米国では承認されていない医療を受けたいといったことがあるようだ。

 メディカルツーリズムでは、歯科治療、美容整形、不妊治療、臓器移植、組織移植、がん治療などを受けられているという。

 しかし、メディカルツーリズムにはリスクも伴うということで、このたびCDCがリスクを避けるための注意点を解説している。

医療ツーリズムで気を付けるべきところ

渡航の準備。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

渡航の準備。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 メディカルツーリズムには、目的地や施設、旅行者の健康状態によって、いくつかのリスクがある。主なリスクとして挙げているのは次の通りだ。

項目 説明
感染症 すべての医療行為には、感染症の可能性がある。海外で手術を受ける場合、傷口や血液を介して感染を起こす危険性がある。B型肝炎、C型肝炎、HIVなどの病気にも注意が必要。
抗菌薬耐性 医療目的の渡航者は、薬剤耐性の高い細菌や真菌に感染する危険性があり、病気の発生リスクが高まる。海外の医療施設では感染対策が不十分であり、薬剤耐性菌が蔓延している。
医療の質 国によって免許、認証、認定を取得したり維持したりする条件が異なり、医療の質に差が存在していることがある。また、地域によっては、偽造医薬品や規格外医療機器の使用が問題視されている場合もある。
コミュニケーションの問題 海外のスタッフや医療関係者とのコミュニケーションの問題が起こることがある。これにより治療内容の誤解が生じ、それが治療効果に影響を及ぼす可能性がある。
飛行機での移動 手術後すぐに飛行機に乗ると、深部静脈血栓症などの血栓が発生する可能性が高くなる。気圧の変化によるリスクを軽減するために、特に胸部を含む大きな手術の後は、10~14日ほど待ってから飛行機に乗ることが勧められる。
継続的なケア メディカルツーリズムから帰国後に発生した合併症は、米国での治療が必要になる場合がある。これらの合併症のフォローアップケアには費用がかかり、健康保険の適用範囲に含まれない場合もある。

メキシコで起きた米国居住者の感染症集団発生の問題は、このうち感染症、抗菌薬耐性、医療の質、コミュニケーションの問題、継続的なケアという多くの点から問題が起きたと言える可能性がある。

リスクの最小にするための準備

メディカルツーリズムの注意点。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

メディカルツーリズムの注意点。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 CDCでは医療ツーリズムに関連するリスクを軽減するために次のステップを踏むことが重要としている。それぞれ米国の状況を踏まえた内容ではあるものの、日本からメディカルツーリズムを利用するときにも参考になる。

項目 説明
医師と施設について調べる 医師や医療機関について調べるのが重要。手術を行う医療従事者の資格を確認し、施設の信頼性を評価する。有名な組織から認定を受けているところを探すように求めている。*例えば、「Joint Commission International(JCI)」などの認証制度があり、これらの認証を受けている医療機関は国際的に統一の信頼性に関わる条件を満たしていると判断できる。
言語に関する考慮 言葉が通じない外国を訪問する場合、医師や医療チームと効果的なコミュニケーションをとるために、事前にコミュニケーションを取るための手段を準備しておくことが大切。
旅行前の相談 旅行の4~6週間前までに、医療機関または旅行医学の専門医に必ず予約を取る。その際、旅行に関する一般的な健康上のアドバイス、健康状態や手術に関連する特別なリスク、手術前後の注意点などについて話す。
海外旅行用健康保険に加入する 緊急時の米国への医療搬送を含む包括的な補償を提供する海外旅行健康保険に必ず加入する。
健康・医療記録の管理 旅行時には、検査結果や関連書類など、医療記録のコピーを持参することが大切。アレルギーがある場合は、渡航先の医療チームに伝える。処方された薬と市販の薬の両方を含むトラベルヘルスキットを準備し、旅行中に十分な量があることを確認する。
アフターフォローの手配 手術直後の宿泊施設を計画し、帰国後に必要なフォローアップ・ケアを受けられるようにする。合併症に伴う金銭的負担の可能性を理解し、それに応じて加入している健康保険の内容を見直すこと。

 メディカルツーリズムにはメリットがある一方で、関連するリスクがあることをあらかじめ理解しておくことが重要だ。

 海外の報道では、今回のメキシコでの感染症の集団発生で3人が亡くなったことが報じられている。また別の報道では、29歳の女性が亡くなったことについて詳しくレポートもされている。

 今回の情報提供は、医療保険など日本とは状況が異なる可能性はある。しかし、渡航前の相談など、参考になるところは多い。安全に、医療を受けるため、ここに示したポイントは気を付けておくとよいだろう。

参考文献

Medical Tourism: Travel to Another Country for Medical Care
https://wwwnc.cdc.gov/travel/page/medical-tourism

Mum killed by fungal brain infection after Mexico surgery – as CDC issue major warning
https://www.mirror.co.uk/news/us-news/mum-killed-fungal-brain-infection-30143209

Three dead as CDC warns of multistate fungal meningitis outbreak linked to cosmetic surgery in Mexico
https://www.foxnews.com/world/three-dead-cdc-warns-multistate-fungal-meningitis-outbreak-linked-cosmetic-surgery-mexico

米国が警告、美容整形後に真菌性髄膜炎疑い、メキシコでの医療観光に懸念広がる
https://biyouhifuko.com/news/world/1496/

【続報】2人死亡、メキシコ美容医療ツーリズム感染症集団発生、WHOへの動きも
https://biyouhifuko.com/news/world/1618/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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